宿命の救世主
@atsukawa
第1話召喚
ある片田舎の剣術道場に一人の天才が生まれた。彼の名は立花晋之介(たちばな しんのすけ)。風迅流(ふうじんりゅう)本家の一人息子にして、眉目秀麗、文武両道。小さな町ではあったが、皆彼をを神童と呼んだ。幼いころからその才能を発揮し、齢18にして田舎剣法ではあるが免許皆伝、高校ではトップの成績。非の打ちどころのない人間であった。
そのため幼馴染の雄二にはよく
「お前を見てると自信を無くすよ。」
だとか
「母ちゃんが俺が何かしでかすと、すぐお前を引き合いに出すから嫌になる」
などちょっとした小言を言われることがよくあった。こんなことを言われるといつも
うれしくもあり、恥ずかしくもあった。
この日もいつも通り雄二と一緒に学校に行っていると
「なぁーお前この前免許皆伝?だっけしたわけじゃん。奥義とかなんかあったの?」
いつもの通りやる気なさげに聞いてきた。
「まぁあるにはあったけどなんかよくわかんねえっていうか、剣術関係ないじゃん!って感じだったよ。」
「え?どんなの?」
「目隠ししながら竹刀を避けたり、変な踊り?演舞って言うのかな。なんかそんな感じでいくつかあったよ。」
晋之介は自分でも少し笑いながら言った。
「そんなこと人間にできんのかよ」
雄二は引き気味で笑っていた。
「そういや免許皆伝して家宝の刀みたいなのを渡すから、今日道場にこいって言われてんだけど普通に犯罪じゃね?」
「だろーな。やっぱお前んちはすげーな」
雄二は笑っていた。晋之介も半分呆れながら笑った。
放課後晋之介は言われた通り道場に向かった。刀と言っても全くの無名の刀。こんなの渡してどうするんだと思っていると、師匠である父は口を開いた。
「この刀は先祖代々当主が受け継いできた家宝だ。免許皆伝をしたお前にこの場をもってこの刀を託そう。それとともにお前には大事な話をしなくてはならない。この刀、そして立花家の成り立ちについて...」
その時突然激しい頭痛に襲われた。
(なんだこれ...)
頭痛とともにおびただしい悲鳴が聞こえてくる。思わず膝をつき頭痛を必死にこらえようとしたが、一向に治らずついには倒れてしまった。意識を失いかけたその時悲鳴とともにかすかに言葉が聞こえてきた。
「この世界は...し...じつを...るべきなんだ!」
「...は...く人ではない!」
いろんな言葉が聞こえたがどうにか聞き取れたのはほんのわずかだった。
激しすぎる頭痛でそれどころではなかった。
「大丈夫か?!今救急車を呼ぶ!待ってろ!」
薄れゆく意識の中で父がそういって道場を出たのがわかった。
未だ頭痛続き、意識が途切れかけた。
しかし、最後の言葉だけははっきり鮮明に聞こえた。
「この世界の救世主になってくれ!」
それが聞こえたと同時に意識は途切れた。
顔に柔らかい感触がして目が覚めた。頭痛は消えたが視界は真っ暗で状況がわからない。ここがどこなのか、どのくらい時間がたったのか、何一つわからない。ただひとつわかることは今顔に当たっている物体は女性の胸可能性が高いってことだけだ。
(この匂いは女か?むふふ...)
と思いながらも女性が全く動かないことを不安に思い、肩あたりをつかんでどかしてみた。しかし、その女性らしき物は生気のない転げ方で地面に横たわった。
(なんだ人形か?)
と思った。ここでまだ薄暗く、さっきから水の滴る音が聞こえていることに気が付いた。また、さっきは人形が顔の上に乗っていたことで気付かなかったが、嗅いだことのない妙なにおいがしている。
(何かおかしい...体の震えがとならない)
しかし、薄暗くほとんど何も見えない。暗闇の中で手を伸ばすと持ってきた刀があった。それを握りしめたと同時に、奥の方から奇声が聞こえた。今まで聞いたことのない、この世の者とは思えない声だった。これに驚き後ずさりしていると、手に濡れた感触があった。さっきからの臭いといいこれは血かと思った瞬間。奇声の主がこっちに近づくのがわかった。さっきからあまりの事態に気が動転しており、刀を抜こうにも腰が抜けて立てなかった。この時晋之介は死を覚悟した。しかし次の瞬間、壁が突然外から破壊され、光とともに男が一人奇声の主と晋之介の間に割りいる形で入ってきた。男は西欧の騎士のような格好に日本刀のような刀を持ち、晋之介に背を向け立っていた。
後にこの男は晋之介の運命を大きく変える人物である。否、晋之介が男運命を変えたというのがふさわしいかもしれない。とにかくこの二人の出会いによって世界を巻き込んだ大きな動乱につながるのであった。
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