第92話メイドイン魔族国
<男神サイド>
「………嘘だろう」
新たに兵を配備して、洗脳して士気まで上げたのに、自軍は見事に蹴散らされている
砂漠から化け物が出てきて、面白くなってきたと思っていたら
倒すどころか翻弄された。
こういうのは弱い奴から出てきて、だんだん強くなるのが常識じゃないか!
「なのに、なんだよ、その化け物は………」
砂が持ち上がり始めたと思ったら、大量の砂をまとわりつかせたヘドロが現れた。
生気を感じさせない目と、開いたままの口から砂が流れ落ちる。
下がりたかったが下がれない。
ブルードラゴンゴッドはゴーカートだから!
化け物は投石が当たって跪いたけど、今度は気味の悪い液体を吐き出した。
周りの兵は流されて、そのまま液体に浮かんでいる。
まさか毒なのか?
寒気がした。あんなヤツ居たか?
知らないヤツはオレでも召喚出来ないぞ。
アイツか?妹神か?あんな気味の悪いヤツをオレのゲームに出すなんて!
迫力ある映像を間近で見る程度の気持ちだったのに。
でもブルードラゴンゴッドなら大丈夫だ。コイツには水も虫も入る隙はない。
一度乗り込んだら、内側からしか扉は開ける事が出来ない………
その時、ボンッと嫌な音がした。
「うわぁぁぁああ‼ と、飛べっ!ブルードラゴンゴッド!」
すると翼を生やしたブルードラゴンゴッドはふわりと浮き上がった。
<魔族サイド>
「嘘だろ?飛ぶのか?」
「スゲー!」閣下とハルトが叫んだ。
神くんが乗っているであろうブルードラゴンは、
覆いかぶさるように落ちたバルーン人形に捕まっていたが、どうやら飛ぼうとしているようだ。
「全く往生際の悪いヤツじゃ。直接介入は無いと自分で言っておきながら……」
女神は心底嫌そうに言った。
私も声を上げたかったんだけど、緊張したのか
突然肩で針を逆立てたタワシの針が頬に刺さっていた。
「タワヒひゃん…いたひ……」
赤くなっているらしく、アロレーラがスライムを貼ってくれた。
携帯用のスライムなんて出来たのねー。
その時、首から下げた翻訳機からハンニバル将軍の声がした。
「地獄の蓋が閉じたぞ!」
「よし!総員配置に………」
「ふざけるな‼」
少し離れた目の高さにブルードラゴン。
首の付け根にドーム状のコクピットがあるけど、拡声器でも積んでるの?
ブルードラゴンは、バルーン人形を引っ掛けた状態で非常に不安定に飛んでいた。
だけど訓練の甲斐もあり、総員は配置についた。
イレギュラーな女神ちゃんだけが、またしてもオロオロしている。
本命は最初から男神。
男神のドラゴン以外は砂漠の下に落とされて、床も閉じられた。
「お前らオレを誰だと………」
「撃てーーーーーー‼」
最後まで言わせるつもりはございません。
砂漠を望むアーチ廊下の柱の間には、
マジックテープ開発でお世話になったオナモミさん。
打つか、打たれるか。
多くの国民と対戦し、ついに彼等は『
魔族国の国民となった。
そしてオナモミを打ち返す、アオダモのバッドだが
これはサイクロプスのご先祖が神に献上した物で
打ち返した球が雷になって打ち出せるというシロモノだった。
それと、もうひとつ。サイクロプスが神に献上した物が三叉の銛。
猟師さんの仕事道具だ。
漁師の中には魔グロを素手で倒す者もいるが、そういった者ばかりとは限らない。
この銛はドアーフが作った物より命中率が高いと漁師に人気の品。
男神の襲撃に向けて、鍛冶特化のサイクロプスさんに大量生産してもらったのだ。
でもそんな武器を作られたら、ドワーフは黙っちゃいられない。
ドアーフも負けじと、投げれば百発百中。
しかもブーメランみたいに戻ってくる槍を作成した。
ただこの槍は世界樹様の枝から出来ているので数量限定。
そして強力過ぎる武器は争いを生むので、
この諍いが終わったら世界樹様にお返しする事になっている。
そもそもドアーフのハンマーも神への献上品なので、投げても帰ってくるらしい。
と、言うワケで
「撃てーーーーーーーー‼」
外輪山の美しいアーチ廊下は、バッティングセンターと化した。
トカゲと半魚人の漁師は、イワオの指示で
ドアーフはガルムルの指揮で
サイクロプスはアオダモの
私を含むノーコン達は、投げれば当たる
女神ちゃんは相手が兄だというのに、バットを振りまくった。
いつも雷を落とされる側なので、落としてみたかった………ってあなた
そして盛り上がりを見せる中、エルフは静かに怒っていた。
各種武器作りが忙しくなったため、ドアーフがエルフの弓を作ってくれなかったのだ
しかも理由が
「ハンマーの方が強えぇ」である。
やっと仲良くなったかと思われた両種族は、
またしても、くだらない喧嘩を始めてしまった。
「でもエルフの武器だって十分強力じゃない」
そう言って慰めたつもりだったのだけど、彼等のベクトルは他を向いた。
世界樹様にお願いに行ったのである。
「ドアーフにだって枝を分けたのに!」と言われ、
困った世界樹様が教えてくれたのが、『
戦争とはいえ、犠牲者は出さないと決めているため、
神を直接射らない事を条件に使用を許可した。
そしてブルードラゴンは各種神器にボッコボコにされた。
ドラゴンの運転はスムーズだけど、振動が全くない訳ではない事は調査済み。
いくら頑丈に作ったとしても物理で押されたら、中の人はどうなるかな?
「な、なんでお前らが持ってるんだよ!それを使えるのは神の……うわぁぁああ‼」
球体のコクピットでは、神くんが
ガシャポンのカプセルに入った人形のように転げている。
「使うのは神でも、作るのは生産者さんなんだよ!
生産者をなめるな!開発をなめるな!現場をなめるなぁぁぁああーーー‼‼」
ありとあらゆる恨みを込めながら槍をぶつける。底力とはこういうもんだ。
「これってオーバーキルなんじゃないの?」ハルトが心配そうに言う。
「だからお母さんを本気で怒らせるなって言っただろ?」
そういうあなただって、高笑いしながらアオダモのバット振ってましたよねぇ⁈
「お…オレは神なんだ…!
だからお前はオレに殺されて、世界を返すべきなんだーーーっ‼」
男神はそうして『いかにもなボタン』に手を掛ける。
決して押してはいけないのに、事故を起こすことを見込んでつけたとしか思えない
そのお約束ボタン。
「消えろ!」
神くんはそう言うが発動するワケがない。手元をよーく見てごらん。
「うわっ!なんだキショッ!」
閣下がこちらに来た時点で、間もなく神くんが攻めてくるのは解っていた。
なので、あらかじめ南の王都付近の拠点に潜入していた
女王国のシロアリ隊に動いてもらったのだ。
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