第2話ひとつ目の願い
話を聞くとまさかの戦争中だった。
見たことあるよ、こういう展開。
でもあれは読むのが楽しいの!
巻き込まれ事故とか、たとえ夢でも出会いたくないジャンルなの!
「戦争のきっかけは?こっちが何かしたの?」
砲撃の間隔が短くなり、常に大地が揺れている状態で住人たちは怯えきっている。
住人でいいんだよね?トカゲだけど喋ってるし。
そもそも人はどこですかー?まさかの私だけですかー‼
これ、ドキュメンタリーを見過ぎたか?
元ネタはなんだろう?
トカゲが出てるくパニックムービーなんて、絶滅の予感しかしないんですけど!
そんな空気の中、緊張感のない声が響いた。
「これは神々の遊戯なのじゃ」
見上げると10歳くらいの女の子が空に浮かんでいた。
まだ続くのか?この謎設定。
頭は随分動き出したと思うけど、面倒事に巻き込まれる前に目を覚まそうよ。私。
「詳しくはルールブックに載っておる」
そういうと女の子は、こちらに手のひらサイズの石をほおり投げてきた。
えっ、石?雑っ!
「で、死ぬのか?
お主が死んだらゲームは終い。いい加減飽きてきたのでの」
うん。私も飽きてきた。
だけど自分しか知らないことを、さも知ってて当然のように話されても困るのだが…
渡された石コロは一応はデータブックらしい。
でも、なぜ石?
普通はここでチートキャラとかアイテムとかが出てくるよね。
もしかしてこれ、まさかの賢者の石⁈
……いや、ない。この石にそんな輝きも秘めたる力も感じない…
所詮は夢の話だから作りが雑なのか?
それとも私の作りが雑なのか?
だけど、どうやらご都合主義なだけの話ではないらしい。
なにせテーマが暗い。
でもこうやってツッコミ続けたら、設定に無理が生じて
夢と気づけて目が覚めた事もある。
よし、この手でいこう!
「つまり、これは魔族を一方的に倒す戦争ゲームだと?」
必死にシリアスな表情をする。
だって背後にはすすり泣く人々。
設定は甘いのに、エキストラが感情移入したくなるほど作りこまれているんだもん。
こんな人達の中で、どうしたら目が覚めますか?なんて聞けない。
今度の魔王も狂ってた!って言われるのがオチ。
仮に目の前の少女が神(仮)で、これがゲームだったとしても
ここに生きる人達にとってはリアル。そういう話?
「いや、ただの陣取りゲームじゃ。
元々は兄者と始めたゲームでの、王は全部で4人。
それぞれ2人ずつの王を駒に、3つの願いを与え国を興させる。共闘してもよし。
そして勝ち残った王に、この地を与えるというものじゃ。
まぁ、テンプレじゃな。
じゃが、人族だけでは面白くないとキャラクターを増やしたら
彼奴等め、人族以外のキャラクターを迫害しだしての、
逃げ出した者どもが集まって5つ目の地域が出来たのじゃ。
じゃが、まとめる者のおらん地など蹂躙され放題での
この地にも王を置くことにした。それが魔王じゃ。
魔王は3つの願いと別に魔力を使って魔獣を呼べるチートキャラじゃ。
だからそれを使って戦っておったのじゃが、
先ほど先代の魔王が「このクソゲーがーーー!」と叫び転生を要求してきての、
その間一時停戦、
魔獣がリセットされて、お主の転生を機に再び開戦したところじゃ」
話し終わったところで近くに岩が飛んできた。
衝撃音と振動、そして阿鼻叫喚。
テンプレのクセに、内容が重くて暗い……
しかも前任者は丸投げだと?
そんな中、少女は宙に浮いたまま
ファーストフード店の物にしか見えないドリンクをすする。
「で、どうするのじゃ?死ぬのか?
実は魔王は救済措置での、ほかの四国は結託して兄者に取られてしまったのじゃ。
お主がリタイアすればゲームは終了。
彼奴の高笑いはムカつくが、もはや詰みじゃ」
「それでゲームを終了したら、ここにいる人達はどうなるのです?」
ムカつくのは私の方だ。
無茶振りしといて、出来ないなら死ねだと?
「ゲームを終えても営みは継続じゃ。後はこの世界の住人に任せる。
じゃが、この土地は領土と人の奪い合いになるじゃろう。
魔族は人族の国では奴隷の扱いじゃからな」
ルールブックは握っているだけでほしい情報が浮かぶ。
それによれば四方を敵国に囲まれ、中央の砂漠地帯に魔族の国はある。
王都に近づくほど人口が集中し、囲むように農村が点在する。
農村部では人も働くが、重労働は魔族の奴隷が使役され、使い潰されている。
ゆっくり目を閉じ、力を込めて瞼を上げると、
おくつろぎの少女、いやこの世界の創造主が映る。
やる気のない彼女が口を開きかけるのを遮り、声を掛ける。
「ひとつめの願いを叶えていただいてもよろしいでしょうか?」
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