第5話 鍛錬
翌朝目を覚ましたのちに、まずニュースを見ることにした。すると、ダンジョンの入り口のもやもやが大きくなっている現象が全世界で確認されたらしい。特に中国では、全体の約半数が拡大しているらしい。それから、日本政府の発表によるとダンジョンのことを学ぶ学校を作ることに決めたらしい。また、ゲームに倣って探索者組合という組織を立ち上げることにしたらしい。それに伴って探索者には、専用アプリのインストールそれから、自身が探索者であることを報告、登録する義務付ける法律が作られるらしい。確かにレベルが上がったものは、身体能力が何倍にも上がるし、私が拾ったアイテムボックスに似たものや同じものを持っている人もいるだろう。これらが犯罪に使われたりしないようにも必要なことなんだろうと思った。
私はしばらく、魔法の練習件アンデッド系モンスター克服のために墓地のダンジョンに潜ることに決めた。早速ダンジョンに行こうとしたら母に止められた。どうやら学校の再開にめどが立ったらしい。1週間後から授業を再開するらしいが授業は午前まで、足りない授業数はオンラインの授業で賄うらしい。
今日も昨日と同じく、コンビニで自転車を止めてお昼ご飯と水を買ったのちにダンジョンに入る。中に入ると昨日と変わらず1階にはスケルトンがいた。とりあえず「ハイヒール」と唱えるとスケルトンは消えた。今日は走りながら魔法を使えるようになること、聖女の祈りをもっと早く反射的に使えるようになることを目標にしてこのダンジョンに挑むことにした。
このように毎日レベルを上げること、弱点を克服することに集中していたら気が付けば、それから5日が経過していた。この5日で走りながら魔法が使えるようになった。また、聖女の祈りの発動速度は反射で使えるとまではいかないがすぐに使えるようにはなっていた。また、アンデッドに対してもある程度慣れてきたのかグールに対しても聖魔法で攻撃できるようになっていた。それからダンジョンの探索も行っておりついに5階層へと続く階段を見つけていた。ちなみに、3~4階層は1~2階と変わらずグールとスケルトンしか出てくることはなかった。そんなわけで今までのダンジョンと比べて攻略スピードは落ちているかもしれないが順調に攻略は進んでいるといっていいだろう。
今日は、5階層以上を目指すことにしていた。5階層についてしばらく歩いていると、ボス部屋が現れた。ボス部屋についたが、これまでの探索では魔法だけで簡単に倒せたこともあって、疲れはたまっていないし、MPも十分に残っている。なのでそのままボスに挑むことにした。
ボス部屋に入る。しばらくたつと魔法陣が光りだしてボスが現れた。どうやらボスは、巨大な骸骨であった。ボスが出てきてすぐに「ハイヒール」と私は唱える。すると瞬間ボスの体は霧散した。あまりにもあっけない幕切れである。しかし、宝箱は出現しているから倒せたのだろう。とりあえず、宝箱を開くことにする。中には短剣が一本だけ入っていた。その短剣を手に取ってみると、どうやらこの短剣は火を操ることができることがわかった。しかし、私には無用の長物であった。
いつも通り、魔法陣が現れると同時に次の階に進む扉が現れた。ボス戦中にはなかったはずなのに、突如現れた扉に驚きつつもボス戦が呆気なかったこともあり、次の階層に進むことにした。
6階に降りてみるとそこには、レイス、幽霊とでも呼ぶべきモンスターで溢れていた。私はまた声が出なるのではないかと思ったが、どうやら声は出せるらしい。怖いことに変わりはないが多少は耐性がついてきたと言っても良いのかもしれない。6階からは、1〜5階と違いモンスターの数が桁違いに多い。レイス自体は、目があるように見えるが、目が見えている様子はなく、どこか感覚に頼っているようだった。しかしその感覚はかなり鋭敏で、正確にこちらに対して魔法で攻撃してきているのである。レイスが使ってくる魔法は、火の球を飛ばしてくるのと、ゴルフボール程度の氷を飛ばしくる攻撃をしてくる。どちらも当たっても致命傷にはならないが、火傷はするし、怪我はすることは明白だから避けている。因みにレイスの魔法を避けるのは簡単だった。それは、動いていればまず当たらない。偏差撃ちをしてくる個体は今のところ存在せず、動きながら魔法が使える私にとっては脅威になり得なかったのだ。
