第13話 啓示
夕飯を食べ、寝支度を整えたのちに、天啓が使えるかどうか試してみる。すると、今回はうまく発動したようだ。頭の中に鈴を転がすような声、いやどこかで聞いたことがあるような声が聞こえる。「私の聖女ちゃん、学園のダンジョン10階のボスを一人で倒しなさい!えっ?ここまで?ちょっと待ちなさいよー」と聞こえたのちに何も聞こえなくなった。
実は天啓が使えるかどうかは、就寝前にMPが全快しているときはいつも試していた。今までは使うことができなかったが、今日初めて天啓で神様の啓示をいただいたので、その言に従うことにした。なぜ、啓示に私は従うと決めているのだろうか?わからない。だが、従わなければならない気がしているのだ。声も聞いたことがあるはずなのに思い出せない。聖女を選んでから、徐々に私が私ではなくなっていくようで怖くなった。
神様の啓示を受けた私は、それに従うため学園内のダンジョンに一人で入る方法を考えることにした。そういえば、学園内のダンジョンは探索者証がなくても入れることを思い出す。学内には、関係者しか入れないため入退出を管理するシステムなどを置く必要がないのだろう。学園側は生徒たちも、教員のサポートを受けずに、ダンジョンに入ろうとはしないだろうと考えているようで、警備員が一人交代制で立っているだけだった。
そういえば、学園にはダンジョンが二つあることを思い出し、「どっちのダンジョンなんだろう?」と悩まされることになった。10層までで良いので両方ともクリアしたら良いだろう。とりあえず、学校に行くことにしよう。一般科目をオンラインで受ける生徒は、授業がない日もあるのだが学校には、朝のHRには行かなければならなかった。そこでは、通常の学校と同じく出席確認が取られるようだった。
そういえば、私は学園のダンジョンにどんなモンスターが出現するのか知らないので、教員に聞いてみることにした。見知った先生の方が話しやすいので、私は蕪木先生に話を聞く方にした。HRが終わった直後、私は先生に話を聞きに行くと、図書室にダンジョンのデータがあるから、そこを見てみると良いと言われた。私は、図書室に向かうことにする。
図書館に着くと、そこはとても大きかったのだが、本の数はそこまででもなかった。新しくつくられた学園だからだろうか?蔵書数は、そこまで多くなかったので、目的の情報を見つけることは簡単だった。どうやら、学園のダンジョンでは、ゴブリン系統のモンスターが出てくる洞窟系ダンジョンと、ウルフなどのモンスターが出てくる森林系のダンジョンがあるらしい。森林系のダンジョンとは、どんな場所かというとダンジョンの中なのに陽の光?のようなものが差し込み、1フロアが丸ごと森林となっているよくわからない場所だ。多くの研究者などの頭を悩ませている問題のようだ。その一方で私やその他のゲーマーは、それを当たり前のように受け入れていた。
森林系のダンジョンは、今までに経験がないため今回はそちらに向かうことにした。内心、とてもわくわくしていた。僕は、本を出したまま片付けるのを忘れて、ダンジョンに駆け出すのであった。
森林ダンジョンの近くについたので、隠密を使いダンジョンに侵入を試みる。警備員はダンジョン目の前にある待機室で、どうやら携帯ゲームをしているようで、そちらに集中しており、こっちの様子は気に求めていないようだった。それでいいのか警備員とは思ったが、私には都合が良かったので見なかったことにした。
ダンジョンの中に入ると、爽やかでどこか落ち着くような香りがした。HRが終わってすぐにダンジョンに来たからだろうか?生徒の姿は見えない。このダンジョンの構造はさっき図書館で見たので、思い出しながら進むことにする。今回は、10層のボスがメインなので他は全て無視することにする。1〜4層は、ウルフ系のマスターと、犬系のモンスターが出てきた。ウルフ系モンスターは、鼻がよく効くようで隠密を使っている私を察知していたようだが、襲ってくるモンスターは倒し、他は倒さず逃げるという方法で対処した。
