第88話決戦前夜
「おい!いつまでそうしてるつもりだよ!戦争だぞ!」
男神は、袖で口を塞いだ状態で声を荒げた。
東の王は以前見た時と同じ、窓から離れた壁の側に
銃を抱えて倒れていた。
南の国は異臭があふれ、息を吸うのも躊躇する程。
頭にきて蹴り飛ばしたが、東の王はピクリともしない。
死んでいるのかと思ったが、何かをずっと呟いていて不気味だ。
いよいよ狂ってしまったようだ。
「オレに願え!今すぐだ!」だが反応はない。
「王の代わりにオレが役目を果たす。お前は願いをオレに託す。
それでいいな!」東の王は変わらず何かを呟いている。
「同意だな」強引だが仕方がない。
このゲームには縛りがある。最初にルールを決めてスタートしたら、
プレイヤーが全滅するか、規定通りクリアするまで見守らなくてはいけない。
辻褄合わせくらいの改変なら許されるが
『陣取りゲーム』と設定したため、領土を奪い合う以外の終結はないのだ。
似たようなゲームを作ったヤツがいて、そいつのは二国間での戦争が泥沼化して
ちっとも終わらないと嘆いていた。
だから2対2で小競り合いをさせて、半分になったら解放しようと思っていた。
大抵が大国に飲み込まれるか、対抗するために同盟を組むからだ。
その過程をちょっと手を貸しながら眺めようと思ってたんだ。
シューティングゲームは敵キャラの調整が難しくて、プレイヤーが即全滅したり
逆に強くし過ぎて秒でクリアされる物もあったし、
RPGを作ったはずが、勇者がスローライフを始めてしまって
魔王が世界を席巻したものの、オーバーワークで体を壊して療養中なんて物まであった。
プレイヤーがゲームをクリアすれば、ゲームは神の手を離れ
並行世界として自立する。
そしてプレイヤーが転生を希望するなら、輪廻の輪に戻す決まりになっていた。
最初の王達が仲間割れを始めた時に、あのまま終わらせてしまえば良かった。
しかもゲームは基本見守りだ。
直接参加をすれば巻き込まれる危険がある。
だけどプレイヤーが役立たずなら介入するしかないじゃないか!
北と西の王が捕まって実質2対2だけど、魔王が台頭していてプレイヤーが足りない。
だから悪の魔王はオレが倒すしかない。これは東の王が願ったことだ。
オレのゲームなんだから、取り返す必要がある。
だからと言って、好き勝手されただけで、あっさり終わったのではつまらない。
所詮向こうは軍事力マイナス。戦う気がないんだ。
前回より強い武器と兵で攻め込めば、どうせ和平とか言ってくんだろ?
ぜってぇ、許さねぇけどな。
折角作った最初の国は、南を除いて何の建物も残っていなかった。
真ん中で魔王の国だけが堂々としていて、非常に胸糞悪い。
臭いをどうにかしたくて掃除をすると、見た目だけは立派な王都になった。
王城前の空いた広場に、新たに召喚した兵を並べる。
甲冑に身を包んだ重装騎士や騎馬隊、チャリオットに投石機も作った。
そしてオレが乗るのは、ブルードラゴンゴットだ。
扉なんか外せない、より頑丈な作りで、武器だってもっと強力にしてやる。
これならきっと秒殺だ。
でもすぐに終わったら面白くないから後ろからついて行ってやる!
色々作ったら懲りたくなってきた。
性能だって格段に上げて、世界を滅ぼす武器だって乗せた。
ゲームだって遊びきれないくらいあって、
ポテト〇ップだって、カップ〇-メンだってあるんだ。
こんな凄いのを見たら、ハルトだって羨ましがるはずだ。
悪の魔王を倒したらハルトと遊ぶ。もうそれしか頭になかった。
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