6層にいる魔物の数に圧倒されつつも、探索を続けていたら次の階層へと進む階段を見つけた。ステータスを確認したところ、MPのうち8割を使い切ってしまったらしい。何も考えずに魔法を使いすぎたのかもしれない。とりあえず今日は帰ることにする。それからMPについても、どれぐらいの時間で回復するのか、戦闘中に残りのMPを確認する方法を確立しなければならないとも思う。
とりあえず、隠密を使いつつ帰ろうとしたところ、レイスから魔法が飛んできた。当たる寸前のところで避けたが、どういう事だろうか?レイスたちには隠密が通用しないらしい。常時動いていたら当たらないことはわかっているため、上の階に上がる階段を目指して全力で駆け出した。しばらく走っていると階段を見つけられたので、素早く階段を駆け上がる。
5階層に戻ると、ボスは出現することはなかった。そこにはただ、魔法陣だけがあるようだった。とりあえず、今日帰るのが良いだろうと思い、魔法陣に乗ることにする。体が淡い光に包まれ、一瞬閃光が走る気がつくとダンジョンの入り口にいる。これまで何度か経験している魔法陣による転移だが、どうも慣れない。地上に戻ると、ちょうどお昼どきであったのだろうか?お腹がぐぅ〜となる、誰が聞いてるわけでもないのに何故だか恥ずかしくなってしまった。
お昼ご飯用にコンビニ弁当は買っていたのだが、帰り道の途中にあるカレー屋からあまりにも良い香りがしたため、よって行くことにした。どうやらカレー専門店のお店らしく、日替わりでいろいろなカレーを提供しているお店らしい。店長曰く、うちのカレーは日本一らしい。大体、お店に行けば日本一や、世界一と謳ったお店は多いが、実際にそこまで美味しいとは思えないものも多かったというのが、前世からの経験で知っていた。今回もそんな気持ちで、あまり期待などはしていなかったのだが、目の前にカレーを出された時、我慢できず早速スプーンを握り一口いただくことにした。日本一かどうかはわからないが、今まで食べてきたカレーの中で1番美味しかったのは事実だろう。無言で食べ進めていくといつのまにかお皿は空になっていた。すごい満足感だった。また来ようと私は心に誓うのであった。
お昼ご飯を食べたのち家にかえることにした。それは、もうすぐ学校が始まるから準備をしないといけないということもあるし、考えておかなければならない問題点もあったからだ。それにしても、ダンジョンにこれから行きますっていう集団や、ダンジョン帰りの集団が目立つ。多くの場合は、男性のみのPTが多いのだが、女性のメンバーがいるPTや、女性だけで構成されたPTもあるようであった。世間は、私が考えている以上にダンジョンブームなのかもしれない。
自転車を漕ぎ帰路に着く。やがて自宅が見えてきたので、いつも通り自転車を止めて家に入る。そうしたら、母が「おかえりなさい」と出迎えてくれる。それに私は、ただいまと返す。こんなありふれた日常がどこか嬉しく感じる。
それから、両親が共に暇そうにテレビを見ている際に、今まで習ってきた古武道を辞めたいと伝えた。ダンジョンに潜るので時間が取れないからだ。両親もダンジョンによって考えが変わったのだろうと、特に何を聞くわけでもなく私の話を聞いてくれた。実は、剣道を辞めたいと言った時には少し揉めたりもしたから、今回も何か言われるのではないかと覚悟していたのだがそれは、杞憂に終わったようだった。
私は、部屋に戻り戦闘中にどうやってMPを確認するのか、レイスは何によってこちらを索敵しているのかについて考察してみた。まずステータスを確認していると、HPとMPだけの表示にすることができることに気がついた。これを常時開いたままを維持できれば、今までより戦闘は安定するようになるだろう。これは意識的に訓練に入れるようにする。
次に、レイスだが、彼らは魔力に反応しているのではないかと思っている。超感覚的なもので反応している割には、偏差撃ちができないことに疑問が残るから、魔力を直接見ることができて、それでこちらを視認しているのだろうという考えである。魔力が見えるとしたらそれはどうしても手に入れたい能力だから、レイスたちと戦いつつどやって使っているのかを観察することに決めた。
それと分かったことがある、MPは休憩したりせずとも1分に1パーセント回復するようだった。試しにベットに寝転んで、違いを比較してみたが変わりはなかったので時間経過しかないのだろうと考察した。
翌日以降も学校が始まる前日までは、同じダンジョンに潜り続けた。その結果だいぶレベルは上がってきたと思っている。今のステータスはこんな感じだ。
レベル 36
職業 聖女
HP 2200
MP 4100
力 260
知力 300
身の守り 150
魔力 410
Skill
剣術Lv4 隠密Lv5→7 投擲Lv4 光魔法Lv1 聖魔法Lv3→6 聖女の祈り
ステータスはだいぶ上がったと思う。やはりステータスを上げるのが一番効率よくレベルを上げることができるのだろう。私は、他の探索者たちがどれほどのステータスを保持しているのか気になっていたが、知ることはできないだろうから考えるのをやめた。それにしてもスキルレベルはどこまで上がるのだろうか?わからないがあげれるだけ上げたいと思った。ちなみに隠密は、家にいるとき以外常時発動するように心がけるようにした。ソロでダンジョン探索を行っている私にはデメリットがないため、可能な限り使用しているのだがかなりレベルが上がっただろう。唯一の課題としては、走りながら魔法を使うとそちらに集中し切ってしまい、隠密が解除されることがある事だ。ステータス外の話では、戦闘中に隙をさらさずに魔法が使えるようになったこと、そして戦闘中でもHP、MPを常時視認できるようになり安全マージンも格段に上がったといえるだろう。
そして学校が始まってしまった。学校がある日はダンジョンに行くのは難しかったため、スキルの特訓と自己研鑽に使い土日はダンジョンに潜る生活を続けていた。そんな生活を続けているうちに1月の時間が経過した。そして世界を揺るがす大事件が起きたのであった。
その日もいつもと変わらないよく晴れた朝だった。ニュースで中国が大々的に放送されていた。どうやら、中国のダンジョンの1つが崩壊し、モンスターが地上に出てきてしまったようだった。中国は政府の立場として、民間人に力を与えることを嫌ったこと、魔石という資源を半国営企業で独占するために軍隊のみがダンジョンに挑むことを許されており、許可なくダンジョンに入ったものは実刑が課されていたという。そこまでして市民に力を持たせたくないのか?とは思うが、前世でも力を持ちすぎた企業に強制介入をしたりしていたことを思い出すとなんとなく納得してしまった。今回のダンジョンからの氾濫は、連鎖的にダンジョンの崩壊を呼びかなり大規模のものになっているようで、中国では軍隊を総動員して対応に当たっているようだがどうもうまくいっていないようであった。
こんな事態であるから日本でも、学校や会社などは休みとなり必要最小限のインフラ関係者のみ外出するような感じになっていた。それから中国は自国だけでは対応できないことを認め他国に協力を求めたこの際に結ばれた約束として、ダンジョンの国際的枠組みに加入しそこで決められたルールを順守することを誓ったらしい。
それからしばらくしたのちに、探索者ギルド作成と、世界基準の探索者に対する国際条約が結ばれ、ダンジョン研究により一層各国が取り組んでいくようになったのであった。
日本でもダンジョン高校とも呼ぶべき学校が設立することが決まり生徒を募集しているようだった。探索者クラス100名、技術者クラス50名と非常に少なく倍率も上がることは予期されたが、生徒5名に対して教員が2人つくことや、学費無料などという言葉につられてより一層入学希望者は増えたらしい。ちなみにダンジョン学校を作ったのは日本だけではなく世界的に各国で作られているらしい。今はまだ実験的な範囲を出ないため、あまり多くの人を募集していないようだが将来的にもっと多くの人を募集していくと政府の発表があった。
この発表を見たとき私も高校は、ダンジョン高校に行きたいと思い両親を説得する言葉を考え出すのであった。
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