5層につくと、そこはボス部屋で何度も見てきた大きな扉があった。それを確認した私は、片手剣を装備してボス部屋の中に入る。すると魔法陣が光だし、大きめの緑色の狼が現れる。私は先を急いでいたので、この戦闘を手早く済ませようとする。ボスとの距離を縮め剣を薙ぐ。どうやら思っていたより狼は、速いらしく胴体を掠めただけのようだった。仕方ない、時間はかかるが少しづつ削っていくことにする。時間はかかったが、特に危なげなくボスを倒す事ができた。ボスを倒すと同時に宝箱が現れたので、早速開けて次の階へと進もうとする。宝箱の中には、指輪が入っていた。その指輪に触れると、使い方がなんとなくわかる。どうやらこれは、入試のときに使われていた嘘発見器と同様の効果を持つ指輪のようだった。今は使うことがないので、アイテムボックスの中にしまい先に進むことにした。
6層へと踏み込むすると、どこか甘いような香りがした。周りを見渡すと森の中に一部花が咲いた木があった。さて、このフロアで出てくるモンスターなのだが、色がついたウルフ系のモンスターが出てくるようだった。先程のボスと比べると大きさは小さく、5層までのウルフと体の大きさは同じようだが、なぜか色だけが違った。気になったので少し観察してみると、ウルフは自身の色と同じ属性の魔法を使うことができるらしい。緑色のウルフは、風魔法の使い手らしく自身の速さを上げる魔法を使うようだ。ここで、ボスの速さについて合点がいった。
7〜9層も、出てくるモンスターは変わらなかった。図書館で見たルートを通り、最速で10層に到達する。10層には、ボス部屋があったので休憩してから挑むことにした。今日は、お菓子が買えなかったので、水を飲んであとは体を軽く休ませる。そろそろいいかと思い、ボス部屋に入ることにする。
魔法陣が光はじめボスモンスターが現れる。出てきたモンスターは、巨大な赤い猪だった。猪のモンスターは、動きが単調で攻撃しやすいのだが、どうしても致命傷を与えるに至らなかった。そういえば、聖魔法で「エンチャント」があったことを思い出し、使ってみることにする。エンチャントを付与した剣でボスを斬る、すると今まで決定力に欠けていたとは思えないぐらい、簡単にボスを切り裂くことに成功した。やはり聖魔法Lv10で覚えるだけあって強いようで、もっと早く使っておけば良かったと後悔した。
ボスを倒したら、宝箱が出現する。宝箱を開けると、フードが入っていた。フードに触れると、どのような効果が付与されているのかがわかった。このフードを着ると、察知されにくくなるらしい。どうやら、存在自体は認識できるが、フードを被っている人間のことが気にならなくなるようだ。そこいるのはわかっているのに、気にも止められなくなるのはかなり強力な装備だと言えるだろう。だが、この装備自体に防御力はなく、普通の服を着ているのと変わらないようだ。だが、私が1番必要としている装備で間違いだろう。天啓が指していたものはこれに違いないと思う。学園にあるもう一つのダンジョンに行くのも良いが、考えていた以上に私の通常戦の火力が低いことがわかったので、どうするかも少し考えることにする。
魔法陣にのり、ダンジョンの入り口に帰ってくる。人もまだいないようだ。とりあえず、寮に帰ることにした。ダンジョンから出て、警備員の様子を伺うと、お昼ご飯を食べていた。お昼休み中なのだろうか?わからないが、こっちのダンジョンは入ることができることがわかった。
寮に着くと、ちょうどお昼ご飯の時間だった。ダンジョンに人がいなかったことは、お昼の時間だったこともあるだろう。それから、レベル上げのためにアンデッドダンジョンの21層以降に挑むことに決める。それから、今までは気にしていなかったが装備も集めなければならないなと思った。その前に、装備のことを教えてもらったことを神様にお礼を言い、祈りを捧げた。
お昼からは、アンデッドダンジョンの10階を目標に、ダンジョンに行くことにした。フードをアイテムボックスにしまい、お菓子と水をコンビニで買っていくことにした。お菓子がないと頭が回らないのだ。歩いてアンデッドダンジョンに行く。今回探索者は多くないらしく、簡単にダンジョンに入れそうだし、ボス戦で待つこともそうないだろう。
ダンジョンに入ってから、隠密を発動させ、フードを羽織る。転移陣に乗り、5階層へと転移する。そして、6階層に降りる。そこでは、魔法を使ってくるスケルトンが多く出てくるようなフロアだった。聖魔法がアンデッドに対して特攻があるので、すばやく次の階に進む事にする。特に問題もなくダンジョン探索は進んでいった。気がつけば、10階層にいた。
