第105話お仕置きの時間
なんだか楽しそうな声がする。
神々がまた宴会でもしているのだろうか?
目を開けると、猛吹雪の真っ只中にいた。
「うわぁぁぁぁああ‼なんだよコレ!どこだよ!」
身動きが出来ないと思ったら、岩にトラロープで縛りつけてある。
すると、すぐ横の雪山にかかっていた毛皮がめくりあげられた。
「魔王様。起きたようです」
「あっ、おはよー」状況にまるでそぐわない呑気な声だ。
「なんだよコレ!外せよ!」
「それは願いを叶えてくれたら外すよ。お願い事覚えてる?」
「なんだよ、それ!」
「この世界の権利を女神ちゃんに移行してほしいってお願い」
「ふざけるな!」
「ふざけてないから、今この状況なのー」
吹雪がひどくて叫ばないとお互いの声が届かない。
「今すぐ外せ!」
「お願いを聞いてくれたら外すよ。
あとそのロープはかつて神々にお納めした、切れないと評判のグレイプニル。
カツラもドアーフの傑作だよー」
確かに頭にツノの生えたカツラが乗っていて、蛇のような髪が暴れている。
しかも吹雪で飛ばされないように地毛にしがみつくもんだから、毛根が悲鳴をあげている。
「そのカツラ、意外とあったかいでしょ?」
「それ以前の問題だろ!」
髪をごっそり抜かれそうな痛みに耐えながら叫ぶ。
「これは神に頼む態度じゃないよな?人にもの頼む態度でもねーよなぁ!」
神である自分が吹雪の中、岩に縛り付けられているのに
なんで魔族が、かまくらで鍋パーティしてんだよ!
「そもそもお前!話があるならオレの前に来い!せめてコタツから出てこい!」
「だって寒くて」
「それが理由か!ふざけるな!」
それになんだ?ちゃんぽんって。お前らだけで楽しみやがって!
「こんな事をされてもオレは死なない。オレは神だからな!」
そう、めちゃくちゃ痛いし寂しいけど死なない。
「うん。知ってる。
だから有名なシチュエーションを真似てみたんだよ。高い山の頂に縛りつけて
……あと、この子ね」
コタツ布団をめくると、巨大なワシが出てきた。
「この子知ってる?鳥族のアイトーン君。これから毎日、君の肝臓を食べてくれる
相棒」
「なんだよそれ‼」
「聞いたことない?神様が受けた罰として、前世ではポピュラーだったんだけど」
「そ、そんな事されてもオレは死なないぞ!」
「うん、知ってる。
前世でこの罰を受けた神は三万年後に開放されたんだけど、
有益な情報を持ってたから、それで済んだんだって。
だからお願いを聞いてくれなかったら、そのまんまだね。
ちなみに魔族国の一日は他所より長いから、なかなかの長期戦になると思うよ」
……………殺されるより酷いじゃないか。
「大体お前の担当は妹神だろ⁈」
「その妹ちゃんがシステムに関わる事は神くんじゃないと変えられないって言うからお願いしてるんだよ。
でも神くんでも出来なかった場合を考えて、システムをイジっていいか女神ちゃんに確認に行ってもらってる」
「どこに?」嫌な予感しかしないが、恐る恐る聞くと
「
「バカ!普通そこは学校だろ‼」
「学校とか親だと、こっちが消されそうじゃない?
だからシルフの知り合いのニュンペーに声をかけまくってもらったら
伝令役とかいう神様が迎えに来てくれて、同行してもらってるよ」
なんてことをしてくれたんだ!
「お前の言う事なんか神が信じるか!」
「うん。だから君のブルードラゴンに盗聴器を仕掛けて、兵士を洗脳してる所から、悪態ついて落下するところまで動画で撮影した証拠を持たせたよ。
あと人族の王様を虐待してた音声もね」
「そんなもん、いつ作ったんだよ!」
「君が作った『フォン』の機能じゃない。アレってめちゃくちゃ多機能だよね。
お陰で君の世界の連絡先も割れたんだ。
それで、そこから君の世界のネットにアップしたから、ただいま絶賛炎上中」
「そんな、そんな事したらオレは…オレが社会的に死ぬだろーーーーー!」
「大丈夫でしょ?神、死なないんだし」
「うわぁぁぁああああ‼」
ちなみにハルトには『正義のホワイトハッカーだ!」と言ったら、ノリノリでやってくれました。
「あっ、ゴメン。アイちゃんが寒いみたい。ほら、コタツに入って……
あーーーっ!白滝の隣に肉入れちゃダメだって言ったじゃない!
お肉が固くなっちゃうよーーーーー!」
そしてついに、かまくらの入り口まで閉じられてしまった。
「うわぁぁぁあああああ‼」
叫び声は吹雪に飲み込まれ、北山に響くことはなかった。
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