第8話 修司、戦闘開始!
その夜遅く、1人のスーツのイケメンが修司の部屋を訪れた。
「ご無沙汰しております、相沢さん」
「お久しぶりです、天野さん。なんか、お互いに老けましたね」
「本当に、老けました」
「中へどうぞ、狭いですけど」
「はい、コーヒーです」
「どうも」
「早速なんですけど、この男を潰してほしいんです」
修司は弥生からもらった名刺を差し出した。
「5~6年前の名刺ですので、今頃は何か肩書きがついていると思います」
「この男を、どうしたいんですか?」
「徹底的に潰してやりたいんです」
「具体的には?」
「今、結婚しているなら即離婚。こいつ、絶対に浮気してるんですよ。浮気写真、エロ画像、エロ動画で、まず離婚。親とは離縁。会社からは追放。こいつの居場所を全て無くしてやりたいんです」
「では、浮気社員の類いは、奥様、奥様の実家、慎也、慎也の実家、そして会社に送ればよろしいかと」
「ただし、慎也の家は金持ちなんですよ」
「はい、それで?」
「奥さんと子供が暮らすのに困らないだけの額を引っ張って来てほしいんです」
「わかりました、私、天野涼、久々にやる気が出ました。力を貸します」
「ありがとうございます」
「でも、相沢さんはどうして彼を?」
「慎也に遊ばれて捨てられて自殺した女子大生と知り合いだったんです。最近になって、知り合いだったことに気付きました。もう許せません。社会から抹殺したい」
「わかりました、1週間~2週間で最初の報告が出来ると思います」
2週間後、天野が再び修司の部屋を訪れた。何故か、天野はマスクをつけた小柄でスタイルの良い女性と一緒に現れた。
「はい、コーヒーしかないですが。そちらのお嬢さんもコーヒーでいいですか?」
「修司さん、こちらの女性は小夏さんです」
「はい、相沢です。天野さんにはお世話になっております」
「私、中嶋慎也の妻の小夏です」
「え! 慎也の奥様がなんで?」
「驚くと思いますが、小夏は味方です」
「味方?」
「はい、家のパソコン、ドライブレコーダー、携帯、小夏さんのおかげで沢山のデータが集まったんです」
「そうなんですか! ええと、小夏さんは離婚してもいいんですか?」
「離婚させてほしいんです。DVで家に縛られてるだけです。これを見てください」
小夏がマスクを外すと、頬の青あざが痛々しく感じられた。
「全身、青あざだらけですよ。病院に行って、写真を撮って貰って、診断書を貰うこともできました」
「じゃあ、一緒に戦いましょう!」
「そこで、相沢さん」
「なんでしょう? 天野さん」
「今回は料金は要りません」
「何故ですか?」
「僕は小夏と婚約しました」
「えーー!」
「いやぁ、これだけ浮気される女性ってどんな女性かな? って興味が湧いたんです。それで、お茶に誘いました。わざとコーヒーを持ちながらぶつかって、コーヒーをかけて、服を弁償しますからっていう出会いを演出しました」
「さすが、天野さん。スマートな声のかけかたですね」
「すぐに、小夏のことを“守ってあげたい!”と思うようになりました。僕も40歳ですが、これから所帯を持ちます。子供も引き取ります。小夏が27歳だから、歳の差があって少し恥ずかしいんですけどね」
「27歳ですが、もうすぐ28歳です。凉さん、歳の差なんて気にしないでください。ちなみに慎也は29歳です。私達は出来ちゃった婚だったんです。本当は、慎也は私と結婚するつもりは無かったんです」
「そういうわけで、今回は公私混同してしまいましたので、相沢さん達から料金はいただきません。相沢さんは、僕達を出会わせてくれた恩人ですから」
「いいんですか?」
「はい、料金はいただけません」
「では、料金はお言葉に甘えます。じゃあ、いよいよ戦闘開始ですね!」
「そうなんです、今夜は細かな打ち合わせに来たんです。浮気とDVの証拠は沢山あります。まずは、全部見てください。動画もありますよ。相沢さん、明日は休みですか?」
「はい、明日は休みです」
「じゃあ、今夜で終わらせましょう。写真も抜粋した方がいいですよね。ドライブレコーダーで、ホテルに入っているところも写っていますよ」
その晩、相沢の家は朝まで盛り上がった。さあ、反撃開始だ!
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