第5話生き返ったようです

「お目覚めになられたぞー!」

目の前には涙を流すコモドオオトカゲ。

あれ?デジャヴ?


みんなワーワー泣いている。特にワニとトカゲ。

爬虫類って感情豊かだったんだね。

あっ、サイクロプスもだ。

そこのマグロのような人(?)大丈夫?干上がらない?

そしてキラキラしながら飛んでるアレは生き物?

他にもギラギラしてたり、グネグネしてたり、ギチギチしてたり……


多種族が抱き合って泣いていた。

たぶんね本当の平和ってこんな姿だよ。

絵面はカオスだけど……


「本当にお主は思いもよらぬ事をするのじゃな」

女神は少々呆れている。


魔法をかけ終わった途端、人々を集めていた結界がとけたので

今は少々広がって座っている。


「兄者に喧嘩を売った途端に死におって!」

「あぁ、やっぱり死にましたか?」

「お主が死んだら此度の意趣返しは全部、我のせいになるであろうが!

兄者は勝ち負けにこだわる上に、ねちっこいのじゃぁ!」


めんどくせー兄貴だな。

勝負を挑んでくるクセに、負けるとキレるタイプでしょ?

子供かって…この女神の兄なら子供なのか……


そんな訳で、一瞬死んだけど女神に生き返らされたようです。

そして死んだペナルティもあるようで…


「ところで私、縮んでいますよね?」

10歳くらいと思っていた女神の顔が案外近い。


確かさっきまでの私はビキニにパレオという、

防御力ゼロの薄布を纏ったムチムチお姉さんだったが、今は……

……かろうじて性別は分かる。発育の遅い中学生くらいだろうか?


目覚めたとき、自分の姿に一度は躊躇したが、生き恥より人命を考慮した。

そもそも元より胸部装甲は薄かった。

慣れないものが付いていても、肩が凝るだけだろう。

ただでさえ大きすぎるツノのおかげで首がもげそうだ。

フラつく体を細い尻尾で支えているけど、

悪魔的なディテールよりも、カンガルーのような実用性が欲しかった。


「先程までのお主の姿じゃが、人族の王の願いでの、

前任よりドエロい女魔王の姿にしたのじゃが、前任者はおのこでな

その姿を見るなり転生を希望しおって、人族の侵攻を許してしまったのじゃ。

姿が変わったのは、死体に無理に魂を戻したから、材料が足りなかったのじゃな」


王もロクなもんじゃないな。そもそも人選ミスだろう。

それに死んだら終いにならないじゃないか。

こんなザル設定じゃ、下手をしたら

神を満足させるまでゲームが続く恐れまで出てきた。


確か旧約聖書では、泥をこねて人間を作っていたから

神にとって人間はそのくらいの造作もなく作れるキャラクターなのかもしれない。


そう思い納得はしたものの、話を聞いていたケンタウルスが

いかにもドン引きという顔をしていた。


「で、これからどうするのじゃ?」

女神の問いに視線が集まる。


住人は無事。でも国中ボロボロで、そこら中に倒木や岩が転がっている。

とはいえ、元から小さな集落が点在しているだけで国としての機能は無いに等しい。


「やはり建国でしょう」

パレオを肩で結んでロングのワンピースにすると、妖精のような子が紐をくれた。


「ありがとう」と言って受け取ると、紐はみずから腰に巻き付いた。

よく見ると顔がついている。

これってサナダ虫?それともエノキダケ?


「だが、そもそもこれだけの人数を養う食料がないじゃろ?」

「だからこそ王都に人族を移動させたのです」


踊るエノキダケに吹き出しそうになりながら、頬に力を入れてニヤリと笑った。



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