第13話 青の空
☆
俺は嬉しそうな富山一家を見る。
そしてそして和奈を見る。
和奈も苦笑しながら反応していた。
根っから喜んでいる訳では無さそうだ。
だけど、これで良かった、とでも言いたげな感じだ。
「...一穂」
「何だ」
「...有難う。...じゃあ。邪魔しちゃ悪いから」
そして笑みを浮かべて幸ちゃんと手を繋いだ莉愛。
莉愛の父親も頭を下げてからそのまま去って行こうとする。
その背中に「莉愛」と声を掛ける。
莉愛が振り向いた。
「頑張れ。全ての反省はお前の努力次第だ」
「...そうだね。一穂。...有難う」
莉愛はそのまま会釈をしてから去って行く。
俺は前を見て和奈を見る。
和奈は柔和に俺を見ていた。
「変わったよ。アイツ」と呟きながら。
「...そうだな。もう大丈夫だろう。彼女なら...乗り越える」
「...ねえ。一穂。分かっていたんじゃないの?貴方」
「どうかな。何も分からなかったし。アイツ次第だった」
「嘘ばっかりだね。全く」
「...俺は嘘は吐いてないぞ」
そして俺達はクスクスと笑い合う。
それから歩き始めた。
「そろそろお昼ご飯食べる?」という感じで和奈が言う。
俺は腹を押して「そうだな」と笑みを浮かべる。
すると和奈は「うん」とだけ返事をしてから俯いた。
「...一穂。...私ね」
「ああ。どうしたんだ」
「...彼女に自分を大切にしてもらいたいって思う」
「...?...それは...」
「彼女は決して自分を大切にしない。...ベティみたいに死んでいる訳では無い。だから」
「...精一杯生きる事を大切にしてほしいって事か」
「そうだね」
和奈は立ち止まる。
そして横を見る。
うどん屋があった。
俺は「ここにするか」と和奈を見る。
和奈は「そうだね。きつねうどん食べたいな」とニコッとした。
「...一穂はここで良い?」
「ああ。食事出来る...というかお前に合わせたいな」
「そっか。ならここで食べようか」
「そうだな」
そして俺達はうどん屋に入る。
そこには美味しそうなうどんを叩いて作っている人達が居た。
チェーン店なのに本格的だった。
美味しそうだな。
☆
結論から言って俺はカレーうどん。
そして和奈はきつねうどんを食べた。
それから俺達は支払いを終えて店を出る。
歩き始めると雑貨屋を見つけた。
「一穂。見て。可愛いね。このカップ」
「...ミニピンか?」
「そうだね。ミニピンのアレンジみたい」
「...買うか?お揃いで」
「そうだねぇ。買いたいな。一穂が良いなら」
「俺は別に構わないぞ。買っても問題はない」
そして俺達は顔を見合わせて笑みを浮かべる。
カップを購入した。
すると店員さんが「カップルですか?今日はお花をプレゼントしております」と一輪の花をくれた。
俺はその花をそれぞれ二輪貰ってか頭を下げて店を出る。
「気前の良い店員さんだね」
「そうだな」
「...ねえ。一穂」
「何だ?」
「彼女は。...富山はこれからずっと反省するかな」
「...全てアイツ次第だ。...蜘蛛の糸の様になるかならないかも...アイツ次第だ」
俺はそう答えながら歩く。
そうしていると和奈が立ち止まった。
それから「一穂。景色が良いよ」と指を差す。
その方角には太陽が光っているガラスのシャンデリアがあった。
俺はそれを見ながら「結婚式場みたいだな」と呟く。
すると和奈が「ふぇ?」と呟く。
それから和奈は真っ赤になってから「か、一穂!?」となる。
俺はそれを見ながら微笑む。
そして「和奈。俺は悩みが多い人間だ」と真剣な顔で呟く。
「ゴメンな。いつも迷惑をかけて。本当にいつもすまない」
「...一穂...」
「その分、和奈を幸せにするから。必ずな。有難う。愛してる」
そう言いながら俺は彼女を見る。
和奈は俺を見ながら恥じらいつつ微笑みを浮かべる。
それから少しだけ考え込む。
俺は「?」となりながら和奈を見る。
和奈は顔を上げてから寄り添って来る。
「色々あるけど。きっとどうにかなるよね」
「俺もそう思う。...そういうので悩んでいたんだな?和奈」
「そうだね。私...悩む時はとことん悩んでしまう。そんな人間だから。ベティの時も本気でうつ病になりそうだった」
「...どうやって乗り越えたんだ?」
「全て君に再会してやるって思いだった」と和奈は言う。
俺は「!」となりながら和奈を見る。
和奈は寄り添いながら赤くなったまま俺を見てくる。
「君のお陰だよ」
「...」
「私一人じゃ何も。回復も何も出来なかった。だから君のお陰。有難う」
和奈は涙が浮かびそうな顔をする。
それから俺に優しげな聖母の顔を向ける。
俺はその姿を見てからついつい和奈の頭を撫でてしまった。
そして俺達は暫くその場に居た。
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