第11話熱帯トカゲ村
中央から南下すると、微妙に気温と湿度が上がる。
キラメラ族が地中深くにマグマ溜まりを作ったときに、
南は少しマグマの位置を、地表に近くしてもらったからだ。
気候が変われば収穫物も変わるし、
何より南部に住んでいるのは、魚人族とトカゲ族だから。
それに外輪山の外にはなるけど、女王蜂の城は南西と南東の位置にある。
蜂も気温が高くないと活動できない生き物だ。
国交はともかく、どうせやるのなら誰もが暮らしやすい方がいい。
砂漠の真ん中で、一日の温度差が大きすぎるから、
少しでも作物が量産できる気候になってほしい。
難しいだろうけど、確か似たような地形の場所が地球にもあったはずだ。
そんな事を考えながら歩いていると、川トカゲの集落が見えてきた。
川トカゲはコモドオオトカゲに似た大柄さん。
でも見た目通りというか、砂トカゲに比べると家の建て方がワイルドな感じ……
三匹の子豚のお兄さんの家だな…。
後でドアーフに、いや多種族の大工集団結成出来ないかな?
川トカゲは稲を栽培しているというので見せてもらうと、
形的にはタイ米のようだった。そして量もあまりない。
タイ米はパラッとしてるから、炒飯とか炒める料理には合うのだけど
白米で食べるには、少々水分量が足りない。
ハーベスト村には小麦しかなかったし
前世の習慣から米は食べたいけど、う~ん、ないのかインディカ米は…
するとどこで話を聞きつけたのか、ネズミのジャンがやってきて
東の国にソレらしい米があるようだと教えてくれた。
本格的にいろいろ栽培したいと相談すると、
ネズミたちを穀倉地帯に派遣して、調査をしてくれる事になった。
やっぱりこの子、先見の明がある。
商人の感覚で物を見てるし、情報収集能力は国で一番のレベルだ。
商工ギルドの元締めをお願いしようかな。
更に歩くと沼トカゲのエリア。
川トカゲより更に大柄で、ワニみたいに皮膚が硬そうだ。
彼等は漁師で泳ぎが得意。
このエリアは岩場から急に深い海になっている。
本当の海に比べて奥行きが取れないから、ある程度の深さをとってもらった。
そうあくまで人工的な海なのだ。
おまけに元からある沼が塩湖というのが、もはや悪意を感じるレベルなのだけど
環境に適応できた沼トカゲ達は、
その体に似合わぬ小魚を食べて、細々と暮らしていたらしい。
キラメラが岩塩の層を見つけたので、海に溶け出すように剝き出しにしてもらった。
でもここには小魚しかいない。
大所帯を支えるには心もとないので、
魔王の『魔獣を召喚する能力』で魚の魔物を呼び出す事にした。
「それで候補の魚なんだけど、調理方法も広めたいから
私が前世で食べつけていた魚でもいいかな?」
「俺達は焼いて食うだけでしたし、
焼くと身が縮むからと、焼かずに食ってた奴までいる程です。
腹持ちが良くなれば、それだけで有難いですよ」
そう話すのはトカゲ村の村長、イワオ。
トカゲ達には集落というイメージはなかったようだけど、
近所付き合い程度の交流はあったらしい。
誰かひとり代表者を決めてほしいとお願いしたら、
立候補者もいたのだけど、沼・川・砂トカゲがそろって推したのがイワオだった。
本人はむしろ遠慮したい感じだったけど、話を聞くに
彼は『頼れる兄貴タイプ』らしい。
三種族の中で一番大きい沼トカゲだけど、イワオはその中でも一際大きい。
顔は皮膚の硬いコモドオオトカゲみたいだけど、
見るからに頼りがいのある、キレッキレのマッチョさん。
見た目は強面だけど、魚の獲り方を周りに教えたり、食べ物を分けてあげてたりして
お世話になっている者も多いそうだ。
イワオは体系に恵まれたけど、岩トカゲ全般がマッチョな訳ではないので、
放す魚のレベルを少しずつ上げていこうと思っている。
「それで候補に挙がっているのは……
魔イワシ、群れに引き込み、溺れさせようとする。
魔アジ、ぜいごが鋭く、切り付けられるとノコギリで引かれた様な傷になる。
魔サバ、尻尾で殴りつけてくる。
魔グロ、音もなく忍び寄り食おうとする。こんな感じなんだけど」
「なかなかの曲者ぞろいですね」
ルールブックを読み上げるとイワオはニヤリと不敵に笑っている。
「今のところ、塩分濃度を気にしなくても生息できそうだから、まずは食料確保
大きくなるほど凶暴性を増すから、
最初は小さいサイズから慣れてもらおうと思っているんだ」
「ハーベスト村には川魚しかいませんでしたが、漁の道具が見つかりましたし、
体の小さい奴には、網と釣り竿を使わせますよ」
ちなみにハーベスト村の川魚は塩水が合わなそうなので、ため池で様子を見ている。
トカゲ達はハーベスト村から持ってきた橋を桟橋にリフォーム中。
力のある沼トカゲが材料を運び、器用な砂トカゲが釘を打つ。
川トカゲも昨日より、ノコギリが上手くなったようだ。
そんな大工集団にも声を掛けておく。
「聞こえていたと思うけど、魚だからと油断しないでね。
慣れてきたら大きな魚を出すから。
漁師チームは魔族国の、貴重な戦力だからね!」
言った途端に歓声を上げるトカゲ達。意外なほどノリがいい。
「俺達にはコレがあるしな!」
そういうトカゲ達の視線の先にあるのは、
こちらもハーベスト村で見つけてきた銛。
誰かがカッコいいと言い出したら、強さの象徴みたいになってしまったらしい。
男の子ってホント、武器が好きだよね。
でも多分女の子も混じっているのよね。雌雄の見分けが全くつかないけど……
魔獣相手とは言え、こちらを一筋縄ではいかなそうだ。
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