第18話 初めてのPT(3)

勇者くん達とご飯を食べた後に、部屋に帰ってお風呂に入ってねる。そして、翌日を迎える。今日は、午前中ダンジョンについての授業があるので、実際にダンジョン探索に出かけるのは、お昼からになるだろう。この科目は必修科目であるために、私も受ける必要がある。新しい発見もあるだろうと思い、集中して話を聞くのであった。


今回ダンジョンについて教えてくれるのは西城先生のようだ。今回の授業で分かった事は、モンスターを倒した後に残る魔石は探索者の収入の大部分を締めるので忘れない様子にする事、そしてそのままにするとモンスターが食べて進化することがあるから注意する事である。そして学園のダンジョンでは、魔石を放置してはならない事を学んだ。これは学園だけではないのだが、本来はメインの収入のため、放置する人などいないのだが、回収する暇がなく逃げ出したPTが出ると、進化個体が混ざることがあるから大変危険らしい。そのため探索者組合では、定期的にそのような行為がないか確認があるようだ。判断方法は、入試の時に使われた嘘発見器を使っているらしい。過去には、悪意を持って魔石を放置する者がいたらしく、それで負傷者が多く出た事件があるようだった。それからこのシステムは導入されたようだった。


基本的には、学園のダンジョンには、教員が同伴するため、忘れていくということはあまりないようだがら問題はないようだが、あまりにも忘れると減点が入るようだった。因みに、この学園には通常の成績とは別に探索者としての採点がされ、そちらも成績と一緒に返されるようだった。どのような試験をするのかは、わからないが定期試験もあるようだった。探索者学園だから当然なのかもしれないが…。


それから、学園の森林系ダンジョンでどのようなモンスターが出てくるのかと、その弱点について解説がされた。ウルフについての解説がメインで、魔法についてもおまけ程度に解説があった。それから森林系のダンジョンに入る際には、学園は胡椒や唐辛子を持っていくことを推奨しているようだった。これはウルフ系のモンスターだけでなく、他の嗅覚が鋭敏なモンスターや他の生き物に対しても言える事だが、嗅覚が敏感なモンスターは刺激物が嗅覚に大きなダメージを与えて無効化すると同時に、ダメージを与えることができるらしい。余談だが、私が狼と呼んでいたモンスターは、多くの人からはウルフと呼ばれているようだったが、狼と呼ぶ人も少数だがいるらしい。


授業が終わると多くのPTの中で、さっきの授業で話があった、ことについて話しているようで、これで戦闘が楽になるとか、これでボスと戦えるなどといった声があちらこちらで聞こえる。勇者くんたちも試してみたい気持ちがあるらしくPTで集まっているようだった。勇者くんたちは、4人どこか楽し気に話しているようで、どこか疎外感を感じたが、星宮さんが「綾地さんもこっちにきて話そうよ。」と言って読んでくれた。どこか嬉しい気持ちになった。


それから、PTのみんなで色々と話したが四人は、アイテムボックスが出たことのお祝いパーティーからかなり仲良くなっているようだった。やはり、私はこのPTにはどこか溶け込めていないようだった。しばらくして、お昼を食べてからダンジョンに行くことになった。勇者くんは教員に連絡をして、同行してくれる教員を探してくると言っていた。それは彼に任せて私たちは各々お昼ご飯を食べてダンジョンに入る準備をするのであった。


私は、お昼を食べた後におやつとお茶の準備をする。今日はダージリンにすることにした。それから集まる時間になったので、集合ポイントに向かう。どうやら他の四人はもう揃っていた。全員小さな袋を腰に下げていた。どうやら朝の授業で教わった、唐辛子や胡椒を試してみたいようだ。それから、しばらくして教員の二人がやってくる。一人は、蕪木先生で、もう一人は見たことがない男の先生だった。知らない先生が、「初めまして。わたしの名前は、林善雄と言います。学園では、皆さんのダンジョン攻略を補助する業務についています。職業は、騎士です。」と自己紹介をしてくれた。林先生は、大盾と剣を持って戦うスタイルのようだ。いつの間にか、勇者くんが自己紹介を林先生にしていた。それからダンジョンに行きましょうと掛け声をあげて進み出したようだ。


