第2話 5年の経験値


私は一穂が好きだった。

好きだったけど互いの両親にあまり日本からアメリカに通信する余裕は無く。

アメリカに渡れば最後。

会えなくなるのは必須だった。


そして私は一穂と別れる事になった。

付き合っていたけど1年で別れる事になってしまった。

それから5年の月日が経過してしまった。

一穂に彼女が出来ていた。


その事はまあ仕方が無いけど...だけど問題はそこじゃない。

一穂の彼女は...全てを裏切っていた。

そんな人が彼女を名乗るというのは絶対に許せない気がした。

私はそう思いながら授業を受ける。


それから休み時間になった。

私は一穂の元に行く。

すると一穂の友人達が笑みを浮かべながら私に向いてくる。

一穂と見比べる様な感じでだ。


「にしても砂山ってモテるな」

「そーそー。何だか嫉妬しちまうぜ」


そんな会話をしながら一穂を見る。

一穂は肩を竦めながら「...今の彼女があまり良くないしな」と言葉を発する。

友人達は「...そうか」と返事をした。

私はその空気を変える為に「ねえ」と声を発した。


一穂は「ん?」と反応してくる。

私はそんな一穂に「学校の中を案内してくれない?」と言う。

すると一穂は「ああ。構わないが...」と言う。

私はその姿に立ち上がる一穂を見る。


「...しかしお前は変わったな」

「変わったってのは?」

「昔は...内面的だったよな。社交的じゃ無かった」

「アメリカじゃそうはいかないからね」

「...そうか」

「うん」


そして私の長い黒髪が靡く。

私はその髪の毛を触りながら居ると一穂がボーッと私を見ていた。

「何?」と聞き返すと一穂は赤くなって「い、いや」と前を向いた。

鼻を擦り始める。

私はそんな一穂にクスッと笑いながら聞く。


「...ねえ。一穂。覚えてる?」

「何を?」

「...私達、将来...結婚しようって約束した」

「ぶぁ!た、確かにその通りだけど!」

「それは小学生の戯言じゃ無いけどね」

「...!」


私は笑みを浮かべながら外を見る。

それから私は外の景色を眺め見ていると一穂が「お前の気持ちは変わらないのか」と聞いてきた。

その言葉に私は「...変わって無い。...昔からずっと一穂が好き」と答える。

そして「でもね。一穂。私、貴方が傷付いていると思う」と向く。


「...だから私、無理には言わない」

「...和奈...」

「私、確かに将来結婚したいって思った。だけど今は...一穂は傷付いているしね」

「...」


「でも私、待ってる。貴方がいつか答えを出してくれるのを」と言いながら私は髪の毛を抑える。

すると一穂は「...」となりながら同じ様に外を見る。

それから「なあ。和奈」と言ってくる。


「...ん?どうしたの?」

「俺、お前と別れなかったら良かった」

「それは無理でしょう。だって...私はアメリカに行っちゃったしね」

「いや。それでも俺はお前と別れなかったら良かったんだよな。きっと。きちっとしておけば良かったんだ。そしたらこんな目に遭わなかった」

「...それは分からなくも無いけど。...だけど一穂。今回は仕方が無いと思う」

「...」


一穂は悩みながら手すりから手を離す。

それから「時間が無いし歩くか」と言ってくる。

私はその言葉に「そうだね」と返事をした。

そして私達は教室を巡る。


「...教室もそうだけど別の移動教室の音楽室とかが綺麗だね」

「この校舎は改築をこの前したばっかりだ」

「...そっか」

「ああ」


そして歩いていると一穂が「和奈」と声を掛けてきた。

私は「どうしたの?」と聞いてみる。

すると一穂は「アメリカはどうだったんだ」と話した。


「...アメリカは...今は人種差別が少しだけ広がっていてね。東洋人だって馬鹿にされた」

「...そうなんだな」

「だけどそれが全てじゃなかった。私、友人も出来た」

「...そっか。充実していたんだな」

「0か1で言えば1だった。経験は糧になった」


私はそう答えながら一穂を見る。

一穂は「良かったよ。お前がそう言ってくれて」と笑みを浮かべる。

それから「最悪だったとかだったら考えものだしな」と苦笑した。

その言葉に私は頷いた。


「確かにね」

「1でも経験値が上がったなら良いんじゃないか」

「そうだね。...貴方の事も好きなままだったしね」

「...それは余計だって」

「余計じゃ無いよ。私のこの感情は本物だからね」

「...」


そして私は一穂の前を歩く。

すると一穂が私の手を握ってきた。

「?!」と思いながら私は赤面して一穂を見る。

一穂は私を見てからハッとした。


「す、すまん。無意識だ」

「え?む、無意識って」

「...ああ。本当に無意識だ」

「...」

「...」


私達はそのまま赤くなって見つめ合ってしまう。

するとチャイムが鳴り響く音がする。

私達は驚愕してから「ヤバイ!」と声を上げて教室に走って戻った。

のんびりし過ぎた!

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