ラスト・オブ・四季ちゃん(粗書)
二人と別れた後はすぐに駅に行って電車で家に向かった。
家につくと母がリビングでくつろぎながらテレビを見ていた。
『おかえり』
『うん、ただいま』
『久しぶりに楽しかった?』
『うん、晩御飯はいらない』
文字の上では簡潔にただの何の変哲のない会話ではあったそれは家の中の空気を換えるのには十分だった。
それだけ言うと、母は私から目をそらして、テレビを見だした。母は昔からいつもこうだ、私から何か相談するまで何も言ってこない。それに相談した内容によっては「自分で解決しろ」と言ってくる。
二階にある自分の部屋に行ってベットにダイブして、今日のことを思い出す。
あそこでああ言ったのは、よくなかったのかな?でもあれくらいしか思いつかなかった。
そんなことを思っていると時刻は6時を過ぎていた。するとまるでタイミングを見計らったのかのようなLINEがきた。
なんとなく予想はできていたがLINEはあの双子、陽奈からだった。
『四季ちゃん聞いてほしいことがあるから、明日学校終わりにいつもの教室に来てください。お願いします』
『わかりました』
内容は多分今日までのことについてだろう。正直明日いつもの教室に行くのは怖い。けどこのままじゃ気持ちが悪い。私が一方的にまくしたてて、逃げただけだ。
なぜあの双子は私をいじめるのか、なぜ昨日は優しくしてくれたのか、なぜ最後に泣いていたのか。それが知りたかった。
あのLINEから二日後。今日が双子との決戦の日。いざ教室の前まで来てみると何を話そうとしていたか忘れてしまう。
意を決してノックをする。当たり前だが声は聞こえない。扉を開けて中を覗くと二つの美しい顔がそこにはあった。久しぶりに正面から見たその顔はどこから暗さを帯びている悲しげな表情だった。
『座って』
そう促されて近くの椅子に腰を下ろした。
『まずは、今日来てくれてありがとう
今日来てもらったのは今までのことで確認したいことがあって』
当たり障りのない会話からすぐに本題へと入っていった。その間光月はずっと俯いたままで陽奈がボードを使って話してくれていた。
『私は、私たちは昔から誰かの"トクベツ"だった
けれど私たちはそのトクベツを理解できていなかった』
急に始まったそれは前に私が二人にしたような自分についての話だった。
『だから四季ちゃんを見て直感的に理解した。
あぁ、この人が私たちのトクベツなんだって。
根拠は何もないけど理解はできた。』
"トクベツ"その言葉の響きは私が嫌っているものだ。
『そして私たちは何の根拠もないまま四季ちゃんを求めた。
四季ちゃんが私たちを好いてくれていると本気で思っていたりもした』
何を言っているのか理解ができなかった。
確かに二人のことは嫌いではなかったし好きになりかけていたといっても過言ではなかった。
だからとで言うのだろうか。あのいじめの原因を。今思い返してみると、この教室での出来事はどこからどう見ても愛し合っているようにしか見えない。
『だから甘えてしまっていた。四季ちゃんに』
いや違う。私だってそうだ。それこそお母さんなどの大人に報告すれば一件落着だったのに、それでもそうはしなかった。
なぜかって。私自身も二人に甘えていたからだろう。口や、表層心理ではいやだと思っていても心の奥底では理解していたのだろう。今の自分のこの考えを素直に飲み込めていること、それが何よりの証拠だ。
『ごめんなさい。
許してとはいえないけど、
傲慢な願いだと理解しているけど、
どうか、もう一度私たちの関係を真っ白にしてやり直させてはくれないかな?』
まっすぐな言葉と、まなざし。
私自身もうどうするのが正解かなんてわからない。けどここで「ダメ」で終わらせてはいけない気がした。
今までの人生でなかった出会いが、きっとこれからの人生でもないであろう出会いがこれだから。
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どうも「ガウテン」です。
もうちょっと我慢してください。次で終わらせますので。
というより最近暑いですね。くれぐれも救急車のお世話にならないよう気を付けて過ごしてください!
では、また。
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