第20話 対策(3)

27層に戻ってくる。そこには先ほどと同じく階段付近にはモンスターはいないようだった。周りにリッチたちがいないのを確認して、先に進むことにする。すると再びリッチたちの群れと遭遇する。


リッチの集団を見つけた私は、その中央を突破しようと試みる。リッチ達も中央突破されるとは考えていなかったのか、反応が遅い。しばらくしてから魔法を打ち出したが、混戦状態のところに魔法を各々好きなように撃つため、味方に当たっている魔法もあるようだった。その様子を見ていたリッチたちは怒ったようで私に目掛けて魔法を撃ち出した。それから私を追尾してきていることを確認した上で次の群れが現れるまでに少しでも数を減らしておこうと走りながら魔法を唱えることにする。「セイクリッドソード」と何度か唱えているうちに、次のリッチの集団に出会う、同じように中央突破をすると、後ろの集団から魔法が飛んできたようで、仲間割れのようにリッチ同士で戦いはじめてしまった。


完全に蚊帳の外だった私は、まあ数を減らせるチャンスかと思いつつ観戦しておこうかなとも思ったが、経験値のため可能な限り倒さなければと思い直し、攻撃を始めるのであった。「セイクリッドソード」と何度か唱えているうちに分かったこととがある。この魔法は10本の魔法の剣を作り出して攻撃する神聖魔法の攻撃なのだが、威力が高いのか?それともここにいるリッチ達はあまり強くないのか?わからないが一撃で出すことができるようだということに気がついた。


しばらくそのまま魔法を唱え続けていたのだが、片方の群れが全滅したのか、再び私の方に目掛けて魔法を集団で撃ってくるようになった。私また逃げ出すことにした。それから、モンスター同士でも同士討ちをすることがあるのだなと思いつつも逃げていたのだが、何故かリッチの攻撃が先程よりも強力になっている気がしたが、聖女である私にリッチは闇魔法を使ってくるために、当たる際にはかなり威力が減衰していることもあってから全然違和感を持つことはなかった。


それからまた新しい群れと出会う。さっきと同じく、中央突破をする。そして私のことを追いかけていた集団の魔法が、今私が中央突破をした集団に当たる。どうやらさきほどの再現が出来たようで同士討ちが始まったようだ。私はMP残量を確認しながら魔法を使うか考えていたのだが、少し回復する時間を取ろうと思い、しばらくの間リッチ同士の戦いを観戦していた。そのときには水分補給などもできる余裕があったので行っておいた。


それからしばらく観戦をしていたのだが、リッチ同士の戦いは、お互いにあまりダメージを入れれないようで、泥沼とかしていた。MPも回復してきた事だし私も戦闘に混ざることにした。神聖魔法で攻撃をしばらく加えていると、また片方の集団が消えたのか?私に襲いかかってくるようになった。それから同じように逃げる。しばらく走っていると次の階層への階段を見つけたが、一旦無視して次の群れを探すことにした。それから少し走ったところに新しい群れがいたのでそこに突っ込む。そうすると同士討ちが始まったので、私は他にも別の群れを見つけてきて戦わせようと思い別の群れを探すことにした。


それなりに走ったと思うが今のところ他の群れには会えていない。それからまた時間が経ちおそらくこのフロア最後の群れであろう集団を見つけたので、慣れた手際で中央突破してから、先ほどの泥沼の戦いをさせているところまで戻ることにした。走り続けているとリッチ同士で戦っているところに戻ってきた。私のことを追いかけているリッチたちは他の集団と変わらなく私目掛けて魔法を飛ばしてきている。このまま、私が戦闘中のところを通り過ぎようとしたので、三つ巴の戦いいや、私もいるから四つ巴の戦いだろうか?が始まった。


私はMPが8割を切らないように管理をしながら、「セイクリッドソード」を撃ち続けた。それから暫くした後に、リッチ達の数は数え切れるほどにまで減っていた。だが、明らかに最初の頃に比べて攻撃力が上がっている。何故だろうか?わからないが、セイクリッドソード一発で倒せ続けているので、特に考えることを放棄して残った個体を手早く処理することにした。


