暗闇の少女
暗い中で1人ぼっちの私は、いつもこの建物の中を彷徨っていた。この建物の中は、たくさんの部屋があって、たくさんの机と椅子がある。その部屋の一つに、魚が2匹いてね、いつも私の周りを泳ぎに来て、とても可愛いんだよ。なんて名前のお魚さんなのかなぁ。小さくて、青い色をしている。私は見たことがなかった。他にも、大きい部屋があって、色々な球がある。それで遊ぶんだ。これはね、良く跳ねるんだよ。
トン――トン―トントントントントトンって感じ。
他にもね、この部屋にある歯は音がなるんだ。すごくない?
後ね、白くて隙間がたくさんある置物もあってね、動かして遊んでるんだよ。それが楽しくて、ついつい笑っちゃう。
でも、たまーに汚いときがあるからお掃除するの。私がお掃除したらピッカピカになっちゃう。いい気持ちになれるんだ。
いつもそんな事をしている。
たまに人が来るんだけど、皆、私が遊んでいたら逃げちゃった。誰もいないのにボールが跳ねてるとかピアノがなってるとか言って。私はここにいるのに。あ、ピアノって言うんだ、あの音が鳴る歯は。また一つ賢くなっちゃった。
今日は人が3人も来た。近づいて話を聞いてみようっと。
「我らオカルト研究部は学校の七不思議を解明するためにここに来たのだ。今更怖気づいても意味ないだろう!」
「部長、普通に怖いんですけど。部長は怖くないんですか?」
「怖いはずがないだろう!」
「そうですかぁ…… 七不思議なんてただの噂だって言った部長を信じる事にします。」
「ああ!ついてこい、まずは体育館だ!」
おお!この人たちも私の遊びを見に来たんだね!
えっと、ここの部屋は球で遊ぶ。体育館、と言うみたい。
「ん?ボールの音か?扉を開けるか。」
来たよ。逃げないでほしいな。
「…ひとりでにボールが動いてます…」
私はここにいるよ?ねぇ…
「…次は理科室だ。」
「ハイ。」
次の部屋は……お魚さん、やっほー。白い置物を動かして遊ぶ。少しだけいたずらしてみようかな?
「骨格像が動いている…だと。」
「部長!魚もいません!」
「なんだと…うわぁぁぁ!」
置物を動かして追いかけてみる。驚いてくれたみたいだけど…逃げちゃった。次はどこかなぁ。まぁいいや。ピアノで音を出してよっと。
いい音が鳴る。♪〜〜。きれいな音が鳴る。扉が開く。
「ピアノが…勝手に…!?」
「七不思議の、五つ目…!」
七不思議?なんだろう、それ。
「すまないが、俺は帰る!」
「部長!?逃げ足はや!」
あーあ。また帰っちゃった。でも、どうしてこの子は帰らないんだろう?
「あなたは、誰?」
やった、やっと話しかけてくれた。私は宇美。あなたは?
「………声が、出ないの?」
え?声は出してる、出してるよ?
「ごめんね、触るよ。」
この少女に触られた瞬間、私の体が光った。
「これは…?」
「これで話せるね。」
「えっと……?」
「私ね、霊感が強いみたいで、その霊感を与えることで話せるようになったってだけだよ。」
「幽霊!?どこにいるの!」
「え…あなただけど…」
「私が、幽霊?」
「うん。」
「えっと…じ、自己紹介が遅れたね。私は宇美。」
「私はリミ。」
「私が幽霊って、嘘だよね?」
「ごめんなさい…本当なんです。」
「じゃあ、どうしてリミは幽霊の私が視えるの?」
「霊感が強ければ視えるってだけだよ。」
「ふーん。ありがとう。遊ぼうよ。」
「遊ぶ前にさ、聞きたいことがあるの。」
「聞きたいこと?」
「ここには、七不思議って言うのがあってね、その中の5つがあなたに関係するものでね。もしかしたら、他の2つの、関係してるんじゃないかなって思ったの。」
「うーーん。たまに掃除をしてるよ?」
「それが6つ目だね。あと1つあるんだけど……」
「心当たりはないなぁ。内容を教えてくれないかな?」
「えっとね、駐車場のあるスペースだけ呪われてるって話。そこに停めた人が次々に水難事故にあっている。これには背景があってね。
昔、それも大正時代のことなんだけど、この学校が建つ前に、他の学校が建ってたんだって。ある日のお昼時、大雨が降って洪水がおきた。皆すぐに避難できたんだけど、1人だけ取り残された女子生徒がいた。その子は、溺れて死んじゃって、その遺体があった場所、それが呪われてる駐車場だって言われてる。」
昔、洪水、取り残された、女の子…
「イヤァァァァァ!!」
「どうしたの!?」
取り残された。置いてった。皆、転んだ私を、置いていった。
「たすけて……!」
叫んでも、誰も来なかった。そのうち、水が…水が…
何も、見えない、何も、聞こえない。
「苦しい……」
そのまま……
「………全部、あなただったのね。」
何も、言えない。
「あ、体が、光ってるよ。」
「リミ、ありがとう。見つけてくれて、思い出させてくれて。またね。」
消えた。七不思議の根幹は去っていった。
後日。呪われた場所がなくなり、水難事故にあうひとがいなくなった。七不思議も、もう無くなった。噂は途絶えたが、唯一、残り続けている伝承がある。
――宇美の伝承が――
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