第15話 初めてのPT (1)
先を目指して進んでいると、どうやらこのフロアは方向感覚をおかしくするらしく、探索しているはずなのにいつの間にか元の場所に戻ってしまうということが何度かあった。試しに携帯のコンパスのアプリを開いたが、ぐるぐる回って方位がわからなかった。困った私は、神聖魔法とレベルをあげるため、このフロアの敵を片っ端から倒す事にした。そうしたら、気づいたことがある。墓地に対してヒールを使えば墓地ごとアンデッドモンスターを葬れるという事だ。MPの消費は多くなるかもしれないが、全てのお墓に対してヒールをかけていくことにした。そんなことをしていると想定よりかなり早いペースでMPを消費していく。レベルが上がった音が何回か聞こえたのちに、帰ることにした。
レベル 35→38
職業 救国の聖女
HP 9860
MP 16100
力 629
知力 841
身の守り 336
魔力 1500
Skill
剣術Lv5 隠密Lv10(Max) 投擲Lv6 光魔法Lv8 聖女の祈り 天啓 転移魔法
神聖魔法Lv1→3
寮に帰ったのち、夕飯を食べてMPが全快するのを待つ。女神様にお祈りを捧げてお風呂に入ることにする。お風呂から上がると、回復していたので、天啓を使うことにした。するとどこから「困ってるようね。私の聖女ちゃん。聖女ちゃんは直感のままに進むといいわ。それからあのダンジョンの…えっ何?言っちゃダメ?ごめんね。聖女ちゃん。教えてあげたかったんだけど、ダメみたい。頑張ってね!」と聞こえてきた。あのダンジョンには、何かあるのか気になったが言えないようだったので仕方ないだろう。
それから、神聖魔法のレベルが上がって、「セイクリッドソード」を覚えた。どうやらこの魔法は、聖属性の剣を10本、魔法で生成して飛ばして攻撃する魔法らしい。なお、一度発動するために、200のMPを必要とするようだった。
次の日となる。今日は月曜日なので、学校に行かなければならないのだが、今日からお試しPT期間が始まるのであった。学園に来ると、クラスのみんなどこか落ち着かない様子だった。
担任の西城先生が教室にやってくると、その腕の中には大きめの箱が抱えられていた。どうやらくじ引きでPTを決めるようだ。まず回復職の人がくじを引く番らしい。どうやらこのクラスには、6人の回復職がいるようだ。それはくじを引きにきた人数で分かった事である。その他クラスメイトは、私たちがくじを引いた後に引いているようだった。くじにはそれぞれ、1〜5の数字が振ってあり同じ数字のメンバーが、仮のパーティーとなるらしい。私がひいたのは「1」と書かれたくじだったので、同じ番号の人を探しに行くことにした。
「1番の人はこっちに集まってくれないかな。」と言ってる男の人の声が聞こえた。声の元に行くと、そこには入学式で一緒になった銀髪の少女と、声をあげてメンバーを探していた男の人と、その男の子のそばに寄り添って立って周りを牽制している黒髪の少女、それからあわあわしている小柄な少女の四人が揃っていた。
5人揃ったのを確認して、男の人が声をかけてくる。「はじめまして。俺の名前は、一条勇希。職業は勇者。みんなのことは俺が絶対守るから、これからよろしく」どうやら全員に対しての自己紹介のようだった。なるほどこれから自己紹介をし合うのかと思った。
次に、彼の横に立っている女の子が喋り出す。「私の名前は、姫野鈴音よ。隣にいる彼、勇希の幼馴染。職業は氷魔法使い。よろしくね。」どこか威圧感を感じた自己紹介だった。
次は、あわあわしていた子の番のようだ。「えっと、わっ私は、西燈万里といいます。職業はシスターです。よろしくお願いします。」とどこか怯えた感じで自己紹介を終えた。
銀髪の子の番が回ってきたようだ。「私は、星宮結愛。職業は勇者、みなさんよろしくお願いします。」どこか優しい感じがした。
さて私の番だ。「私は、綾地です。職業は僧侶です。一応剣も使えます。よろしくお願いします。」と言い、自己紹介を終えるのであった。