全てのリッチ倒し終わりもう何度レベルアップの音声を聞いたか思い出せないほど聞いたと思う。リッチたちを倒した後には、巨大な魔石が十数個落ちているのみであり他は何も落ちていなかった。そこでようやく、リッチを倒したことで出た魔石を、他のリッチが吸収する事で従来より強力な個体になっていたことに気がついた。これは、たまたま私が聖女であったことと、ダメージが全然通らなかったから良かったが、他のダンジョンで同じようなフィールドがある時には気をつけなければならないと思った。


リッチたちから逃げている最中に次の階層へと繋がる階段を見つけていたので、28層へと進むことにした。階段を降りたらそこは、宝箱がたくさんある宝物庫のような部屋だった。正確には、次の階層へと繋がるであろう一本の道があり、道から外れたところに宝箱がたくさん存在していた。流石に、妙だと思ったので、宝箱を無視して一旦先に進むことにした。


先に進んでいると、左足を乗せている床が急に凹む。瞬間どこからか矢が飛んできて私の腕に刺さっていた。矢の狙い先は、私の頭だっただが反射的に頭を守らなければと思ったのか腕で防ぐことができたようだった。それから、矢が当たると同時に聖女の祈りが解除されたことに気がついた。何やらよくないものが矢には塗布されているようだった。トラップに引っかかったのは初めてだったので、矢が飛んできたこと、そしてその矢には何かが塗布されていたことを認識したことでより慎重に進まなくてはと思うと同時に、驚きのあまり腰が抜けてしまった。


幸い、倒れた先にはトラップはなかったようだが、危ないことをしてしまったと反省するのであった。しばらく動けずにいた私だが、落ち着くために、持ってきていた杏の飴を食べることにした。甘いものを食べたからだろうか?落ち着きを取り戻した私は、飴玉を舐めながらダンジョン攻略を続けるのであった。


またそれから次の階層を目指して歩いていると、今度は右足方が沈んだ気がした。どこからともなく、魔法が飛んでくる。トラップを踏んだことを理解した私は、真横に飛ぶ。どうやら無事のようだと思ったら、鮮血が飛び散る。それから右腕の感覚がない。確認するとばっさりと切り落とされていた。どうやら強力な風の刃を発動し、トラップを踏んだものを対象とし攻撃するもののようだった。「ヒール」と唱えるといつのまにか何もなかったかのように腕が生えていた。腕が落とされることは初めてではないが、何度経験しても慣れそうにはなかった。


それからも次の階層を目指して進んでいたのだが、もう何回トラップに引っかかったのか覚えていられないくらいには引っかかったと思う。神聖魔法で回復させることができるため、トラップに引っかかりながらも、先に進むことができていた。ただ、痛みがないわけではないので、途中から「もうやだぁ。僕もうおうち帰る」と連呼していたと思う。口ではそう言いながらも、先に進まなくてはならない事は理解していたので、なけなしの勇気を振り絞って先に進んでいた。


それからも何度かトラップに引っかかったが次の階層へと繋がる階段を見つけた。道が一本道だったこともあり、探索時間はそこまでかかってはいないのだがとても濃密な時間を過ごしたと思う。それから可愛らしいシスター服もボロボロになっていた。


29層につくと、そこには見慣れたボス部屋へと続く扉があった。なるほどここが最後のボス部屋なのかな?と思いつつ、まずはステータスの確認と、MPの回復をすることにした。


