第11話 お前が決めるんだ


富山がお風呂にも入らない様な廃人となっていた。

私は私なりの勉強の知識を活かしながら彼女をお風呂に入れた。

それから富山と幸ちゃんを対面に。

私は一穂と並んで座る。


「...それで。お前はこれからどうするんだ」

「私は学校にはもう行かない」

「...それならそれでも良い。それはお前の人生だから。...だけど俺としては高校は卒業した方が良いんじゃないかって思うが」

「私は知能的に馬鹿だから。...丁度良いんじゃないかって思う。...それに...借金の事も何も知らなかったし。返さなくて良いとか。間抜けの極み」


そう言いながら富山は横を見る。

一穂は「うーん」と悩んだ。

私はその顔を見ながら「富山」と言う。

富山は「何」と反応した。


「...今は通信制もある。辞める前に何か考えれば」

「...」

「このまま辞めるのは良くない」

「...貴方は本当に母親みたいだね」

「私は貴方を心配してない。...どうでも良い。本当にどうでも良い案件だし。だけど貴方は前を見ず後ろばかり見ている」

「...」


そう言いながら私は「貴方は幸ちゃんが大切なんだよね。だけど大切にしてないね」と厳しく言う。

富山は「...それはどういう意味」と苛立つ。

そして私を見据えた。


「...一言で表現すると貴方は後ろばかり見ているから幸ちゃんの幸せを奪っている」

「回りくどいね。どういう意味って聞いている」

「自分自身の事しか考えてないって意味」

「...!」


富山は「...」となりながら沈黙する。

そして何も言わなくなる。

「貴方は頑張っているのでしょう。だったら今は後ろばかり見ている場合じゃない」と言いながら富山を見る。

富山は横に座っている幸ちゃんを見ながら溜息を盛大に吐いた。


「...私はそういうつもりは無い」

「そういうつもりが無くてもそう見える」

「...」

「...貴方は周りを見てない。...それに貴方は自分自身しか考えてない側面もある」

「...」


数秒考え込み。

「厳しい...けどそうなのかもね」と反応した。

それから苦笑する富山。


そして「...フリースクールとかに通ってみたいとは思っていたけど」と言いながら幸ちゃんを撫でる。

私はその姿を真っ直ぐ見ていると一穂がとんでもない事を言った。

「なら転校して来い」という感じでだ。

え?


「どこに」

「俺達の学校。少なくともお前が批判されるのは避けられないが。...多少はマシだろ」

「...」

「お前の学校は私立じゃないし県立だろ?だったら俺達の学校と同じだ」

「そんな事をしたら迷惑になる」

「まあそう考えるならそれでも良い。俺達はアドバイスをしただけ。だから決めるのはお前だけどな」

「...」


そして立ち上がる一穂。

私も立ち上がった。

それから一穂は「お前が全て決めるべきだ。それ次第では...何とかする」と言う。

富山が「貴方に相当酷い事をしたんだけど」と話す。


「...確かにお前のやった事は全然許せん。だけど...あくまで幸ちゃんとお前の親父さんは何の罪もない」

「...」

「...だから俺はお前が決めた事次第では...な」

「...」


富山は溜息をまた吐いた。

それから私達は富山の家を後にする。

そして富山のブロックを一穂は解除した。

連絡を待つ。



翌日になって富山は「私は転校する事にした」と書いてきたらしい。

私達はデートをしていた。

駅前で待ち合わせてであるが。

私は一穂を見る。


「...正直。あのアホがどう動こうがマジに知った事では無いけど」

「...うん」

「昨日は有難うな」

「...うん」


一穂は「やれやれだ」と言いながらスマホを仕舞う。

それから「映画。何を観る?」と聞いてくる。

私はその言葉に考えた。

そして一穂を見る。


「一穂。今話題の映画でも観たい」

「...それはヤングケアラーの話か?」

「そう。...障害者との恋愛のあれ」

「そうか。それ気になっていたよ。俺も」

「そうなんだ」


障害者が健常者に恋をした恋愛映画。

健常者も障害者に恋をする。

だけど障害者はヤングケアラーとしてお世話している親に暴力などで感情などを束縛されており。

幸せになれないというシナリオだ。

そんな感じのシナリオだが最後は幸せになると評判。


「でも意外だったな」

「...何が?」

「お前が...そういう関係の仕事に就きたいっていうのが」

「...一穂。実はね。私、アメリカで仲良くなった親友が銃で殺された。銃乱射の事件に巻き込まれてね」

「...?!...何...?」

「それで彼女の為になりたいと思って動いているの。彼女の幸せを願っている」

「...そうだったのか」


私はベティの思いを受け継ぐ。

そう思いながら今私は打ち明けた。

それから私は「ベティっていう大切な友人だった。...女子だった。ベティのご両親に「いつか私は戻って来る」って言ったの。一穂。私の親の様なその人達に何時か会ってほしい」と笑顔で一穂に告げる。

一穂は笑みを浮かべて「承知した」と言ってくれた。

そして私達は...劇場を訪れる。

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