第9話 入学試験
今日は、職業をどうするか選ぼうと思っている。あまり時間をかけても答えは出てこないだろう。レアっぽい方を選ぶなら救国の聖女だろうか?だが、正当な上位職ぽい大聖女も色々な派生に繋がる可能性を感じるので捨てがたいとは思っている。悩んでいても進まないと思いゲーマーの直感に従って、救国の聖女を選ぶことにした。転職用オーブを取り出してステータスを開いて職業を画面を出して転職をする。すると、転職用のオーブは、光の粒子となって消え去った、同時に私は金色の光に包まれた。
レベル 1
職業 救国の聖女
HP 5000
MP 8500
力 420
知力 500
身の守り 260
魔力 800
Skill
剣術Lv4 隠密Lv8 投擲Lv4 光魔法Lv1 聖魔法Lv9 聖女の祈り 転移魔法
New 天啓
やがて、光が収まり救国の聖女に転職した私は、天啓という新しいスキルを入手していた。このスキルはMPが全快しているとき、その全てを対価に、聖女が神様から天啓を授かることができるスキルだ。MPの負担が大きいため簡単に使うことはできないが、強力なスキルなことには間違いないだろう。天啓は、他のスキルと違い使い方が頭に浮かんでこない。スキルの天啓を発動させるための条件は、わかっているのだが、どうやら他にも別の要件があるのかもしれない。それと、転職をするとレベルは1からになるようだが、ステータスは引き継がれるようだし、転職ボーナス?的なものも存在しているようだった。
啓示を覚えた私はなんとしても使わなければならないという使命感をいつの間にかもたされていた。なぜだろうか?今までは、そこまで信仰心など篤くなかったはずなのに転職してから信仰心に目覚めそうだった。特に問題はなく、むしろいつもより良いため気にしないことにした。
部屋に出てダンジョンに向かおうとすると、母に呼び止められる。母はどこか驚いた様子で「その髪と瞳どうしたの?」と聞かれた。私はなんのことかわからなかったために、「なんのこと?」と返してしまう。
母によると私の髪はどうやら金色に染まり、瞳は翠色に染まっているようだ。そして、今までも母親似の女の子と間違えられる顔だったのが、より女の子らしくなったらしい。鏡で見てみると、髪は綺麗な金髪に瞳は美しい翠色をしている。顔もより女の子らしくなっていた。本来であれば、元に戻そうとするのかもしれないが、僕の理想を体現したような容姿をしていたので、なぜかまあいいかと思った。
これらの変化には、転職が影響しているのだろうと直感する。昨日の夜は、今まで通りだったことは両親の反応からも確かだろうし、転職しか原因は考えられなかった。余談だが、髪と瞳などの色が変わってから肌のケアなどに費やす時間が今まで以上に増えた。やはり可愛いは正義だ!
ネットを見ていると光魔法にはミラージュというちょっとした幻覚を見せる魔法があるらしいので、とりあえず光魔法のレベルを上げることにした。一日中、光魔法を使っていると、レベルが上がりミラージュという魔法を使えるようになった。ミラージュは、髪の色や瞳の色などを変えることができたり、剣の長さを実際とは異なる長さに錯覚させることができる魔法であり、とても便利な魔法である。この魔法を常時発動する事で今まで通りの髪の色と瞳の色を取り戻した私は、ダンジョンに向かうことにした。因みに、ミラージュを常時発動させるためには、毎分MPを25消費し続けなければならない。
私が引き続きダンジョンに潜ろうといつも通り潜ろうとしていたところ、ダンジョンの前で工事が行われているのに気が付いた。どうやら、私と同じく探索者と登録していない者たちが、ルールを破りダンジョンに入っていたらしいので今後は、ダンジョン前には機械を設置して探索者証がなければ通れなくなるようだった。確かに機械認証にしてしまえば、ダンジョンに不正に侵入するのは難しいだろう。加えて、誰がダンジョンに入ったかログが残ることで探索者が行方不明でどこにいるのかわからないという事態にはならなくなるのだろう。これからも、ダンジョンにはいってレベルを上げるというのは厳しくなるだろう。私もさすがにこれにはお手上げで、どうすることもできなかった。なのでこれからは、スキルと魔法の練習を中心として行っていくことになるだろう。
気が付けば、ダンジョンが現れてからもう半年以上が経過していた。ダンジョンに入れなくなってしまったことは残念だが、高いリスクをおかしてまでレベル上げるのは望んでいないため、これからは先ほど決めたようにスキルと魔法の練習に時間を充てていこうと思ったのだが、訓練をする場所が思いつかない。どうしても候補地が見つからなかったため、魔法は部屋で練習できる範囲で練習するかにした。あとは、基礎体力を落とさないようにランニングなどを行っていた。