さて、気がつくことがなかったが私たちのPTは、なぜか周囲からの注目を浴びていたようだ。姫野さんは、一条君のことが多分好きなのだろう。だから周りにあんな態度をとっているのだろうなと思い、あまり関わり合いになりたくなかったので、全員さん付けにして呼ぶことにした。だが、心の中では、一条さんのことを勇者くんと呼ぶことにした。なんとなく、一つ一つの仕草や、みんなを守ると言い切るところが勇者ぽいと思ったからだ。
これからどうしようと思っていると、勇者くんが、全員に声をかける。「よし。これで全員の自己紹介も済んだ事だし、早速ダンジョンに行こう。先生に話をしてるからみんなはここで待ってて。」といい教員の方へ小走りで行くのであった。
ところで、私は初めてPTを組むわけだが、普通の回復職はどうするが普通なのだろうか?わからない。前世のゲームの経験から、とにかく後ろにいて回復魔法を飛ばしていたらいいかと思ったので実践してみることにした。
一条さんが帰ってくると、隣には蕪木先生と西城先生がいた。どうやら、彼らがダンジョンの中に同伴してくれる教員らしい。他のグループには、他の教員がついていくようだった。さて、今回挑むのは私が以前不正に侵入したオオカミのダンジョンらしい。ボロを出さないように気をつけなければと、気を入れ直してついていくことにした。
ダンジョンの前を通ると、警備員が真面目に立っていた。あのときゲームをして遊んでいた職員と同じはずなのだが…、どこか不審に思っていたが、どうやら教員同伴でダンジョンに行く際には、警備員の方にも連絡が行くようで、それで今回は真面目に警備をしているようだった。勇者くんが先頭に立ち、「さあ行こうか」と言い先に進む。彼についていくように他の3人も続いていくようだった。私は、先生たちの方を見て確認すると、なぜか頷かれたので、頷き返して中に入ることにした。
ダンジョンの中に入ると、そこには森林が広がっている。勇者くんたちは、先に進んでいるようだった。置いていかれると思い少し、駆け足で行くのであった。先に進むとウルフが出てきたが、勇者くんが危なげなく倒していた。どうやら、勇者という職業はかなり強いらしく、私たちはあまり何もすることがなく次の階層まで進むことができていた。2層以降も勇者くんが中心となってモンスターを倒しているようだ。戦闘は非常に安定しており、私はいらない子になっていた。誰もダメージを負わず、誰かがダメージを受けても、西燈さんがすぐに回復してしまうため手持ち無沙汰になっていた。時折星宮さんはこちらをちらちら見てきたが、彼女も戦闘には参加しているようだが、あまりする事がないらしいようだった。初めてのPTなのにどうしよう?なんとなくおうちに帰りたくなってきた。
それからも、勇者くんと姫野さんが大体のモンスターを倒してしまうため、やる事なく先に進むのであった。私は、一回も回復魔法を使う事なく5層のボス部屋の前に辿り着いていた。戻るのか、先に進むのかはこれから話し合うのようだが、とりあえず休憩を挟むようだった。
私はお気に入りの杏ジャムでイチゴと生クリームを挟んだフルーツサンドを食べることにする。今日は浅い階層までしか行かないと思っていたので遠足気分でいたのだ。水筒には、アールグレイを入れて持ってきていた。私は、紅茶の中ではダージリンも好きだが、アールグレイの柑橘系の香りが大好きなので今日はアールグレイを選んだ。他のメンバーが、わいわいと会話を楽しんでいる中、私は少し離れた場所でティータイムを満喫していた。アールグレイは、ティーカップを持ってきていたのでそちらに入れて飲んでいた。あまりにも準備が良い私に後ろにいる先生たちは、苦笑いを浮かべていた。
一人でゆっくりとこの時間を楽しんでいたところ、星宮さんがこっちにきて、「美味しそうですね。私にも一つわけていただけませんか?」と言ってきた。僕の大好きな杏のフルーツサンドであるだけに抵抗感はあったが、ここは渡すことにした。フルーツサンドを一つ渡して、紅茶も水筒についているコップに注いで渡すことにした。「どうぞ。紅茶は熱いので気をつけてくださいね」と言いながら渡す。彼女は、「ありがとうございます」と言いながら、彼女は紅茶とフルーツサンドを受け取った。そしてフルーツサンドをひと口食べると、固まって動かなくなった。どうしたのだろうか?数秒後、「おいしい…。これどうやって作ってるんですか?」と彼女は聞いてくる。よかった。急に動かなくなるからおいしくなかったのかと思ったが、そんなことはなかったらしい。