10層についたので、ボス戦に挑む事にする。ボスは、闇堕ちした騎士のようだった。聖女の祈りを戦闘前に掛け直し、「ハイヒール」でボスを攻撃する。ハイヒールを3回打ったところで、ボスは光となって霧散した。宝箱が出てきたので開けると、中は本だった。しかし、今は確認する事なく、帰ることにした。
寮に着くと、MPが全回復していることに気がつく。なので、再び天啓を使う事にした。前回と同じく神様に祈る。するとどこからか、美しく澄んだ女の人の声が聞こえてきた。「よくやったわ!私の聖女ちゃん。次は、今攻略中のアンデッドのダンジョンを進みなさい!それか…」最後に啓示の続きを、話されようとしていたが、途中で聞こえなくなってしまったので、次回に期待することにした。それから、神様は女神様だったようで、今度からは女神様ありがとうございますとお祈りすることにした。今日は、二つのダンジョンを巡ったことでとても疲れた。今日はゆっくりとお風呂に入って早めに寝ることにした。
次の日になり、HRで発表があった。どうやら当初二週間とされた職業の転職だが、このクラスは、かなり早く進んでいるようでもう全員が転職を済ましたらしいそこで、二週間から一週間に短縮されることになったようだ。その後は、お試しでPTを色々な人と組む期間がやってくるらしい。一応クラス外の生徒ともPTは組む事ができるようだが、それはあまり考えられておらず、クラス内で組む前提とされているようだった。クラスの中ではグループができはじめているようで、PTメンバーがもう既に決まっていると話しているものも中にはいるようだった。
学校が終わり次第、すぐにコンビニでお昼とおやつ、そして水を買ってアンデットダンジョンに向かう。今日は、20階層まで一気に進む気でいる。戦闘を避けつつも、倒したことのないモンスターとは、戦うことにする。
フードを着て、ダンジョンの中に入る。その後に隠密でいつも通り姿を隠す。魔法陣で、10層に転移する。11層に進むと、そこはレイスが沢山いるフロアのようで、至る所から魔法が飛んでくるようだ。墓地のダンジョンで経験済みなので、その経験を活かして次のフロアを探すことにする。11〜14層は、ずっと同じようなフロアで、魔法を使ってくるスケルトンや進化したレイスなどが出てきたりもしたが、経験からなんとかすることができた。
15層につくと、ボス部屋があった。門限があるため、可能な限り早く討伐したいということもあり、エクスヒールを使って討伐することにする。扉を開き部屋に入ると、見慣れた魔法陣が展開されボスが出現した。どうやらここのボスは、リッチのようだった。「エクスヒール」と3回ほど唱えるとボスは極光に包まれる。やがて光が収まると同時にボスが消え去ったのがわかった。宝箱が現れる。中には、身代わり効果のある藁人形が入っていた。わたしは、運が良かったと思い思わず笑みが溢れる。いけない、先を目指すことを忘れていた。次の階層へと進む扉が現れたので進むことにした。
16層へと進む。この階層まで来ればこれから探索中に人と会うことはないだろうと思い、フードを脱ぐ。この階層は、死神のようなモンスターがずっと追いかけてくるステージのようだ。正直怖い。逃げ出したい。だが、ステータスを上げるために逃げ出すためにはいかないと思い、体を奮い立たせて先に進むことにした。死神に追われ続けたおかげか、かなり早く20層まで来れたと思う。なお、死神は階層を移動してもなおずっと追いかけてきたので本当に怖かった。「もう嫌だ、お家帰りたい」と涙目になりながら口ずさんでいた。
ボス部屋の前まで来て、死神も途中で消えたのでようやくゆっくりできる。それにしても、涙目になってあんなことを口ずさんでしまうとは、恥ずかしい…。気分転換に、お菓子を食べることにする。今日は、杏のフルーツサンドだ。甘くて美味しい。気がつくといつのまにかなくなっていた。もっと味わって食べるべきだと思って後悔した。残念。
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