夜の学校の謎

うわぁ…不気味だなぁ。ここにいる全員が思っているだろう。夜の学校は、不気味だ。

「やっぱりやめとこうよ〜。ちょっと怖いよ。」

恵莉が言った。

「ここまで来て引き返すわけにはいかないだろ。」

悠哉が言った。

「そうだよ。行くしかないよ。」

愛美が言った。

「怖がりだなぁ。恵莉は。」

玲志が言った。

「行こうよ。」

柚衣が言った。

「大丈夫だって。何も起こらないよ。」

白玖が言った。

「うう…わかったよ…行くよ。」

「いざ、侵入だ!」

学校の中へ…の前に、なぜ私達がこんなことをしてるのか、伝えようかな。




いつもの6人(恵莉、愛美、柚衣、悠哉、玲志、白玖)で話しているとき、唐突に悠哉が言った。

「夜の学校、探検してみたくね?」

全員、賛成と言った。夜の学校なんて、普通は入れない。だから、とても楽しみだった。

こんなふうに、簡単に、気軽な気持ちで夜の学校へ行こうと言う話になったのだ。

学校へ入る。鍵は、悠哉が持っていた。盗んだらしい。

…やっぱり…怖い…。

「怖いよ…やっぱり私…無理だよ…」

「何言ってるの?ここまで来たんだよ?」

「ごめん…やっぱり、私には無理。」

「実は…俺も…」

「白玖も!?」

「良いよ。帰りたいなら帰って。強制はしないよ。」

「それじゃあ、またね。」

「ごめん。私も、帰る…言いづらかったから言えなかったけど、怖い…。」

「柚衣も!?」

「俺は帰らない。」

「俺も。」

「悠哉と玲志か〜。それじゃあ、行こっか。」

恵莉と柚衣と白玖は、帰路についた。愛美と悠哉と玲志は、学校の探検へ行った。

次の日。学校に残った3人は、来なかった。

いや、机がなかった。まるで、最初からそこに誰もいなかったかのように。存在自体、なかったかのように。

来なかったのではない。消えた。そう、確信した。

その証拠に、先生が、

「あれ?愛美さんと悠哉君と玲志君は?」

と聞いたところ、クラスメイトは全員、誰?そんな人はいません。などと言っていた……あれ?おかしい……存在自体が消えたなら、どうして先生は3人のことを知っている?

