第9話 流転


私は全てを一穂に話した。

そしたら一穂は「ありえない」と呟いた。

だけどこれは嘘偽りない事実だ。

私が無茶苦茶な嘘つきだけど事実である。

そう思いながら私は全てを打ち明けた。


「...一穂が信じるか信じないかは別にして。...これは全て事実だよ。...借用書も有るしね。...相手様がくれたよ」

「...」

「...一穂。私は貴方と別れて正解だったよ。今思うに」

「お前はこれからどうするんだ」

「逃げも隠れもしない。...借金は全て返すつもり」

「無理だろ。十一とか。...考えられない」


「でもまあ借りたものは返さないとね。悪質だし」と私は言いながら一穂を見る。

一穂は「...」という感じになっていた。

私はその顔に「...ゴメン。折角来たのに深刻な話で」と謝る。

そして借用書を見せた。


「...逃げられない様に身分証明書も撮られているから」

「...」

「...」

「お前がどうであれ。...これは警察に弁護士に訴えるべきだ。死ぬぞお前」

「...死は覚悟している。...だけどまあ苦しんでは死にたくはないかな」


そして一穂は考え込む。

それから「...何か進展があったら言ってくれ」と立ち上がる。

私に「すまないけど勉強の件で用事があるから」と真剣な顔をする。

その姿に「分かった」と返事をした。


「...富山」

「...何。一穂」

「...お前が...そういう状況だって初めて知った。だからもうとやかくは暫く言わない。...だけどこれだけは知っておいてくれ。俺はお前に裏切られて悲しかった」

「...そうだね。...もう二度としないから」


私はそう言って一穂を見送る。

それから直ぐに電話が掛かってきた。

それは...借金取りの電話であった。

忌々しい。



借金取りの言葉では。

もう直ぐ返済の日だそうだ。

そう言われて私は(仕事)に出掛ける事にした。


そしてとんでもない事になった。

それは相手が警察だった。

つまり身分を隠して接触して来たSNS防犯パトロール隊だったのだ。


「それで君はなんでこんな事をしていたのかな」

「...借金がある為です」

「借金...というのは親御さんの借金かな」

「それは...言えません」

「困ったね。まあいずれにせよ親御さんには電話しないといけない。君は未成年だろう。話を聞いた限りなどでは」


私は思いっきり青ざめたが。

法律だ、仕方が無いか。

そう思い私は暫く取調室で待って居た。

そして警察官に伴われて外に出た時。

父親が訳を聞いて唖然としている姿で居た。


「...何でそんな馬鹿な事を。アイツの...屑の残した借金返済の為か」

「そうだね。お父さん」

「...」

「...お父さん。私は...」

「保険金とかお前が苦しまない様に用意していた。こんな形で言う羽目になるとは思わなかった。...実は借金は弁護士を通じて全額返済をした。...そのお陰で更に貧乏になってしまったが。...すまない。娘にこんな事をさせて」


まさかの言葉だった。

そして父親は泣き崩れた。

それから「お前は本当に良い娘なのに何故アイツはあんななのか...」と泣き始める。

「お父さん...え?...借金返したの?」と口にする。

するとお父さんは「そうだ。やっと。ようやっと全額返せた」と言いながら泣く。


「...お前の誕生日に報告してやろうと思ったんだが」

「...」

「...お前には借金は残さない。そういう意味で死に物狂いだった」

「...お父さん...」


「これからはもう心配しないでひっそりと暮らそう」とお父さんは私を見てくる。

私はその言葉に強く頷く。

それから警察官に見送られて私は家に帰る事にした。

取り敢えずお咎めが無かったのが幸いだった。


だけど。


地獄はここからが始まりだった。

借金の地獄では無い。

学校での地獄などだった。



そんなパパ活などの話は学校に漏れていた。

それから私は無視されるようになってしまった。

まあそれでも。

「これは仕方が無いな」と呟きながら勉強を受ける。


だがそれは深刻度が増していった。


「ねえ。富山さん」

「...はい」

「貴方自身が病原菌だよね」

「...」


そしていきなりジュースをぶっかけられる。

私はその事に「...」となりながら反応しながらクラスの奴らを見る。

みんな大爆笑していた。

本当に最悪の気分だった。


「...」

「何で死なないの貴方。マジにウザいんだけど」

「...いや。死なないといけない理由は?」


私は気が付くと立ち上がってからその女子を思いっきり平手打ちしていた。

殴られた女子は出血していた。

蹲る女子。


頬から出血していたが私は「...」となりながら女子を見ていた。

因みにこの日以降。

私は学校に行く意欲が失せてしまった。

折角貰ったチャンスが無駄になった。


私は...引きこもってしまった。

馬鹿だとは思うけど。

学校に行けない。

丁度良かったかもだけど。

周りに迷惑をかけないしな。

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