第20話女王国訪問

カジキのビルは速かった。

まるでジェットスキー?乗った事ないけど。

バイクだったら高速乗れるんじゃない?

乗ったことないけどーーーーー!


落とさないように水面に体を半分出した状態でグングン進む。


「これ普通に泳いだら何キロ出るの?」余裕がなくて叫ぶように聞くと

「日の出から、日の入りまでで2周半回れたぜ!」と叫び返してくれた。


どうりで流れるマグマプールに続いて、海流が出来てるワケだよ!


ちなみにベルト代わりのエノキダケを、ビルの口にかけて

手綱みたいにして、しのいでいるのだけど

波を乗り越えて跳ねる姿は、もはやロデオ。


長い爪、シルフに切ってもらって良かったー。

握りしめたら絶対に刺さってた。



途中で出会った魚人が

「アニキが通るぞー!」と言いながら道を開けてくれる。

あれ全部が魚人なの?どこまでが魚なの?


ビルもそうだけど、魚人は水中では、ほとんど魚と見分けがつかない。

陸に上がって初めてわかる。

歩いて海から上がって来るからね。



そうこうする内に、女王の城が見えてきた。

今回は訪問する形にしたけど、通信システムと移動手段が急務だわ。


ビルにお礼を言って城へと急ぐ。

でもよく考えてみたら女王の城って、かなりの高層階なのよ!


三女王の今のお住まいは

オレンジ色の女王蜂ヴェスパ女王の城。

空軍担当のため、入り口が高い位置にしかない。


えーと、外輪山の高さから見るに

入り口はおおよそ500メートル。そうすると約100階?

そんな絵本もあったなー。

シルフ達の家もあんなだったらカワイイかも…


間違いなくテンパっていたからだけど

考えなしにひとりで出てきた自分がむなしい……


ちょっと現実逃避をしていたら、ドラゴンがこちらに飛んでくるのが見えた。

これ、もしかしてドラゴン待っても、たいして時間は変わらなかった⁈



ドラゴンが近くまで来て気が付いた。

あれ、ドラゴンじゃなくてプテラノドンじゃない?あんな子いたっけ?

と、言うより今までザ・ドラゴンみたいなバーンしか見たことがなかった。


プテラノドンは着地をすると、大きな体に見合わず

モジモジとこちらをうかがった。


シルフが紹介によると、彼女の名前はラノド。

子供の頃の記憶では、両親は彼女と違う姿をしていたらしい。

神話のドラゴンもいろんな姿をしているから、そういった事もあるのかもしれない。


前世の世界で昔、よく似た種族が居たと伝えると目を輝かせていた。

もう少し慣れてくれたら、いろんな話をしてみようと思う。


シルフに服を乾かしてもらってから、女王に面会。

城の入り口までラノドに送ってもらって、蜂の衛兵の先導で謁見の間へ。

ラノドには、ちゃんとカマ子も乗ってきていた。偉いぞ、外交官!



扉の向こうでは玉座にふんぞり返る三女王。

う~ん、デジャヴ。これまた最初からやらなきゃいけないやつ?


そう思ったら今度は慌てだした。またツノが生えてるから驚いたらしい。

でもヴェスピナ女王はどこかホッとしている。

まぁ円形脱毛のままでは心苦しいだろう。

とりあえず、うやうやしくお辞儀をするところから始めた。


「急な謁見に応じていただき感謝いたします。

実は先ほど神が降臨され、これより最終戦争に入ると宣言されました」


慌てながらも、ふんぞり返っていた三女王は

聞いた途端にガタンと椅子を揺らし前のめりになった。


あの椅子、意外に軽いんだな。

まぁ、女子会のたびに持って移動するんだろうからね。


「新しいルールはこちらに」と言うと

カマ子がすかさずルールブックを捧げ持ち、女王蟻に手渡す。

……カマ子、跳ねずに歩けたんだ。

なんかカニが突然、直進ダッシュしたような驚き。


ちなみに女王蟻がアント女王、オレンジ色がヴェスパ女王、黄色がヴェスピナ女王。


元々は蟻と蜂の一国ずつだったらしいんだけど、

ある時、女王蜂が二匹生まれるという事件が起こった。

国を割る騒動になったけど、

双子の王女はとても仲が良く、派閥で別れて二カ国になったらしい。

そのとき独立した穏健派がヴェスピナ女王の国。

立場は一緒だけど、どこか控え目なのは分家だからかもしれない。


そして名前と役職は世襲制。

アントが陸軍、ヴェスパが空軍、ヴェスピナが補給部隊を担っているんだって。

為政者が三人もいると揉めそうだけど、

仲良しだから大丈夫って、人も見習った方がいいよ。



こめかみに手をやり、

ルールブックを眺めていたアント女王が顔を上げ、ギチギチ言った。

ハイ、通訳お願い!


気になったのは、やはり国民数。

当初人族は四つの国に、ほぼ均等割りのような状態で分布していたはずだけど

今は全部南の国民になっている。

国籍みたいなものではなく、国内にいる人数がそのままカウントされるのだろうか?

確認を怠っていたから、どのタイミングで増えたのかは分からないんだけど……


そして問題は王の数だ。

四か国にそれぞれ居るはずの王が、北と東にしかいない。

女神の予想通り南の王は亡くなり、その要因に東の王が関わった可能性が高い。

だが、その前にする事がある。


「王として選ばれるのは私と同じ、異世界人です。

そして異世界人がこの世界でひとりで生きていくのは、非常に困難と思われます。

東の王は現在は南の国におり、最近まで南の王と争っていたようです」


その言葉だけで察してくれたのか、アント女王は触角をピクリと動かし、

ヴェスピナ女王はアント女王に向き直った。

そしてヴェスパ女王は怒ったように羽音を立て続けている。


「ですので、早急に北の王を保護、懐柔すべく捜索隊の結成を考えており、

その人員を両軍から貸していただきたいのです」





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