答えは、先生が知っている――。




下校時。先生に聞きに行く。もちろん、3人で。

「先生。聞きたいことがあります。」

「何ですか?」

「どうして、先生は………3人のことを、知っているのですか?」

「どうしてって…担任だからですよ。」

「先生、あの3人は、消えてしまいました。」

「ええ…まるで、最初からいなかったかのように。」

「原因は………きっと…」

「先生は、昨日、夜まで学校にいましたか?」

「ええ。いました。確か…午後8時くらいまでは。」

「先生、怒られるようなことを、私達はしました。」

「それが原因?」

「はい。夜の学校に侵入しました。」

「そして、俺達3人はすぐに外に出たんです。でも、あの3人は、そのまま………」

「なるほど…分かりました。この学校の中にいた人は覚えているのですね。まだ学校の中にいるかもしれないので、探しましょう。」

「はい。」


校内捜索。隅々まで捜した。でも、いない。捜しても、捜しても、本当に…いなかった。


合流する。

「いた?」

皆、首を振る。

「そっか…」

「……気になったことがある…」

「何?」

「玄関が、オートロックで、鍵を差す場所がなかった。つまり、カードキーになっていた。」

「え??」

「機能の一部が変化している…?」

「もしかして…もしかしてだけど……3人が消えたのではなく、俺達が、別世界に来たんじゃ…?」

「どういうこと…?」

「パラレルワールドって知ってるか?」

「知らない…」

「この世界は、様々な部分で分岐している。木の枝のように。その世界は、全て、少しづつ違うんだ。」

「違う世界…」

「この世界は、あの3人がいない世界。もともといた世界は、6人一緒の世界だった。」

「つまり、あの3人が消えたんじゃない。私達が別世界に移動したってことだね。」

「そうだ。」

「原因は、やっぱり…」

「夜の…学校」

この学校には、何かがある気がする……。



ひとまず、夜の学校に侵入することが最優先事項ということになった。

この世界の学校は、カードキーで鍵の開け閉めができる。そのカードキーは、校長先生と教頭先生が持っている。だから、カードキーの入手は、非常に困難。

どうやって学校に入ろうか………あ……

「先生…先生が、学校に残れば、私達は窓から出入りできる…。」

「良い案ね。もとの世界に戻るためなら、仕方が無いでしょう。」

「良かった…ありがとうございます。」

「一旦、あなた達は帰りなさい。」

「さよなら。」



家を出るのは簡単だった。


学校に向かう。恵莉と白玖は、先に着いていた。

「揃ったね。行こう。」

「うん。そうだね。」

窓の近くに先生がいた。開けられた窓から、学校に入る。懐中電灯で、辺りを照らす。

…この学校には、何かがある…どうして…私達は、違う世界に来たのだろうか。見つけたい。

「1階から順に見ていこう。はぐれないでね。」

「分かってる。」


1階は、特に何も無かった。


2階は、様々な教室がある。実験室の人体模型には驚いてしまったけど、何も無かった。


3階は、各学年の教室。何も無かった。


4階は、講義室が多くある。同様に、何も無かった。


5階は、


「あれ?5階なんて、あったっけ?」

「ない…」

「鏡がある。」

「っ!?」

「なん…で?」


白玖が、写って無かった。

反射的に、振り返る。

「なんで!?白玖!」

鏡があると言ったのは、白玖だった。一瞬で消えた?なぜ……

「白玖!どこ!」

「せんせ…あ…」

先生が、笑っていた気がした。

「先生!白玖はどこですか!」

「柚衣さん。さよなら。」

「ま――」

        ・ ・ ・


白玖も、柚衣も、先生も消えた。私は、独りになった。とても、心細い。絶対に、ここに、何かある。鏡以外に、何か、別の物があるはずだ。探せ。探せ。






見つけた…扉だ…。開けてはならない扉って感じだ。私は、意を決して、扉を開けた。


        ・ ・ ・


少し時を遡る……


うわぁ…不気味だなぁ…他の2人も、そう思っているだろう。夜の学校は、不気味だ。

「やっぱり辞めとこうよ…」

「せっかくカードキーを拾ったんだから、侵入する他無いでしょ。」

「怒られないかなぁ…。」

「大丈夫だ。カードキーを戻しに行くだけだから。」

「分かった…。」

学校の中へ…の前に、なぜ私達がこんなことをしているか、話そうかな。


きっかけは、落ちていたカードキーだった。私はそれを拾い、ポケットの中に入れた。そして、そのまま忘れてしまった。学校に戻しに行くけれど、1人だと怖いため、付き合ってもらってる感じだ。