それからまた、半年がたった。この半年はダンジョンに入ることができなかったのでレベルは上がらなかったがスキルのレベルは、かなり上がったと思う。
そしてダンジョン高校の受験を翌週に控えている。ところで当初はダンジョン高校という名前だったが、正式に開校されたのちに国立探索者学園という名前に変更された。正式名称は国立探索者学園というのだが、多くの人は言いやすいのでダンジョン高校あるいは、学園と呼んでいる。
それからの一週間は、あっという間に過ぎた。そして受験当日を迎えた。私の受験会場は、陸上競技場と隣接した新聞社を貸し切って行われるようだ。午前は、筆記試験が行われるようで、休憩をはさんだのちに実技試験がある。会場につくとそこは、大勢の生徒が詰めかけていた。私と同じ制服を着た学生を数人見かける。どうやら同じ中学からも受験生がいるようだった。私は探索者を希望しているのでそちらの試験会場に向かうと、どうやら先ほど受験会場の入り口で見たほどの人はいないらしい。やはり命の危険があるし、両親からの反対で受けれない人も多いのだろう。では、なぜあんなに人が多かったのかというと彼らは技術科を希望している者だからだ。GWに試験があるので受験の練習として挑戦することができる今回の機会は多くの受験生にとって練習の場としても使われているようであった。
試験会場の部屋の前にある連絡ごとを記載しているホワイトボードに、指定された席が張り出されていた。このシートで定められた席に着席して準備をする。試験時刻が近づいてきたのか監督官が部屋にやってきて試験用紙を配る。どうやら、他の学校の受験と特に変わることはないらしい。唯一違いがあったとしたらそれは、「ダンジョンでPTメンバーがけがをしたらどうしたら良いか?」などといった問題が出され、思考テストのような問題が出るところだ。そんな感じでテストは終わった。それなりに答えられたとは思うが結果はわからない。
テストが終わり昼休みになった。筆記が終わったことでまわりの子たちの緊張はだいぶほぐれているようだった。そういえば、受験会場を見渡すと男女比がちょうど、5:5ぐらいになっていることに気が付いた。今は特に気にすることではないかと思い、お昼ご飯を食べることにした今日のお昼ご飯はオムライスだった。
昼休みが終わり私たちは、着替えやすい服に着替えたうえで運動場に集まる。するとそこには試験官であろう職員が10人ほど集まっていた。実技試験にはいくつかの課題があるらしい。まず、基礎体力テストがあるようだ。基礎体力がないものは、ダンジョンに連れていくことが危険なためつれていことができないらしい。この試験内容は、全員でランニングをするというものだった。部活動のランニングを思い出してもらったらいいかもしれない。掛け声こそかけないが、列を乱さないように20分ぐらいだろうか軽く走ることになった。さすがというべきか、このランニングで脱落する人はいないようだった。
次に試験官との戦闘らしい。これが一番大きなウェイトを占めているようだ。受験者が60余名のため2つのグループに分かれて模擬戦闘を行うらしい。ここで魔法使い、回復職希望のものはその旨を伝える必要があるようだ。どうやら魔法使い、回復職は試験官の攻撃をよけるのに集中していればいいらしく、その際に使える魔法があれば使っても良いらしい。実際に後衛職は、攻撃をよけられれば距離をとって戦えるためそれだけで良いようだ。一方で前衛職を希望する者は、好きな武器を使った模擬戦闘を行うらしい。
私は回復職希望のため、後衛職型の試験を受けるグループにいる。先に試験を受けている子たちを見てみると、女の子が多いことに気が付く。模擬戦内容を見ていると、みんな結構うまくかわしている。受験生の中には、反撃で魔法を使っている子もいるようだが、試験官が少し本気になると被弾する子が大半のように思えた。それは、動きながら魔法が使えないからだろう。
途中から他人の試験を見ているのにも飽きたため、目をつぶって待っていたのだが、私の名前が呼ばれる。周囲は私の名前を聞き、男であることにどこか驚いた様子を見せていたがそんなことには目もくれず、試験に挑むのであった。ほかの受験生を見ていると本来この試験では魔法、杖あるいは盾を使いどれだけかわせるかというものみたいだったが私は、木剣を借りていいですかと試験官に聞く。どうやら認めてもらえれるようだ。