レベル 42→70

職業 救国の聖女


HP 12600/12600

MP 19700/26800

力 810

知力 1100

身の守り 418

魔力 1780


Skill

剣術Lv5→6 隠密Lv10(Max) 投擲Lv6 光魔法Lv9→10(Max)  聖女の祈り 天啓 転移魔法 神聖魔法Lv5→8 女神の加護

New

未来視


レベルとスキルがかなり上がっている。凄く嬉しくなって飛び跳ねる。それは、最近ステータスがここまで一気に伸びることも少なくなっていたからだ。


それから新スキルとして、未来視を覚えた。名前だけ聞くと非常に強力なスキルだと思うかもしれないが、集中して10秒先、戦闘中であれば5秒先の未来が見れればいい方だと思うが、それぐらいしか見ることは出来ないようだ。さらに、使用中は1分ごとにMPを1000消費するようで、今の私にはどう考えたも使うことはできなかった。加えて、未来視を使うと頭がパンクしそうになる。情報が一気に流れてくるので、訳がわからないまま時間が経ってしまい、結局無駄になってしまいそうな気がした。これを使いこなせるようになるためには、日常的に使うしかないと思うのだが、MPが足りないので、また今後の楽しみとして取っておくことにした。


スキルもレベルが上がった事で新しい魔法を覚えていた。光魔法のエンチャントと、神聖魔法では「リヴァイブ」という蘇生魔法と、「ヒール」を唱える事なく思うだけで使えるようになり、病気などに対しても効くようになったようだ。光魔法のエンチャントは、聖魔法時代に覚えたエンチャントと変わらないようなので、置いておくとして、神聖魔法の新魔法を見てみることにする。


まず、リヴァイブなのだが、死んでから24時間以内なら蘇生が可能なようで、蘇生にかかる時間も呪文を唱えるだけで発動するようになった。ただ、集中が必要なことには違いないので、練習しなくてはならないことには違いがないだろう。今もし使おうとすれば、動きながら唱えることは出来ないと思う。それだけ集中力は必要だという事だ。また、自身が知らない人を蘇生することはより難しいらしく、生前の姿がわかるものと体がなければうまく発動しないだろうことがわかった。


もう一つの「ヒール」だが、ヒールはとても便利になった。思考するだけで声に出す必要がなくなったからだ。これはとてもすごい革命であり、ありえない速度で呪文が連射できるようになると同時に、イメージできる範囲であれば同時にいくらでもヒールをかけることができるからだ。この力は、特にアンデッドダンジョンに挑んでいる今は、とても便利だろうと思った。それから病も治せるように治せるようになった感覚があったが、今まで回復魔法で病が治せないのを知らなかった。勝手に治せるものだと思っていたのだ。これは後に知ることになるのだが、病は状態以上の扱いであるから、回復魔法では治すことはできず、状態異常回復魔法を使えば回復でかかるようであった。


さて、ステータスの確認も済んだところでボス戦に…とは行かずいつも通りのティータイムの時間を取ることにする。今日は、ダージリンと杏のジャムと甘さ控えめのクッキーを作ってきた。これを用意するために前日の夜に、食堂の調理施設をかりた。クッキーにジャムを乗せて食べる。美味しい。落ち着く。ずっと食べていたいと思うが、携帯を確認するともう18時を回っていた。全然気が付かなかった。


今日はお昼を食べ忘れてしまった。あまりにもダンジョンでの出来事が濃密すぎたのだろうか?張り詰めた集中を解く機会がなく、空腹など考える暇もなかったのだろう。しかし、お昼を食べていないことを知ると急にお腹が空いてきた。不思議だ。クッキーを食べる手を少し止めて考える。だが、これからボス戦が控えていることを思い出し、お昼を食べるのはやめておいた。決してクッキーが食べたかったからというわけでない。そういうわけではないのだ。と誰がいるわけでもないしに言い訳をした。


引き続きクッキーにジャムを乗せて味わう。それにしてもこのクッキーにジャムを乗せたスイーツは紅茶によくあう。ずっと食べていられる気持ちはあったのだが、いつのまにか残り一枚になっていた。名残惜しいが、ボス戦もあるので早く食べて先に進まなければならないだろう。その前にMPが回復しているか

確認したが、どうやらいつのまにか全快していたようだ。最後の一枚を味わいながら食べた後に、私はこれからボスへと挑むことにした。

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