気がつくと四人はダンジョンの中に入っていたようだ。蕪木先生に声をかけられたので私も入ることにする。ダンジョンの中にはいる。すると四人は、転移魔法陣の方へ向かっていた。そして私も彼らの元に向かうことにした。5階層のボス部屋へとワープしようとすると、誰かが戦っているのか転移は使うことができなかった。そこで蕪木先生が教えてくれる。「誰かがボス戦をしているときは、転移陣は使うことができない。終わったら魔法陣が光出すから待ってたらいい」とのことだった。なるほど、私はそんな体験がなかったので知らなかったが、これは面倒くさいなと思ってしまった。特に学園では、5層へのワープとボス戦はよく行われるだろうから攻略が遅くなるのも納得した。


しばらくして、魔法陣が光だしたので転移することにした。5階層にワープする。早速勇者くんたちは、6層へ向かったようだった。6層には、様々な属性のウルフがおり色々なスキルや魔法で攻撃をしてくる。そこで勇者くんが胡椒を彼らに投げつけてどれだけダメージを与えれるのか試しているらしい。6〜7頭いた狼たちは、胡椒で動きが鈍ったようで、姫野さんと勇者くんそして、星宮さんが倒し切っていた。


このフロアは、嗅覚が効くウルフがそれも色々な魔法などを使ってくるため、PTメンバーはダメージをそれなりの回数受けているようだが、星宮さんは見えているようで、被弾数は1番少ないように思える。私は、今のところ一撃ももらっていない。当たり前といえば、当たり前なのだがステータスに圧倒的な差がある事、このフロアを経験済みだという事、そして、実戦の経験数が彼らより圧倒的に多いことが理由に挙げられるだろう。このフロアでもまた、西燈さんがすぐにヒールを使うため、また私はいらない子と化していた。


彼らの戦闘をみているのにも飽きて、あまりにも暇だったので、蕪木先生と話していることにした。そうして話していると分かったことがある。それは蕪木先生が、剣道が好きで訓練棟で学生に混じってよく鍛錬を積んでいる事、それから甘ものが好きな事など色々な話しをした。私が蕪木先生と話していると林先生も会話に入ってきて、3人で楽しく色々なことを話した。特に盛り上がっていたのは、どこのプロテインを使っているかと言う話で、私にも色々なプロテインや筋トレをお勧めしてくれた。


気がつくと、8層まで進んでいた。8層になると、ウルフは群れを組んで襲ってくるようになった。連携を組んで襲ってくるウルフたちに、勇者くんたちは頭を悩ませているようだった。胡椒や唐辛子はいつのまにか全て使い切っていたようだ。どうしようもないため、一度、7層に帰ることにした。


その際、ウルフたちに囲まれて勇者くんたちは身動きが取れなくなっていたため、先生が介入する事態になった。どうやら、蕪木先生が退路を作り、林先生がウルフたちのヘイトを集めているようだった。私は、このダンジョンにきて一度も戦闘に参加していなかったこともあり、先生たちに協力することにした。ダンジョンが出現する前から、持っていた短剣を周囲のメンバーが見ていないのを確認して、アイテムボックスから取り出す。勇者くんたちは、どうやらうまく包囲から逃げ出すことに成功したようだ。星宮さんは、先生たちを手伝おうとしていたが、勇者くんに「早く急いで」と言われて星宮さんも勇者くんたちについていくようだった。それにしても、私のことは忘れられているようだ。戦闘に参加してないのが原因なんだろうか?わからないが悲しい。やっぱり、おうち帰りたい…。


勇者くん達が見えなくなったところで、先生達を手伝いにはいる。ウルフたち目掛けて駆け出す。そして、慣れた手つきで次々にウルフの首を落としていく。6〜7匹ぐらい倒しただろうか?すると先生たちも、かなりの数のウルフを倒していたようで、いつのまにかウルフはいなくなっていた。私の手際の良さに、林先生は驚いていたようだったが、蕪木先生はあまり驚いていないようだ。それは、入学試験のときに、手合わせをすることがあったからだろう。


