夢色十色
第12話 富山幸(とやまさち)
☆
私は廃人と化した。
社会から非難され...私は気力を失った。
まあ全て自業自得だ。
だからどうにもできない。
そう思っているとお父さんがこう言った。
「久々にショッピングセンターにでも行かないか」という感じでだ。
私はその言葉を受けてから「...」という感じになっていたが。
幸の希望で...行く事になった。
そして私はとんでもない事に巻き添えになった。
それは...幸の意外な才能が見えたのだ。
☆
私達は歩いて近所のショッピングセンターに来た。
それから私達は歩いてから周りを見渡していると幸が「あ。ピアノ」と言った。
私はその言葉に目の前を見る。
ストリートピアノが置いてあった。
誰も演奏していない。
「弾いても良いかな」
「...え?でも幸...あれは弾くのは難しい...」
「学校でやっているから大丈夫だよ」
幸はそう言いながらニコッとしてピアノを開ける。
私は不安げにその姿を見ていると幸の雰囲気が変わった。
寧ろ...これは?
ピアニストの顔になる。
「え?」
そんな事をお父さんが呟いた瞬間。
彼女は音程が凄まじく安定した曲を披露した。
音程が鈍感かつ鈍くしか覚えれない私ですら「上手すぎる」と思ったぐらい。
何だこれ...何だこれ!?
観衆が足を止めてからビックリしている。
「え?幸ってこんな才能あった...のか?」
「い、いや。知らない。こんなの見た事ない」
「...」
幸を見ながらお父さんは冷や汗をかきながら考え込む。
それから見ていると観衆が滅茶苦茶に集まり始めた。
信じられないぐらいに。
私達は唖然としながら幸の演奏を聴く。
そして弾き終えてから幸は飛び降りる様に椅子から降りた。
「人がいっぱいだね」
「幸。ちょっと待って。貴方どうしてこんなに上手いの」
「小学校で先生が教えてくれるんだ!」
「...」
先生って事は担任?
私は愕然としながら考え込む。
すると観衆が大拍手をした。
私達は恥ずかしくなってその場を後にする。
そして目の前を見て歩いていると横から「お前...」と声がした。
顔を上げるとそこに一穂が居た。
赤星和奈も居る。
デート中の様だった。
「...こんにちは」
「...幸ちゃんの事だけど」
「何」
「...そんなにピアノが上手かったんだね」
そう赤星和奈が柔和に言う。
私はその言葉に「...」となりながら幸を見る。
幸もニコニコしながら「お兄ちゃん、お姉ちゃん。こんにちは」と言う。
お父さんも頭を下げた。
「ねえ。莉愛さん」
「...何」
「今度、一般人参加のピアノの披露会があるの。その。幸ちゃんを出さない?」
「...お金が無いから」
「お金は要らないよ。NPOがやっているみたいだから」
「だけど」
「...莉愛。...俺思うけど幸ちゃんがやりたい事をした方が良い」
「お前は姉だろう」と言う一穂。
私はその言葉に困惑しながら幸を見る。
幸はニコッと理解はしてない様な感じだが笑顔を浮かべている。
その姿を見ながら「そうね」とだけ返事をする。
形だけだけどそんなものだろう。
「...そうするべきかもだけど」
「じゃあ参加の...提案をしてみて良い?役員のお父さんに」
「...今からするの?」
「そう。...今しないと貴方はまた逃げると思うから」
「...」
私はタジタジになる。
それから幸の頭に触れる。
するとお父さんが「参加してみようか」と言った。
私はバッと音が鳴る感じでお父さんを見る。
「でも」と言いながら。
「...」
「幸がしたいって言えばそうするべきだ。な?幸」
「何をするの?」
「ピアノの披露会だそうだぞ。幸」
「え?披露会?」
「面白そうだろ?」
「そうだね」
そしてニコッと笑顔になる幸。
私はその姿を見つつまた考え沈黙していると赤星和奈が「幸ちゃんの為にはなると思う」と言った。
それから私を見てくる。
「...貴方がどうするかだけど...いや。貴方じゃなくて...貴方の一家が、かな」
「...」
「私、やってみたいな」
幸がそう言う。
それから「少しだけでも役に立ちたい」と話した。
私はその言葉に見開きながら涙を浮かべる。
そして「やりたいんだね」と聞いた。
「うん。...みんな笑顔にしたい」
「...」
「...じゃあ参加申し込みしておくね」
「ええ」
私は幸を抱き締める。
幸はゆっくり私を抱き締めてきた。
その姿を見ながら幸を離した。
それから「幸。貴方初めてだね。自分からやりたいって言ったの」とまた私はじわっと涙を浮かべた。
「うん」
「...」
愚かな私に一筋の希望が見えた。
そんな気がした。
浮気が全てを導いたけど悪い意味で捉えないといけないけど。
だけど。
それでも有難う。
そう思えてしまった。
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