第7話 泥団子
☆
私が...マズいのか?
そんな訳は無いと思う。
だって私はこれでも稼いでいる。
そんな私が何で一穂に嫌われたのか分からない。
そんな事許せない。
私は全てを手にするのだから。
だから良いじゃないか。
好きな事をしていたって...。
だけど。
私はそんな事を思いながら一穂に連絡...しようにもブロックされている。
もうどうしようもない。
私はイライラしながらも...手段が無いので黙って公園のブランコに座る。
すると「お姉ちゃん」と声がした。
「幸」
「...どうしたの?顔が暗いね」
「...いや。何でもないよ」
富山幸(とやまさち)。
私の...妹だ。
可愛らしい童顔の将来有望の女児。
歳が10歳違う。
7歳になった彼女は私の傍から離れて遊んでいた。
私が沈んだ顔をしていたから戻って来たのだろうけど...。
「...私は元気だよ。幸。大丈夫」
「そう?だったら良いんだけど...あ。彼氏さんによしよししてもらったら?」
「...そうだね」
だけど私は捨てられたから。
そんな事はされない。
私が悪いとは思えないが私が悪いのか?
だけど生きる為には汚れる事も大切では無かろうか。
「お姉ちゃん。泥団子作って良い?」
「良いけどあまり汚れない様にね」
「はーい」
幸は...本当に賢い子だと思う。
私と...違って。
多分だけど、あくまで多分だが私は性病に罹っている。
下半身が痒かったりする。
だけどそれを治療しようにもなかなか病院に行けない。
「...」
そうしていると「何をしているんだお前は」と声がしてきた。
私は顔を上げて...滅茶苦茶にビックリした。
何故なら一穂が居た。
鞄を右に持ったまま制服姿で私を見ている。
「...お前に声を掛ける義理は無いけど。...幸ちゃんも居たしな」
「...そう」
「お前はマジに腹立つ事をしているからな」
「...」
「お前はこれから幸ちゃんの為に動け。為になる動きをしろ」
「そうだね。もう止める。こういうのは」
「当たり前だろお前。ふざけるなよ」と一穂は怒りながら私を見る。
私はその顔を見ながら「...私は間違っているの?」と聞いた。
すると「大馬鹿に間違っている」と一穂は言いながら私を見下す。
「お前がそういう態度を取るから全てが不幸になっている」
「...そうだね」
「お前に裏切られたショックってマジに半端じゃないからな」
「...うん」
そして叱責を受ける。
それから怒り疲れたのか「...はぁ」と溜息を吐いた。
すると幸が寄って来た。
不安そうな顔をしている。
「どうしたの?」
「...何でもないよ。幸。私が悪いだけ」
「おこってる?」
「...怒っている事は怒っているけど。だけどいつものお兄さんだよ。幸」
その言葉に一穂は目線を幸の手の中に向ける。
一穂はゆっくりしゃがんだ。
それから「泥団子作ったんだな」と一穂は言う。
幸は満面の笑顔で「うん」と答える。
「お兄ちゃんにもあげる」
「...そうか。...綺麗な泥団子だ」
「...幸。お兄さんは忙しいから」
「別に忙しくない。帰ってもする事が何も無いしな」
ゆっくり立ち上がる一穂。
それから手の中の泥団子を見る。
「これ磨くよ」と幸に笑顔になった。
幸は「え?みがくって?」と不思議そうな顔をする。
「...磨くってのは更にキレイにするって事だよ。幸ちゃん」
「そうなの?これは更にキレイになるの?」
「なるさ。...俺に任せろ」
「わー!お兄ちゃんすっごい」
「...一穂。そこまでしなくて良いから」
「別にお前の為じゃない」
そして一穂は几帳面に泥団子を持って帰ろうとする。
私は「子供の遊びだよ?」と困惑した。
その言葉に「お前の為じゃない。言ったろ。幸ちゃんの為だ」と言葉を発した。
それから幸をまた見る一穂。
「...明日までには綺麗にしておくから。...幸ちゃんの家に持って行く」
「え!?本当に!!!!?」
「ああ。待ってろ」
私はその言葉に溜息を吐く。
それから私に向く一穂。
眉を顰めたまま「じゃあな」と言ってくる。
私はゆっくり立ち上がる。
「一穂」
「...何だ」
「...幸の為に感謝する。有難う」
「お前にお礼を言われてもどうしようもないけど。まあ受け取っておくよ」
「...」
そして一穂は帰って行った。
私は幸を見る。
幸は難しそうな顔をしながら私を見ている。
子供は...察するのが得意だ。
こういう状況を...。
言葉を理解しなくても理解出来る。
「幸。大丈夫。...私が愚かなだけだから」
「お姉ちゃん?」
「...貴方は何も心配しなくて良いから。ね?幸」
「...うん。分かった。お姉ちゃんが言うなら」
私達は顔を見合わせて笑みを浮かべる。
それから翌日になったのだが本当にボロ家に一穂が来た。
私は一穂に上がってもらう。
嫌な感じの顔をしていたが「幸ちゃんの為なら」と家に上がってくれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます