第7話 説得

光が収まったのちボスの姿を見てみると、今回のボスは死神のようなモンスターであった。ボスは、巨大な死神の鎌を持ちこっちを見て威圧してきている、どうやらレイスと同じく私が持つ魔力に反応しているのだろうと思う。刹那、聖女の守りが破られるのが分かる、少し焦りながら聖女の祈りをかけなおす。無意識ながら対象を私とボスである死神としていたようだ。私には加護が入り、死神にはダメージが入ったようだ、それは死神がのけぞっていることから予想される。私は、直感的にこのボスは今までと違い危険だと認識を改め、片手剣を装備し鎌の攻撃を受け流しつつ聖魔法で死神のHPをちまちま削っていくことにした。


「ハイヒール」をボスに当て続けているとボスが激昂し、状態異常攻撃を連発してくるようになったが、あいにく私には状態異常は通じないし、自身に加護を入れながらボスにダメージを与えることができるので問題なく攻撃を続けている。そうしてまた攻撃を続けていたのだが、いつのまにかボスの姿が消えた。目を離したわけではないのに目の前からいなくなっている。嫌な予感がしたので横に飛ぶ、瞬間強烈な痛みが全身に走る反射的に「ハイヒール」と唱えると痛みは引いた。どうやら肩から腕をざっくり切断されたようだった。腕を落とされたのは初めてだったがハイヒールですぐ回復できたので問題はなかったが、気づけば腕がまた生えていたため少し聖魔法のすごさに驚いていた。さて、ボスが今どうやって僕の背後をとったのか考えなければいけない。すぐに考え付くのは転移だ、魔法陣で転移ができることを知ってる僕はすぐにこの答えにたどり着いた。転移ということは魔法を使っているに違いないはずだし、魔法を使うためにはなんらかのモーションがあると思うのでさっきよりも注意深く死神を見てみる。攻撃もしたいが、転移に対応しなければ死にかねないので魔法のおこりを見逃さないように攻撃することを一度諦め観察に徹することとした。


特に動作などはなく死神がまた消える、と同時に僕は元死神がいた位置に駆け出した。元居た位置では私に攻撃できないから転移するはずであり、その転移先は僕のことを攻撃できる範囲のどこかであることには違いない。であれば、相手が元居た位置を目指して全力で走ればいいのだ。3秒後死神が元々僕がいた位置の背後に現れ鎌を振る。しかし、私はそこにはいないのでその斬撃は空振りに終わる。ここで私は疑問に思うことがあり、それは死神が現れるのに5秒前後かかっているところであった。純粋な転移魔法であれば瞬間的な転移が可能ではないかと思うが、死神の瞬間移動は5秒という時間をかけているし、魔法を使うようなモーションもない。これは私が知らない未知のスキルの可能性があると推測した。だが、結局情報が足りないのでもう一度死神の瞬間移動を見る必要があるのにもかかわらず、私はどこか冷静になっていた。転移という手の付けようがないスキルではなかったという安堵感、そして5秒というタイムラグが私を落ち着かせる要素となっていたのだ。再び死神を見るとまた消えるさっきと同じ方法で死神の攻撃をよけると気づくことが二つあった。ボスの部屋は光るコケと設置してあるたいまつで薄暗いので見えにくいのだが影が移動していたこと、そしてボスが誰もいない場所めがけて攻撃したことの2点だ。少し考えてみると、影が移動したのはボスが影を移動しているのではないか、そして影の中を移動中は私を知覚することができないのではないかという仮説が頭に浮かんだ。


仮説を実証するために、ボスの瞬間移動をもう一度見てみるするとやはり影は動いているし、ボスの攻撃は再び虚空を斬るので、この仮説は正しいのだろうという確証を私は得た。さて、瞬間移動の種も割れたところで反撃と行こうと思う。またボスが影に溶け込むように消える、動いている陰にめがけて「ハイヒール」と唱えると苦しみながらボスが実体化する。影に攻撃をあてると黒い煙がもやもやと立ちのぼる。続けざまに煙に対して「ハイヒール」と唱えると煙が霧散していくのが分かったが、それでも煙は集まろうとしていたので「ハイヒール」を煙が完全に消え去るまで唱え続けた。煙が消滅するとともに宝箱が出現する。どうやらボスを倒すことができたのだろう。それにしても今回のボス戦は疲れたし、振り返ると危険な場面は多く、甘かった部分も多かったと反省する。油断していなくとも今回は死にかけたから今後はより一層気を引き締めていこうと思う。死にかけたり危ない橋を渡っていたのはわかっていたが、私の心は高揚していた。そしてまた同じことを繰り返すのかもしれないとも思ったがそんなことはないないと思考を放棄した。


戦利品を見てみようと、宝箱を開けてみるとオーブと短剣が入っていた。オーブに触れると、このオーブがステータスにおける名前変更ができるオーブだということが分かった。そして短剣を持つとどこか心地よい気分になっており、その理由はこの短剣が聖魔法の効果を大幅に強化するからだということが分かった。聖女である私にとって聖属性は心地よいものという風に知覚されるらしい。


宝箱を回収するといつも通りの魔法陣と次の階層へと進む道が現れた。このボスを倒しても続きがあるのかよと内心悪態をつきながらもとりあえず今日は帰ることにした。いつも通り魔法陣に乗りダンジョンの入り口へと戻ると偶然5人組のPTと遭遇することになったが、隠密を発動していたおかげで私のことには気が付いていないようだった。この人気が出ないと思っていたダンジョンにもついに人が来るようになってしまったのか?と思うとすこし憂鬱な気分になったが、入れなくなるほど人が多くなる前にこのダンジョンを攻略してやろうと決心した。


いつも通り、コンビニにおいていた自転車をとり帰宅する。すると母が普段と変わらず優しい声で「おかえりなさい」と出迎えてくれたが、その瞳にはかすかに涙が浮かんでいるようだった。私は、部屋に戻って携帯で情報を集めようと思いつつもベットに寝転ぶと想像以上に疲れていたのだろうか?いつのまにか寝ていた。


気が付けば夕飯の時間となっていた。何度か母が呼びに来たようだったが起きなかったで母からメールが送られていた。メールを確認すると先にご飯を食べているとのことなので、私はリビングに向かうとそこには両親がそろっていた。今日の夕飯は僕が好きなビーフシチューだったのでほほを緩めつつスプーンを手に取り食べ始めた。やっぱりシチュー大好き!とぱくぱく食べ進めていたのだが、両親の箸が進んでいないどうやら何か私に話があるようで注意してみてみると私のほうをチラチラ見ながら何かを言おうとしては声が出ないそんな様子だった。私は「どうしたの?」と聞くと、母に「あなたこそどうしたの?今日服がバッサリと切れていたわよ」と言われ焦った。これは、ダンジョンに行ってることがバレたのだろうそして、服が切れているのはダンジョンで攻撃を受けたからだということを察しているのだろう。


場が凍り付いたかのように静まった。父が口を開く「今までダンジョンに行っていたのだろう?昔から武道に興味があったのは知っているから腕試しがしたい気持ちがあったのはわかる。でもお父さんとお母さんにはおしえてほしかったな。」という。


どれぐらいじかっがったただろうか?言いたいことはいくらでもあるのに考えがまとまらない私は、「ごめんなさい。お父さんの言う通りダンジョンに興味があったからダンジョンに行ってた。そして高校は、ダンジョン高校に行きたいと思っている」と私の意志を初めて告げた。


それからいろいろと話し合った結果、ダンジョン高校に行くことを認めてもらうことができたが週に1度どんな生活をしているのかメールをすることそしてつらくなったらいつでも帰ってきていいよということを伝えられた。ダンジョン高校は、東京に作られる予定で実家から通うことは無理だから寮に入る必要がある。だからいろいろと大変なこともあるのだが、まずは合格しないと始まらないのでどのような試験形態になっているのか一度じかんがあるときに調べてみることにした。その前にステータスを確認すると、



レベル 48

職業 聖女


HP 2800

MP 5300

力 320

知力 350

身の守り 192

魔力 570


Skill

剣術Lv4 隠密Lv7→8 投擲Lv4 光魔法Lv1 聖魔法Lv6→8 聖女の祈り


というようにかなりレベルも上がりスキルのレベルも上がったと思う。使える魔法も増えて「エクスヒール」、「サンクチュアリ」を覚えた。エクスヒールは、生きてさえいれば回復させることができるらしい。「サンクチュアリ」は自身を中心に半径10メートルの聖域を展開し、モンスターからの一切の攻撃を通さない結界を創造するようだ。どちらも強力な魔法ではあるが消費MPが500と1000でとてもじゃないが連発することはできない。エクスヒールは、今でもハイヒールで間に合っているので回復手段として使うことはまずないだろうが、攻撃手段としては試してみる価値があると思うので一応頭の片隅に置いておくことにする。


また、サンクチュアリは強力そうに思えるがコストが重すぎるという事、私が聖魔法、光魔法しか使えないので攻撃手段にかける事が挙げられるので、扱いづらいかもしれないと思う。それは、結界の中からは魔法攻撃のみができて物理攻撃は結界に阻まれてしまうからだ。本来であればPTを組んでいたりすれば体勢の立て直しなどに便利な魔法なのかもしれないが、基本的に私が使うことはこれまたないと思う。


さて、ステータスの確認も終わり、新しい魔法もどんなものかわかったところで今回ドロップした短剣について少し考えたいと思う。今回ドロップした短剣は、聖属性魔法強化効果があるがまずは、どのくらいの効果があるのか知る必要があるのと、手に持っていなければ効果が発動しないのか?それとも身につけてさえいれば上がるのだろうか?これは大きな違いになるので今確認しようと思う。まず、手に剣を持った状態でハイヒールを自身に打つ事で試してみると、回復魔法は回復したい部位あたたかな光?のようなものに包まれていつのまにか回復するのだが、今回の場合その暖かな光の感覚が全身を包みかつ今まで感じたことがないほどの安堵感を与えてくれる。なるほど、これはハイヒールだがどんな怪我を負ったとしても回復し切れるのではないか?と思わせてくれるのであった。それから剣を鞘にしまい腰から下げてみたところ、強化効果は乗ることがなかった。それから暫く色々試したが、どうやら剣に触れている必要があるようで触れてさえいればどのような形でも強化が入ることがわかった。


アンデッドダンジョンでは、この短剣をメインとして装備し魔法で戦うことにする。他のダンジョンではいつでも手に取れる位置に装備しておくことに決めた。これほど強力な強化効果を持った武器を失うのが嫌だったので、この短剣本体で物理攻撃をすることは余程のことがない限りないと思う。


翌日。今日は平日で、普段通り午前は学校もあるのだが休むことにした。それは、アンデットダンジョンを完全攻略を目指すためである。今を逃しては人が増えて入りにくくなるかもしれないので、可能な限り早く攻略したかったのである。


いつもと同じ道のり、方法でダンジョンに向かう。すると、前回最後に鉢合わせになりかけたPTとべつに他のPTが仲良さそうに話し込んでいた。よくないこととはわかっているが、情報収集のために隠密を使い話を盗み聞きすることにする。


どうやら、アンデッドダンジョンはモンスターの数が多いらしいのと、5層のボスが巨大なスケルトンで打撃にめっぽう弱いことから、1〜5階を周回するのに向いているらしい。加えて他のダンジョンでは、探索者が増えすぎてリソースの奪い合いが起きているらしい。どうやらゴブリンなどであれば簡単に倒せる事、そして実入が良いことが世間に広く知られることになったようだが、そんな新しく探索者となった人たちの中でボスに挑む人は少ないらしい。どうやら彼らは副業として探索者をしているらしいので、危険を犯す必要はなくそれなりの金額を稼げれば満足するからなようだ。


他にも聞き耳を立てていたら情報は、落ちるかもしれないがダンジョン攻略が優先だと思い先に進むことにした。




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