彼女に作り方を教えていると、勇者くんたちがこっちに来る。どうやらボスに挑みたいようだ。私としてはどっちでも良かったため、頷いておいた。どうやら星宮さんも頷いたみたいだった。先生たちも特に異議はないようで、口を挟むことはなかった。
勇者くん達がボス部屋に入るのを確認して、私も入ることにする。先生も私の後ろからついてきているようだった。見慣れた魔法陣からボスが出てくる。ボスは、私がソロで来た時と変わらず、大きな緑色の狼だった。勇者くんは、先ほどと変わらず、一人前に出てボスと戦おうとし、それを魔法使いの姫野さんが氷魔法で補助する。しかしながら、ボスは勇者くんを無視して姫野さんの方に向かうようだった。姫野さんは、不意を突かれたのか、動けないでいるようだ。ボスが姫野さんの腕に噛み付く。同時に彼女は悲鳴をあげる。それをみた、シスターの西燈さんは回復魔法で姫野さんの怪我を治そうとするが、ボスが噛み付いて離していないため、それは無駄になるだろう。瞬間、星宮さんがボスに対して剣を振るう。当たったようだが、ボスも見えていたらしく、避けようとしたために、剣は軽く掠ったに過ぎなかったようだ。西燈さんは、動揺しているらしく「ヒール」を連続で発動していた。
幼馴染を傷つけられた勇者くんは、どうやら怒ったらしく、「俺の仲間に手を出すな」と言いボスに突っ込む。怒りで、本来以上の力が出せているのだろうか?先ほどよりもかなり速く動けているようだった。だがその攻撃は、単調になっていると思う。あれでは当たらないだろうとも思った。勇者くんの隙を見て狼は、勇者くんの足を噛む。そして風の刃のような魔法を発動し、星宮さんを牽制していた。姫野さんはボスと勇者くんがあまりに近くにいるため攻撃できずにいるようだ。
さて、こんなにPTメンバーが苦戦しているのに、私は何をしているのかというと後ろで観戦をしていた。もちろん光魔法で回復させようと試みるのだが、何故か西燈さんが先に魔法を使おうとするため、私は使うのを躊躇っていたのだ。回復役がこのPTには二人いるので、分担して回復させるべきなのだが、戦いにあまり慣れていないから、西燈さんは周りが全く見れていないようだった。
星宮さんの戦闘を今まで見てきたが、やはり綺麗な剣筋だと思う。あれは、私と同じくなんらかの武道を習ってきたのだろう。それに、PTメンバーの中では1番落ち着いているように見える。と、星宮さんをみていたら、どうやらボスの魔法の風の刃に当たってしまい怪我をしたようだったので光魔法の「ヒール」と、私は唱える。どうやら傷は治ったようで、痛みや違和感もなく引き続き戦えるらしい。勇者くんのサポートに行くため、彼女もボスとの距離を詰めるのであった。
それにしても、後衛はもどかしいなと思ってしまう。私も剣を抜いて戦いに行きたいが、それをしたら興醒めだろう。そもそも後衛職の私は、今いるポジションが正規の場所であるにも関わらず前に出たいというのは、回復職としては致命的な欠陥だろうと思う。だが、このままではこの戦闘は長引くのだろうなと思い、私も少しだけ介入することにした。勇者くんと星宮さんがボスと戦ってる中、二人に当たらないように「ライトアロー」を打つ。私は、魔法の精度に関しては、それなりに自信があったため、打ってみることにした。もし彼らに当たったら回復させればいいし、後で謝ればいいやと思って魔法を発動させる。光の矢は、確かにボスの足に刺さり、ボスの動きを鈍らせることに成功したようだ。ここから先は、PTメンバーに任せていいだろうと思う。そして私は、誰かが負傷したらすぐに回復できるように準備をしていた。
前衛の勇者くんと星宮さんは、突然魔法が飛んできたことに驚いていたようだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます