第8話 ダンジョン攻略を目指して(2)

ダンジョンに入って早速、私は15層へと転移する。そこには昨日確認した、16層へとつながる道があった。16層へ降りてみるとどうやら今まで出てきたモンスターが勢揃いしていた。目新しいものや習性が特に増えたわけではないようだ。これなら案外楽に次のボス部屋に辿り着けそうだと思った。因みに今まで探索中に幾度となくボスドロップの宝箱とは別の宝箱を見つけているのだが、その全てを無視していた。それは、ネットによると罠が仕掛けられた宝箱もあるらしいので、私は罠がかけられているかどうか判断する手段を持っていないから安全第一ということでスルーしていた。レアアイテムもあったかもしれないと思うと、もったいない事をしたなという気持ちはぬぐい捨てることができないのでこれまでは考えないようにしてきたが、どうにかできないものかと考えている。


とりあえず今は探索に集中しようと思う。隠密を発動すると上層と同じくどうやらモンスターたちはこちらに気づいていないようだったので、戦闘を極力避けて次の階へと進むことにする。今まで戦ってきたモンスター達しか出てこなかったので特段何事もなく、ダンジョン攻略は順調に進んでいくのであった。しかし、思うことがあるのだが、どう考えても15層以前と16層以降ではフロアの広さが違うとような気がする。以前は走り回れば一日に3層ぐらい探索することができていたが今は、一日かけて次の階層へと繋がる道を見つけられるかどうかなのである。それも戦闘は極力避けているにも関わらずだ。実際のところ、携帯の歩数カウントアプリでカウント数を見てみたが、以前と同じかそれ以上は歩いているようだったので、本当に広いのだろう。


さて、特に何事もなかったが探索に手間取り結局1週間がすぎたある日、私は20層へと繋がる階段を見つけていた。20層もボス戦が待ち構えているだろうことは明白なので、いつも以上に気合いを入れて準備してダンジョンへ向かうのだった。15層に転移したのち、次の階へ進む最短ルートで20層に向かうだがその距離もだいぶ長く、結局目的地にたどり着くまでに2時間弱かかってしまった。さて、20層にたどり着き私は今ボス部屋の前にいる、取敢えず30分ほど休憩をとったのちに戦いを挑んでみようと思った。今回のお菓子は、杏子のドライフルーツだ。ドライフルーツの杏子は、クリームチーズと一緒に食べるとおいしさが倍増するので今日はクリームチーズも持ってきている。ちょっとしたおやつタイムを楽しんだのちに私はボス戦へ挑むこととした。


ボス部屋に入る。すると今回は転移陣から出てくるのではなくすでにボスが待ち構えているようだった。さらにボス部屋は今まで経験したことがないほどに明るく鮮明にボスの姿をとらえることができた。今回のボスはリッチらしい。そして、当たり前のように状態異常を飛ばしてきているようだ、加護が消えている。聖女の祈りをかけなおすとともに短剣を装備して「ハイヒール」と唱えてボスを攻撃する。すると今までは強者ゆえの余裕か振り返ることなく状態異常のみを振りまいていたのだが、突如としてこちらに振り向いた。どこか怒った様相をしているがすでに死んでいるため言葉などは喋れないようだった。するとボスが闇魔法と思われる魔法で、私のことを攻撃してくる。とんでもない物量であるにもかかわらず私にはその攻撃が一切届いていなかった。闇魔法が私の近くに飛んでくると魔法が霧散する、どうやら聖女である私は強力な対闇属性耐性を持っているのかもしれないと思った。ボスもなぜ自分の攻撃が当たらないのか?そして自分の魔法が跡形もなく消されていくことに困惑している様子だった。この隙を逃す手はないと思い、畳みかけるように「ハイヒール」を連発する、ボスもかなり苦しんでいるようで持っている杖に寄りかかることででどうにか立っているような印象を受けた。


瞬間ボスの姿が見えなくなったと同時に僕の視界が上下逆転した。今までに感じたことのないほどの強烈な痛みに襲われるが、何とか「ハイヒール」と唱えることができ痛みが引きケガも治ったようだった。さて何が起きていたのだろうか?全く何もわからない。どうしようと考えているとまたボスが消えた、僕は全力で横に飛ぶが再び鋭い痛みを感じるどうやら腕を切り落とされたらしい。「ハイヒール」で損傷を治すと同時にさっきの攻撃で私は体が二つに切り落とされ視界が逆転したんだろうと思う。怖い。だがここで戦うのを放棄して逃げるという選択肢は僕にはなかった。まだ、頭はどこか冷えており冷静に物事を考えられていたからだ。そして、ボスが今使っている魔法は本物の転移魔法なんだろうと思う。転移魔法を使われてしまっては手を出す事はできない。確かに魔法を使う兆候はあるので使ったことを知覚することはできるが反応することができないのだ。転移魔法を使われたのはなんとなく察しがついているのだが腕や体が切り落とされた魔法の正体がわからない。と考えていると再びボスが消え、今度は右足が切断される。斬られたと知覚した瞬間に回復させる、ボスからしたら自身の攻撃が通っていなかったように見えただろう。僕も今までのパターンから先に回復魔法を準備していたので斬られてからラグがほとんどなく回復させることができたのだ。


だが決定打がない。転移されれば全力で致命傷を避けて回復することはできるが攻撃手段がない。今攻撃に意識を向けるのは自殺行為に感じた。またボスが消え僕は切り刻まれると同時に回復させる。こうなってはもはやダメージ覚悟で攻撃するしかないのではとも思ってしまうがそれは危険なかけであることも違いはない。考える。考える。考える。しかし、打開策は出てこなかった。唯一可能性があるとしたら「サンクチュアリ」だろうか?あれであれば身を守ることができるかもしれないと思い、MP負担はかなり重たいがほかに方法もなかったために使うこととした。「サンクチュアリ」と唱えるすると光の結界が僕を中心にして構成されていくのが分かったボスが攻撃をしてくるがそれは結界に阻まれる。ボスの攻撃を受けてなお結界に対するダメージは薄いようだった。このサンクチュアリという魔法は、自身を中心として半径10メートルほどの結界を構成する技なのだが、維持するのにMPは必要なく結界の持つ耐久値が削られるかあるいは術者である僕が結界外に出なければ解除されることがない。


落ち着いて攻撃に回ることができるようになった僕は「ハイヒール」を連発する。ボスはかなり苦しんだ様子を見せているが倒すには至っていない。それから10分近くが経過しただろうか?それでもボスを倒しきることはできていなかった。結界もヒビが入ってきているのが目で見てわかるこのままではいけない。焦った僕は「エクスヒール」と唱えるすると、ボスの体が極光で包まれるまぶしくて目を開けていられない。やがて光が収まると同時にボスの姿は見えなくなっており宝箱だけがそこには残っていた。


レベルアップの音が聞こえる。宝箱を見てもどこか倒したことに気づいていない僕は、このレベルアップ音を聞いてボスを倒したことを自覚する。ボスが倒せたことが分かり僕の体が急に弛緩する。立っていられない。宝箱は開けるまで消えることはないから体力が戻るまで少し休憩することにした。ところで、今回着てきた服が大惨事になっていたが同じ服をアイテムボックスに入れてきたので両親を心配させるような状態にはならないだろう。私は学習する子なのだ。


しばらく時間がたってから、体に力が入るようになったことを自覚する。あんまり長居するのもよくないと思い宝箱に近づき開けてみた。すると中には2つのオーブが入っていた。1つ目のオーブを手に取ってみるとこれは上級転職用オーブであった。貴重品であろうことは間違いないのでとりあえずアイテムボックスにしまっておくことにした。続いて2つ目のオーブに触れるとどこからか声が聞こえる「転移魔法を習得しました」と。呆気に取られてしまい、僕はフリーズする。そして思考が追いつくと同時に僕の頬は緩み切っているようだ。転移魔法を覚えられたことはうれしい、うれしすぎる。今までで一番当たりのオーブだということは言うまでもない。同時にこの魔法が使えることは絶対に誰にも知られてはならないことだとも思った。転移魔法が世界に与える影響はそれほど大きいものだと思っているからだ。永遠に隠し続けることはできないことはわかっているので、将来的な対策は考えなければならないと思っている。宝箱のアイテムを回収し終わると魔法陣が出現するどうやら次の階層へ進む道はなくこのダンジョンはここで終わりのようだった。上機嫌のまま僕は魔法陣に乗るそしてダンジョン入り口に戻ってきた。