学校に入り、職員室の近くに落としておく。

そのまま、学校を出て、家に帰った。

次の日、学校に行く。席に座ると、違和感を覚えた。席が、3つ、多いのだ。

「おはよう。」

白玖が来た。

「ねぇ、白玖…席が多いんだけど…」

「本当だ。」

「おはよう!」

振り返ると、知らない誰かがいた。

「だ、誰!?」

「え?私だよ?愛美だよ?」

白玖の方を見る。

「愛美?そんな人、俺も知らない…。」

「は?それってどういう…」

言い終わらないうちに、2つの声がした。

「おはよう。」

「おはよー。」

またまた知らない人。愛美さんの友達だろうか。

「おはよう。悠哉、玲志。」

え?知らない名前だ…本当に…聞いたことがない。

「恵莉と白玖も、おはよう。」

「え?待って下さい。本当に誰ですか?」

「え…?」

「恵莉。白玖。おはよう。」

「あ、柚衣。おはよう。」

「誰?この3人…」

「おい…マジか…」

「忘れたのか?俺らのこと。」

「ごめんなさい…席が増えていたので…驚いていて…」

「席が増えた?」

「ずっと一緒の数だけど……」

すると、白玖が口を開いた。

「パラレル…ワールド…」

「並行世界?それがどうしたの?」

「そうか。分かった。恵莉と柚衣と白玖は、別世界から来たってことだな。」

並行世界…パラレルワールド…原因は…

「それじゃあ…こっちの世界の3人は…?」

「原因は?」

「…原因は…きっと…夜の学校だろうな。」

「考えてることは一緒ってことか〜。」

夜の学校…。

チャイムがなり、先生が入ってくる。

「誰!?」

先生がそう言った瞬間、私は、この人も同じだと分かった。

「あ、ごめんなさい。勘違いだったみたいです。」

教室に、笑いが起こった。私達6人は、笑わなかった。いや、笑えなかった。事実を、知っているから。



放課後、先生と話す。もちろん、6人で。


「先生、聞きたいことがあります。」

「何ですか?」

「どうして先生は、誰と言ったんですか?」

「それは…」

「この3人を見たから。ですよね。」

「どうして…」

「私達は、どうやら、並行世界に来たようなんです。証拠は、この3人。」

「並行世界…?そんな非現実的なこと…」

「あるんです。実際、今、こんな状況なのですから。」

「まぁ…そうですよね…。」

「問題は、どうやって戻るか、ですけど。」

「先生は、昨日、夜まで学校にいましたか?」

「ええ。」

「今、原因がはっきりしました。夜の学校です。」

「夜の学校?そしたらあなた達には関係ないんじゃ…」

「昨日、入ったんです……夜の学校…」

「……ダメでしょう…いいえ、怒るのは後です。夜の学校に侵入。それが必要ということですね。」

「はい。」


先生の理解が早い。

「俺達はついて行きますか?」

「いや、君達まで並行世界に飛んでいく可能性があるから、止めておいたほうが良いよ。」

「そうか。分かった。」

「夜、学校前に。」

「分かった。」


先生は、学校に残り、私達は家に帰った。




夜。家を出て、学校へ。恵莉と白玖は、先に着いていた。

「揃ったね。 行こう」

「うん。そうだね。」

窓の近くに先生がいた。開けられた窓から、学校 に入る。懐中電灯で、辺りを照らす。

この学校には、何かがある。どうして私達は、 違う世界に来たのだろうか。見つけたい。

「1階から順に見ていこう。 はぐれないでね。」

「分かってる。」


1階は、 特に何も無かった。


2階は、 様々な教室がある。 実験室の人体模型には驚いてしまったけど、 何も無かった。


3階は、 各学年の教室。 何も無かった。


4階は、講義室が多くある。同様に、何も無かった。


5階は、


「あれ?5階なんて、あったっけ?」

「ない…」

「鏡がある。」

「っ!?」

「なん…で?」


白玖が、写って無かった。

反射的に、振り返る。

「なんで!?白玖!」

鏡があると言ったのは、白玖だった。一瞬で消えた?なぜ…

「白玖!どこ!」

「せんせ…あ…」

先生が、笑っていた気がした。

「先生!白玖はどこですか!」

「柚衣さん。さよなら。」

「ま――」

        ・ ・ ・


白玖も、柚衣も、先生も消えた。私は、独りになった。とても、心細い。絶対に、ここに、何かある。鏡以外に、絶対に、別の物があるはずだ。探せ。探せ。






見つけた…扉だ…。開けてはならない扉って感じだ。私は、意を決して、扉を開けた。


         ・ ・ ・



2つの世界で、扉を開けたのは、同時だった。




扉を開けると、廊下があった。さっきと、同じような風景。ただ1つ、隣に、もう一人の私がいること以外は。

同時に叫ぶ。

「えーー!?」

「わっ私…」

「もう一人の、私…。」

「もしかして、ここは…」

「パラレルワールド同士の、狭間…?」

考えたことが、もう一人の私から、聞こえる。息がぴったり。本当に…私なんだ。

「奥の方、見て。また鏡があるよ。」

「本当だ。怪しい…」

「何かが、ありそうだね。」

「行こう。」

鏡の前に立つ。すると、鏡が光った。私が、手を入れる。

「入れるね…これ…。」

「入ってみよう。何か、ある気がする…。」

そして、鏡の中に飛び込んだ。


「…ここは…」

「見覚えが…」

「ある…。」

来たことがある。ここに…。たくさんの鏡がある、この場所に。

あの日、公園で2人と遊んでいた私が、捨てられていた鏡に入ってしまった。その時に…

「ここで私達は、一度、会っていたんだね…。」

「そして、あの日、世界が変わったんだ…」

「入る鏡を、間違えた。」

そう。その日、3人と会ったのだ。本当の私の世界にはいるはずのないあの3人に。

でも、忘れてしまった。今日まで…ずっと。

「私達…もとの世界に戻っただけだったんだ…」

「そうだ!白玖と柚衣は!?」

「居なくなった…鏡に写った瞬間…あ!」

「ここに…いるかもしれない…。」

探さないと…

「行こう!」

「待って。柚衣が消えた時、先生が何か言っていた気がする…。」

「っ!?まさか…先生が?」

「そのとおりだよ。恵莉さん。」

「先生!」

「君達は本来とは違う世界にいたからね。戻すためにやったの。でも、まさか、ここまで息がぴったりだとは思わなかった。そのせいで、こっちの世界に入れたんだね。」

…なぜ…

「普通、別世界の人間は、性格も、年齢も、全然違うはずなのに、あなた達の世界同士は、とても似ていた。今まで、見過ごしてしまっていたよ。」

「どうして…どうして、住み慣れた世界から、離れなければならないのですか!?」

「それが、ルールだから。世界を繋ぐ、この世界の。」

「ルール?あの世界が、私の世界。本来とは違う世界で、私は、生きてきた。急に違う世界に行けないです。」

「ダメ…あなた達が危ない目に会う…。」

「それでも、私達は、住み慣れた世界が良いんです。」

「ごめんなさい。ルールは、ルールだから。あなた達は罰せられてしまう…残念です。」

刹那、上から、何かが降って来た。

上から降って来たのは、人だった。

罰…先生は…そう言った。どれだけ住み慣れていても、どれだけ長い時間住んでいたとしても、違う世界という事実は、覆らない。でも…でも、私…いや、私達にとっては、本当は違う世界が、正解の世界。その考えを無視するなんて…こんなの…こんなの間違ってる!

「私達は…負けないよ。絶対に。」

「当たり前だよ。私は、私だ。」

「絶対に、」

『帰る!』

人が言う。

「そんなに、間違った世界が良いのか?」

答えは、決まっている。

「もちろん。私達にとっては、本当の世界。間違ってなんかいない。」

「そうか…。住み慣れた世界が良いか。」

頷く。

「急に違う世界に行くことは苦となる。よし。帰って良いぞ。」

「え…?なぜ…」

手のひら返しだ…

「罰なんて嘘よ。あなた達の本音を聞きたかっただけ。本当に似すぎてる。あなた達は。」

「なんだぁ〜。」

「さぁ、住み慣れた世界に帰りなさい。」

鏡の前に立つ。

「お別れだね……」

「また…会えるかな…?」

「会えるよ…きっと。」

「そうだね。」

進む。帰る。それぞれの世界に。


次の日。


「おはよう。」

「おはよう。」

「愛美。おはよう。」

「おはよう。」

「皆…おはよう。」

「…戻ったんだよな。」

「無事に…ね。」


夜の冒険は終わった……はずだった。


「皆さん。」

「あ、先生。」

「6人でこっちに来て。」

なんだろう…。

「皆は…知ってしまったからね。特別よ。」

壁に、扉が現れた。

「え?何…これ…。」

「階段?」

「恵莉さんは、奥まで見に行ったでしょう?この上の廊下を。」

「5階への…階段…」

「皆は、この階段を上ることができる。そして、世界の狭間に行ける。秘密ね。」

「はい。」

世界の狭間…あそこで、会えるってこと…会いたい。



放課後。階段を上り、扉の前に行く。そして、開く。


ああ…やっぱり…似てるんだなぁ。


「また…会えたね。」


end

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