それから、林先生にレベルのことや、武道の経験などについて色々と聞かれることになった。私は、レベルはそこまで高くないが、小さい頃からずっと武道を習ってきた事、ウルフの動き方の特徴について話すと、完全にまでとは言わないが納得してくれたようだ。因みにウルフの動きの特徴とは、左足を前に出しているときは、威嚇しているときでありこの体制では魔法を打ってくることはあるが噛みつきに来ることができない事、右足を前に出しているときはこれから噛みつき攻撃をする予兆である事である。理由はよくわからないが、なぜかそのような特徴があった。


それから、先生たちと一緒に勇者くんたちのもとに急ぐことにした。どうやら勇者くんたちは、7階層へと戻る途中の階段に座っているようだった。こちらに気づくと勇者くんが近づいてきて、「良かった。綾地さんも無事だったんだね。一緒に逃げたと思ったのに気づいたらいなくて心配したよ。怪我とかない大丈夫?」どうやら本当に心配しているようで、一緒に逃げていたと思っていたのは本当のことなんだろう。勇者くんには、「心配してくれてありがとう。でも大丈夫だよ。これからもお願いね?」といっておくことにした。でもなぜに勇者くんたちは私のことを見失ったのだろう?。もちろん隠密を使うことはなかった。私の影が薄いのだろうか?


全員合流できたところで、私の唐辛子袋が残っていることに気がついた。そこで昨日苦戦した、5層のボスにリベンジに行く事を提案してみると、みんな乗り気のようだったため、5層まで戻ることになった。行きとは違い、帰りは楽で、あまりウルフ達に襲われる事なく、5層のボス部屋前まで戻ってきていた。途中1PTが、ボスに挑んでいたようだったので終わるのを待ってから、6層からボス部屋に戻り入り口から出て、ボス部屋前の部屋まで戻ってきた。なお、ボスとは討伐後に入り口から出て、入り直すと再び戦うことができる。ボスの周回は、こうやって行われている。


ボスの部屋の前に戻ってくる。みんな疲れているようだったので一度休憩を取ることにした。休憩の時間にいつものように、おやつを食べることにする。今回は全員分用意してきたので、みんなに声をかけることにする。それから、林先生と蕪木先生も誘うことにした。今日のお菓子は杏のドライフルーツを使った、クッキーだ。どうやら、姫野さんも、お菓子を持ってきているらしく一緒に出してくれた。彼女は、マフィンを作ってきたようだった。みんなとお菓子を囲んで食べることにする。楽しい時間を過ごした私たちは、気力も、体力も十分に回復したことを自覚する。


私は、唐辛子の袋を勇者くんに「お願いします」と言って渡しておくことにした。後衛である私が持っていても、仕方がないので渡すことにした。それから、前回姫野さんが勇者くんより先に魔法を当てたからか、先に狙われるということがあったので、今度は勇者くんたちにヘイトが向いてから魔法を使うという作戦を立てているようだった。


全員でボスの部屋に入ると、前回と同じ緑色のウルフが現れる。それを見た勇者くんは、前回と同じく距離を縮めようとする。だが、今回は星宮さんも一緒にボスとの距離を詰めている。そして、私が姫野さんと西燈さんを護ることにっなっているので、彼女らの前に立つ。だが、必要はなかったようだ。


それは、勇者くんたちが上手くウルフの注意を引いているようで、一瞬の隙をついたのか唐辛子の袋を、ウルフの鼻にぶつけることができていたようだ。唐辛子でボスは苦しんでおり、動かない、このチャンスを逃す手はない。勇者くん、姫野さん、星宮さんが一気に畳み掛ける。すると、前回の苦戦が嘘のように簡単にボスを倒してしまった。流石に、ボスもタコ殴りにされては耐えられないようだった。ボスを倒すと宝箱がいつの間にか、勇者くんたちの目の前にあった。宝箱を開けると中には杖が入っていた。

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