僕は楽し気に好きな音楽を口ずさみながら自転車で自宅へと変えることにした。いつも通り母が出迎えてくれ、疲れたので部屋で休むといった。母は、僕が嬉しそうだったからかいつもよりも上機嫌であるようだった。早速部屋に戻りステータスを確認してみる。


レベル 50(Max)転職可

職業 聖女


HP 3000

MP 5500

力 326

知力 360

身の守り 198

魔力 600


Skill

剣術Lv4 隠密Lv8 投擲Lv4 光魔法Lv1 聖魔法Lv8→9  聖女の祈り

New 転移魔法


ステータスを見ると転移魔法を覚えていた。よかった夢ではなかったと落ち着く気持ちもあったが興奮が収まらない。これは今日は眠れないなと予感するのであった。早速部屋で転移魔法を使ってみる魔法陣と違いラグなく、発動するようだ。使うと目的の場所に瞬間的に飛ぶので方向感覚が訳が分からなくなるのと、今まで体験したことがない感覚に酔ってしまった。転移魔法を覚えれたことがうれしすぎて連続で使いすぎたのだろう。ところで転移魔法はMP100で使えて、目視できる範囲にのみ転移できるようだった。魔法陣の転移みたいに遠距離を転移するのは今は難しいようだが、いつの日か長距離転移をできるようになると目標として掲げるのであった。


さて小一時間転移魔法で遊んだ後に転職ができるようになっていたことそして転職に必要そうなオーブを入手していたことを思い出す。オーブを手に持ちステータスを開くとどうやら選択肢がでてきた。


大聖女

救国の聖女

闇堕ち聖女


の三択であった。まず、闇落ち聖女ってなんだよって突っ込んでしまった。前提として救国の聖女、闇落ち聖女はレアジョブであろうことは間違いないと思うし、2回目の転職の情報を集めるのは難しいだろうしそもそも2回目の転職に至っている人がどれぐらい居るかもわからないのでネットの情報をあてにすることはできない。なので今回の転職は、完全に直感だけで選ぶしかないと思っている。何を選ぶにしても後悔がない選択をしなければならないと思う。とりあえず今すぐ選ぶ必要はないのだから時間をかけて考えることにした。でも闇落ち聖女だけは選ぶことがないのは決まっているそれは、使う魔法が闇魔法になるんじゃないかと思っているからで、闇魔法は怖いので選択肢としてはないのだ。


さて、ダンジョン高校について一度きちんと調べようと思う。まず、試験形態を調べることにする。試験地は各県で開催されるらしく、校舎がある東京に行く必要はないらしい。試験は、筆記試験と実技試験の5:5の形で構成されているらしい。筆記試験では一般教養科目として通常の入試と変わらない試験とダンジョン内で不測の事態が起きた際の対処などについて問われる実践問題形式があるらしい。実技試験では、教員となる予定の自衛隊員が試験官となり本人の素質を調べるらしい。実際にどのような素質が問われるのかはわかっていないので対策のしようはないが、ここまでレベルが上がっている受験生もそうはいないだろうと思い、筆記試験の一般教養分野の範囲を調べて勉強を始めることにした。受験予定日はGWとちょうど重なるように設定されており夏休み前には結果が分かるようになっているようだった。



そんなことを考えていると「夕飯ですよ~」と私を呼ぶ声が聞こえる。いったん考えるのをやめ夕飯を食べに行くことにした。すると父も帰ってきていたようで3人そろっての夕飯となるのだった。


夕飯を食べてる歳に父から話を聞かれた。どうやら父が持っていたスキル解析の効果が分かったらしい。それはダンジョン内から産出したアイテムの効果をより詳細に理解できるというものだということらしく、私がダンジョンでアイテムを得たときにどこまでの範囲のことが分かるのかということが知りたかったらしい。なるほど、私でも魔道具を触ると使い方が頭に浮かぶが、父はより詳細にその内容を知ることができるからどれほどの差があるのか知りたいのだろうなということが分かった。父はどこか楽しそうだった。

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