第2話 星の外とスイッチ

 船の外は未知の世界。何があるのか、どんな危険があるのかさっぱりわからない。



 見渡してみると、延々と荒野が広がっていた。大小さまざまな岩。乾いた土地、男の常識ではおおよそ生き物は生息できないだろう環境。



 男は一歩踏み出し地に立った。



 やはり不思議と怖くなかった。死を覚悟していたからかもしれない。


 

 不時着の衝撃で壊れてしまったのかもしれない。



 とにかくズンズンと進んでいく。





 不思議と頭の中はすっきりとしている。当てもなく進んでいく。



 生物がいるような気配はない。



 あるのはどこまでもごつごつとした岩が転がっているのみ。



「?」



 少し進んだ先で男はあるものを見つけた。



「何だ、このスイッチ達は」



 箱に様々なスイッチが配置されている。



 記号が入ったスイッチ、様々な色のスイッチがある。



 何者かが意図的に置いたのであろう箱。



 男はあたりと見まわす。



 誰かに見られていることないはずである。



(一体これは何なんだ)



 男は箱を持ち上げる。ズシッとくる重さ。密度が高い。



「押してみるか・・・⁉」



 おもちゃに違いない。しかし誰もいないこの土地で、誰がこんなことをするのだろう。



 絶対押してはいけないという感覚を得る。



 しかし押してみたい、押したい、そんな好奇心が男の心を支配していく。



 このボタンを押せば何が起きるのか。



 男の指がスイッチに近づいていく。中央のボタンに指を置く。



「いやいや何かわからないモノを無暗に触ってはならないだろう!」



 男は指を引っ込める。



 この箱がここにある意味を考えてみる。




「これはまさか宇宙人が使うものではないのだろうか。彼らがこの星を滅ばすために置いた兵器とか、兵器のリモコンかもしれん! となると、この星が何もないのはもしかすると宇宙人が仕事を終えた後の状態なのではないだろうか?」




 もともとこの星は生物などに溢れた生きた星だったのではないか。



 それがこのスイッチ兵器によって滅ぼされ、死んだ星になってしまったのではないか。



 想像力を働かせて考えてみる。




 何もない星でこのような人為的に作られたとしか思えない物があるのは明らかにおかしい光景である。



 誰かがここに来たことがあるのだ。



 誰かが置いたのだ。



「・・・」



 本当にそうだろうか。



 確かめるには押すしかない。



 押すしかないのだ。



 それにはかなりの勇気が必要だ。



 どうすべきか、男は迷った。



 そこに随分と時間を費やした。



 ボタンに触れては止め、触れては止めた。



 思考は完全にこのスイッチに支配された。



 しかしここで押すのはあまりにもリスクが高すぎる、と男は思いとどまった。



 とりあえず男はスイッチの箱をその場に残し、宇宙船で休むことにした。



 緊張していたが、空腹だった。



 しっかりと食事をとり、すぐに眠りについてしまった。


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