第6話 誓い


一穂と付き合い始めて私は朝に起こしに来ると約束した。

そして私達は一穂の家を出る。

それから施錠を確認してから高校に...行こうとした。

すると目の前から...。


「まだ諦めて無かったのかお前は」

「...」

「...何をしに来た」

「私が付き合っていた別の男性に嫌われた」

「...で?」

「だ、だから復縁が...したい。私の...その」


「何を言っているんだお前は」と言いながら富山という女子を見る一穂。

私は富山を見ながら警戒する。

富山は私を見てから「5年も空白が空いたのに何でそんなに上手くいくの」と一穂に怒りを見せる。


「確かにな。5年の空白が空いた。だけどお前と決定的に違う事を言ってやろうか。お前と違って彼女は一途だ」

「...!」

「...一穂...」

「もう二度と顔を見せるな。お前の様な奴は性病でもかかれば良い」

「...」


富山は悔しそうな顔をしながら「...私は貴方達を認めない」と悔し気な感じで去って行った。

私は「...一穂」と一穂を見る。

一穂は「あんなもんでも女子だしな」と肩を竦める。


「...俺はお前と別れる気は無い」

「...うん」

「...アイツはまだ妨害工作をしてくると思うけど。...だけどきっと...大丈夫だ。俺達なら」

「だね」


そして私達は高校に登校した。

それから授業を受ける。

一穂は周りに「新しい彼女で婚約者」と私を紹介する。

こっぱずかしかったが何よりも嬉しかった。



「一穂」

「...おう」

「じゃあお昼ご飯食べようか」


そして私達はそのままみんなに挨拶してから教室を出る。

男子生徒達は悔し涙を流しながらも見送ってくれて女子生徒達。

私の友人達もそうだが笑顔で見送ってくれた。

私達は教室から出て中庭に来る。


「...それにしてもしつこかったな。アイツも」

「アイツって...富山?」

「富山のアホだよ。...しつこい」

「...そうだね」

「別れるって言ったのにこれいかにって感じだ」

「そうだね。しつこい女は嫌われると思う」


そんな感じで会話をしながら私はお弁当箱を広げる。

そこには食材がぎっしり詰まったお弁当。

当然だが一穂のもぎっしりだが。

私とパターンを変えている。


「...美味しそうだな」

「美味しいよ。...まあ多分だけど」

「お前の作ったもんは全て傑作だろ」

「んもー」


そして私達は並んで座ってから食べ始める。

私は小型に作った卵焼きを見る。

意を決して顔を上げた。

それから「あ、あのさ。一穂」と問いかける。


「ん?」

「はい。口開けて」

「...何をするんだ?...ってまさかお前。嘘だろ。部活動生も居るのに」

「そんなの関係無い。はい」


それから私は箸で一穂の口に卵焼きを入れた。

何だか視線を感じた。

良く見ると部活動生の男子のごく一部が私達の行動に気が付いた様に初号機の暴走の様な...そんな姿を浮かべていた。

一穂を見る。


「美味しい?一穂」

「...いや。まあ美味しいけど...正直言って生徒の視線が...というか死線が」

「死線って。アハハ」

「死線だよ。真面目に。...だけどまあ付き合っているしな」

「そうそう。構わずにイチャイチャしましょう」


部活動生はオレンジ色の零号機の暴走の様な感じで頭を抱えながらそのまま部活をまたし始める。

私はその姿を見ながらニコッとして一穂を見る。

一穂は頬を掻きながらも楽しそうに私を見ていた。



元彼氏彼女でこんなに上手くいっているのは世界中で私達だけだろう。

そんな事を考えながら私は草むらに横たわる一穂を横から見る。

一穂の二の腕を枕にしてから私は一穂を見る。

うーん眠い。


「和奈」

「うん?どうしたの?」

「幸せだな」

「そうだねぇ」


そして一穂を見上げる。

青空が見える。

本当の青空な感じの空に私は目を閉じた。

それから目を開けてまた見上げる。


「先生にも何だかジト目向けられたね」

「そうだな。イチャイチャするのは良いがって感じだな」

「...私は世界で一番幸せ者だ」

「...そうか。っていうかそう言われると何だか恥ずかしいな」

「私は...本気で思う。貴方をまた好きになって良かった」

「...そ、そうか」


私は横になって一穂を見る。

そして空をまた見上げる。

世界中で一番幸せだ。

そんな事を思っていると一穂が寝ているのに気が付いた。

私は頬を触る。


「...アハハ。寝ちゃったか」


そんな事を呟きながら私は苦笑いを浮かべる。

それから私は頬に触れてから空を見上げる。

私も寝たいけど。

寝たら授業がなぁ。


「...」


寝たらマズいかと思って私は過去を考えた。

正直、私がアメリカに渡った時。

英語が出来ないから「変な人」と言われていた。

「アジア人は結局アジア人か」という感じにも言われた。


だから悔しかったから私は猛勉強した。

そして私はたった2か月で英語がペラペラになった。

その理由としては猛勉強もあるけど。

亡くなったあの子の影響もあるだろう。


私と仲が良かったアメリカ人のベティという女の子が居た。

トマス・ベティという...私の親友だった子だ。

私とは親友になって1か月。

ショッピングモールでの銃乱射によって巻き添えになって撃たれて亡くなった。


「...」


ベティとは会話では仲良くはあまり出来なかったが。

身振り手振りで凄く仲が良くなった。

だけど死んだ。

私はその事もあって悔しくて英語を学んだ。

ベティに恥じない様に。


私は...5年後の帰国する際にベティの親族に「また来ます」と約束して帰国した。

この5年の空白は。

私にとって濃厚なものになった。

だけど恥じない様にと。

抗ってきた。


だからこそ約束した事を。

ベティと約束したこの誓いを必ず。

紹介できなかった一穂と一緒になる誓いを必ず叶えたい。

そう思いながら帰国した。


一穂には彼女が居た。

だからもう見守るだけにしていたが。

またこうして手を繋げた。


それは全てが奇跡だった、とそう思う。

まるで雪の結晶の様に。

奇跡だったと思えた。


そう考えながら私は一穂を見る。

寝顔が愛おしいものだ。

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