第5話 昔の感覚
☆
俺は昔の別れた元カノと付き合い始めた。
元カノは俺を好いたままだった。
だから恋に落ちるのも然程苦難では無かった。
俺は和奈にメッセージを送ってからスマホを観ていた。
ドキドキする。
「和奈め...心臓がバクバクするぞ」
そんな事を呟きながら俺は赤くなりながら画面を見つめる。
元カノだ。
だけど俺達は未練塗れだったんだな。
そう考えつつ画面を観てから窓の外を見る。
「和奈...」
そう呟きながら俺は外を見る。
そして俺は笑みを浮かべた。
デート楽しみだ。
思いながら下を見るとそこに...。
「富山...」
富山がウロウロしていた。
俺は盛大に溜息を吐いてから富山を見る。
そして階段を降りてから玄関を開ける。
すると富山がビクッと反応した。
「何だ」
「...そ、その。浮気していたっていうか。身体を売っていたのは悪かった。だけど知ってるよね?わ、私は...」
「...確かにな。お前の今の事態を知ってる。だけどそれは言い訳だろ。お前が例え貧乏であっても。売春したとしてもな」
「...一穂。お願い。考え直して」
「...考え直せない。それに俺は元カノと付き合い始めた。もう考え直しても無駄だ。すまないがお帰り願いたい」
そう言いながら俺は冷たくあしらった。
そんな言葉に富山は「...貴方だって浮気したでしょ」とまだ抗う。
俺は再び溜息を吐いた。
それから「お前が浮気したからな。俺が浮気してもおかしくはない。と前も言ったけどな」と冷めた感じで見る。
「...私が可哀想だって思わないの」
「思わない。...むしろ...」
「...」
「俺はお前を信じたかったよ。...残念だ」
そう言い放ち俺は富山を見る。
富山は愕然としてから「...」となってからそのまま踵を返した。
「私は悪くない」と言いながら、だ。
そしてそのまま帰って行った。
俺はその言葉に何度目か分からない溜息を吐いた。
☆
翌日になった。
俺はゆっくり起き上がる。
すると「おはよ」と声がしたので自然に「おはよう」と答えたが俺は唖然とした。
それから「ふぁ!!?!!」と声を発する。
何故なら和奈が居たから。
漫画を読みながら俺を見ている。
笑みを浮かべながらだ。
「な!?お前何をしている!?」
「だって彼氏彼女の関係になったんだから。これぐらいは」
「アホかお前は!?それで彼氏の家に侵入するな!?」
「えー。おばさまが家に入って良いよって」
「...」
俺は愕然としながら「母さんめ」と言う。
それから「んでお前は目覚めるまでずっとここに居たのか」と聞いてみる。
すると和奈は「そうだね」と返事をしながら漫画を置いた。
「この漫画、今度貸して」と言いながら、だ。
「...いや。貸すのはどうでも良いけど...お前な」
「一穂に知らせようって思ったのもあって」
「何を知らせるんだ」
「ご飯作りに来る」
「...ああ。そう...は?」
「一穂ってほったらかしにしたら何を食べるか分からないから」
「お前は俺を何だと思っている」
しかしご飯を作りに来る?
俺は予想外の言葉に「じゃあまさか昼飯も?」と聞いてみる。
すると「それはそうでしょ。彼女なんだから」とニヤニヤしながら応える。
俺は赤面しながら「そ、そうか」と言う。
「あとそれから」
「...何だ。まだ何かあるのか」
「こうして毎朝起こしに来る」
「...お前な。恥ずかしいって」
「だって彼女ですし」
「...彼女って言えば何でも丸く収まると思うな」
「まあだけどお前が起こしに来てくれるのは確かに有難いよ」と言いながら俺は和奈を見る。
和奈は「でしょ?」と胸を張る。
だけどまあ。
「そんなの面倒だろ」
「面倒じゃ無いよ。私...真面目に一穂が好き」
「...お前な...」
「私は一穂が好きだからしているだけ。ただそれだけ」
「もう分かったから!」
「取り敢えず部屋を出てくれ」と言いながら和奈を見る。
和奈は「はーい」と言いながら口をへの字にしながら出て行く。
俺は別の意味での溜息を吐く。
それから「全く」と呟いた。
だけどまあ嫌じゃない。
「...和奈が起こしに来る...か」
そう呟きながら俺は赤くなる。
それからそのまま着替えながら下に降りる。
そして洗面所で整えながらリビングに行ってみる。
そこでは和奈が新妻の様に鼻歌混じりに料理を...っていうか。
「お前、料理出来る様になったんだな」
「そうだね。...まあ一応だけど出来る様にはなったよ」
「...昔は何も出来なかったのにな。...人生は変わるもんだ」
「人は成長しないと駄目だって思うから」
「...そうか」
和奈は「座って座って」と笑顔になる。
俺はその言葉に「はいはい」と言いながら椅子に腰掛ける。
すると次々に和奈が料理を持って来た。
ほうれん草のお浸しとかだし巻き卵とか。
「お前凄いな。...こういうのが作れるんだな」
「料理...一応君を想って練習した。だけどまあ彼女が居るって思わなかったからどうしようって思ったけど」
「だけど無駄にはならなかったな」とニコニコする和奈。
俺はその言葉に「...」となる。
それから俺は呟いた。
「和奈。有難うな」
「...え?」
「運命的な再会だよな」
「...そうだね。一穂。一穂が何を言いたいのかちょっと分からないけど」
「...つまり俺達は既に決まった大きな運命の元に居るんだなって言いたいんだ。すまない」
そして俺は和奈の手を握る。
すると和奈は赤面しながら「も、もう」とかぁっと赤くなった。
俺はその顔を見ながらまた笑みを浮かべる。
可愛いもんだな。
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