第5話 救助隊、登場
(このままにしておこう。それが一番いいのだ)
男は手にしていた石を遠くへ投げた。
「ん?」
男は遠くに動く影を見つけた。
影は男をめがけて近づいてきているようだった。
「大丈夫ですかー!」
「!」
男が振り返ると、救助の者たちが手を振りながらこちらに向かって近づいてくる。
男にはそれがひどくゆっくりと見えた。
「助かったのか・・・」
男はその場にへたり込んだ。
自然と涙が流れてくる。
助かったのだ、これで星に帰ることができる。また家族に会える。
「見つかって良かった。頑張りましたね」
救助士の説明によると、かなり長い時間を一人で過ごしていたようだ。
「そんなに長い時間には感じなかったけどな」
その時男は気が付いた、自分がスイッチに気を取られている間に時間が経っていたようだ。
(このスイッチに助けられたか)
咄嗟にこのスイッチについても報告しなければならないと思った。
「あの、こんなものを見つけたのですが・・・」
男は例のスイッチの箱を見せる。
「あぁ、これですか!」
救助士の男は驚く様子もなくヒョイと箱を受け取った。
「何か知っているんですか⁉」
「えぇ、役立ってよかったですよ」
「これを押すと、いろんなことが起こるんですよ・・・! とんでもない発明だ!」
必死に説明する男の話を聞いて救助士は高らかに笑った。
「このスイッチは我々が置いておいた宇宙スイッチです。今回のように遭難した人が救助される時間が長く、気が狂ってしまうことを防ぐために設置したんですよ」
救助士は受け取ったスイッチの箱をその場に戻した。
「このスイッチがあると押すかどうかで迷い、押して何が起こるのか考えるでしょ?」
男は自分の行動を振り返った。
「確かに起きている間中考えていることはこのスイッチのことだけだったが・・・」
「このスイッチ押しても何か起こるようなことはないんですが、広い宇宙です。押せば何かしら起こります。良い時間つぶしになったでしょう?」
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