私の前に木剣をもった試験官が立ち塞がり「私の名前は、蕪城良一今回の試験官を務める。けがをさせないように気を付けるがそれでも危険があることに変わりはない。危ないと判断したらやめて構わない」と告げられた。「ありがとうございます。ですが、大丈夫です。頑張ります」とだけ返しておいた。審判が「それではテストを始めます。準備はよろしいですか?」と確認をとる。私は無言でうなずき、試験官もうなずいているようだ。「テストはじめ!」という掛け声とともに私は試験官めがけて駆け出す。虚を突かれたのか試験官の動き出しは遅い。剣の間合いに詰めつつ相手の出方を疑う。試験官は私に向かって剣を振るが、私にはその動きが見えていたためその攻撃をよけて木剣を軽く振り試験官に当てることにした。全力でやっては相手がどうなるかわからなかったので、手加減することにしたのだ。思い通りに剣は試験官の体に当たると同時に「止め」と審判が叫ぶ。
周囲は、試験官にダイレクトで木剣が当たったことを心配していたようだが「私は大丈夫だ。けがはしていない。君は剣道か何かでもやっていたのかい?」とこちらを威圧しないようにやさしい表情で話しかけてくる。「はい。剣道をしてきました。試験はこれで終わりでよろしいでしょうか?」と返事を返した。すると審判が割って入って「はい。以上で試験は終わりです。最後に書いていただきたい書類がありますので案内にしたがって下さい」と告げられた。だが、私は「少し待ってください」と言いつつ、蕪木さんに近づきながら「ヒール」と唱える。この試験では、審判と試験官、そして3人の職員がいて彼らがメモをとっているようだが、私がヒールを使ってからメモを取る量が増えた気がした。
ところで試験官と戦った感想なのだが、思ったよりも弱かったことに驚いていた。私は、半年間レベルを上げれてなかったこともあり、まじめにレベル上げに励んでいる者には勝てないと思っていたからだ。私のステータスでは、全力で攻撃しては殺しかねないとおもったので軽くあてるだけにとどめることにしていた。
すべての試験が終わったことで、案内に従って進む。すると、現在のステータスを書いて提出を求められた。私は、本当のステータスを提出するわけにいかなかったので次のように記載した。
名前 綾地良平
レベル1
職業 僧侶
HP500
MP300
力 52
知力 120
身の守り 30
魔力 50
Skill
剣術Lv4 光魔法Lv2
このように、全く正しくないステータスなのだがこれで提出しようと思った。提出先の窓口に並んでいると、提出する際には指輪を付けて、「嘘はありません」や「これで間違いないです」などといった偽装がないことを本人に宣言させているようだった。どうやら、提出する際につけている指輪だがうそ発見器の役割を果たしているようだった。実際に、嘘をついている学生の時は、「もう一度正しいステータスを記載したのちに並びなおしてください」と職員に言われているようだ。なるほどと思いつつどうやって切り抜けようか考えることにした。考えているとすぐに私の順番が回ってきた。
「こちらの指輪を付けていただいて、提出していただいたステータスに誤りなどないということを宣言してください。よろしくお願いします」と言われたので、私は、怪訝な感じで「何のためでしょうか?」と返すが、再び「ステータスに間違いがないか確認するためですのでよろしくお願いします」というので、「私は、ステータスを過大報告してまで、合格したいとは思っていません。これで良いですか?」と言ってみることにした。そうすると職員は、「申し訳ありません。あなたが嘘をついていると疑っているわけではありません。それからステータスに関しまして偽りがないことを確認しましたのでこれで終わりで大丈夫です」といわれて、どうにか切り抜けることができて、ほっとした。
最後に、「すいませんでした。ありがとうございました」と告げて退出することにした。
さて、今回の実技試験について思うことがある。あれは意味があるものだったのだろうか?と。確かに無意味であるとは思わないが、正直攻撃をよけれるかどうかなんて、不測の事態でレベルが上がったものもいるわけで、レベル差という大きな差があるにもかかわらずこのような方法をとっていること、そして後衛がよけ続ける必要があるかどうかなんて聞かれたら私はないと思う。それは前衛が攻撃を受け後衛を守るからだ。結局何が言いたいかというと、実技試験にあまり意味はなく最後のステータス報告こそが、一番の加点内容なのではないか?ということだ。公に「ステータスだけで選びます」なんて言えば反感を買うのはわかっているし、問題にしたがる人は多いだろう。だが、実技試験で試験官がみていたことといえば、魔法が使えるかどうかと、どれぐらい使えるかとかそれぐらいだろう。無論それ以外にも採点対象になるものがないとは言わないが。結局実技試験を行う理由は、実際にはステータスが合否に大きな影響を与えていることを、建前上隠すためだと私は考えている。
そして、ステータス誤魔化し方は今後考えていかなくてはならない問題だなと考えている。そして、今回を無事乗り越えれて良かったと思った。
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