第12話 少し自重しよう・・・

ふふふ・・・、毎日がこんなに楽しいなんてね。


このサイズでアレンの頭の上に乗っているのは最高!

本体の妾だとこんな事は不可能だからな。

しかも!

子供のアレンもなかなか妾の好みだよ。別に妾はショタじゃないからな!

そこはハッキリと言っておくからな!

アレンは小さくても、あの時の妾を倒した大人のアレンもどっちも好みだ。

いや、アレンの全てが好きだ!


『こら!』


チッ!本体の妾からの呼び出しか。

仕方あるまい、呼び出しには応じないとな。まぁ、拒否しても強制的に召喚されるから妾も拒否権は無いのだが・・・



「どう?アレンの調子の方は?」


本体が不機嫌な表情で妾を見ている。

確かに本体は直接アレンと触れ合う事も会話をする事も今は無理だしな。

その分、この妾が本体の分も合わせてアレンに付きっきりなんだけど、これは仕方あるまい、本体よ、もう少しの辛抱だ。


「ふむ・・・、今のところは順調に成長しておるな。しかし歳も歳だし急激な成長はアレンの為にならん。今は徐々に基礎を整えている段階だ。」


「なら問題はないな。こちらは元が魔王だから、今の時点では妾はアレンよりも少し先の段階だろう。しかし、人間の体は不便よの。魔王としての力を存分に使えぬというのは歯がゆい。それに今は妾も派手には動けん。後2年は大人しくしていた方が良かろう。アレンが言っていた例のアレが起きる時には妾も参加出来るようにしないとな。父にもそれとなく頼んでいるし、5年後に会える時が楽しみだ。ふふふ・・・、その時は妾は我慢出来るか?押し倒したりはしないだろうな?いや、やっぱり押し倒す!そして正式にアレンを妾のそばに置くのだ。誰にも文句は言わせないからな!」


本体よ、その怖い表情は分身である妾でも少し引くぞ。

その気持ちは妾も分からんでもない。

ただ、今の分身の妾は『常』にアレンと一緒にいるからな。アレンは気づいていないだろうが、24時間ずっと見ているぞ。


「おい、そこまで妾はストーカーなのか?分身とはいえ、妾と同じ思考だからアレンが大好きなのは一緒だが・・・、さすがにこの妾でもお前の行動は引くわ。」


本体よ何を言っている?

妾の行動は本体の妾と同じなんだぞ。本体がアレンと一緒になってからもストーカーは変わらないだろな。いや・・・、本体はずっと会えない日々もあるから拗らせている可能性が高い。


チラッと本体と目が合ってしまった。

お互い考えている事は筒抜けだと分かっているが、こうして目を合わせると恥ずかしい。

本当にかつての妾からだと考えられないほどに自分が女だと意識しているとは・・・

それにこんな小さな体でもアレンは妾の事を女と意識しているようだしな。

視線が妾の胸に集まっているのは時々感じるぞ。

妾はもうアレンの女なんだし、この小さな胸も触らせてあげても良いのだが、肝心のアレンは今のところは全く手を出してこない。

体は5歳児だろうが精神は立派な大人なんだし、興味はあるようだからちょっとくらいなら許しても良いとは思うが・・・

それでも手を出してこないアレンは生真面目だな。それが尚更妾の気持ちをキュンキュンさせてくれる。


う~ん・・・


妾の周りにいた男どもはアレンと比べると・・・


「北の魔王ゴーリキ」

こいつはまさに下半身に脳味噌が付いているような年中発情期のような魔王だったな。

コイツのダンジョンはオークやオーガなど女とみれば見境なく襲ってくるやつばっかりだったから、女勇者達の間では絶対に行きたくないダンジョンだと言われていた覚えがある。

見た目も大きなゴリラだし、いつも妾をあのゲスな目でジロジロと見られていたから気持ち悪い以外の感情はなかった。

魔王同士はお互いに戦えないとの制約がなければ確実に妾が殺していただだろう。


「東の魔王マーモン」

あいつはいつも無表情だし、妾でもあいつが何を考えているか分からん。

まぁ、あいつ自身がアンデッド族の王なのもあるけどな。

アンデット自体が性欲なんて存在しないし、妾に対しても何の感情も持っていないかもしれん。

万が一あいつに感情というもがあればなんだが、あの姿を見る限りはセドリックの忠実な人形、それ以外には考えらないだろう。


「西の魔王マルガリータ」

見た目は12、3歳くらいの可愛い女の子だが、実際の中身は男!

女装が趣味みたいだけど、妾とっては異性として認識は全く無い!

そもそもアレは論外!


おや?


妾の周りの男どもはまともな奴はいなかった?


それよりもだ!5000年以上も生きていて記憶にある男は妾以外の魔王3人だけ?



「そ・・・、そんな・・・」



ずっとダンジョンに引きこもっていた結果がこれ?

これじゃ、妾も男というもの知らない訳だな。

妾のダンジョンは部下のリリスを除けば全てリビングアーマーのような魔法生物や魔獣で、性別云々以前の問題だったわ。


あの後のリリスはどうなったかな?

妾は職場放棄をしたようなものだし、彼女が南のダンジョンの魔王として君臨しているかも?

もしそうなら、セドリックを倒した後は迎えに行ってもいいかもしれない。

根は真面目な奴だから妾が生きていると分かれば喜ぶだろう。

残念ながら今の本体の妾では年齢も年齢なので、いくら貴族の子供だろうがそこまでの情報が入ってこない。

この件に関してはもっと成長してから情報を集める事にしよう。


この5000年の間に周りにまともな男がいない現実に、ガックリと体中の力が抜けてしまったわ。


(ん?)


ふと、隣を見ると・・・


本体の妾も絶望的な表情で床に突っ伏していた。


(その気持ちは良く分かる。)


時々、依り代に憑依してダンジョンの外に出て人間の街を見て回った事もあるが、記憶に残るような男はいなかったな。

まぁ、しつこくナンパしてくる馬鹿な男はいたが、そいつらはもれなく壁の染みにしてやった。壁に残る血の染み以外は骨すら残さず押しつぶしてやったから、簡単に行方不明者の出来上がりだ。

妾にはグロリアのようにちょっとでも気に入る男がいればホイホイと男と一夜を共にするような性癖もないからな。

あのグロリアは種族がサキュバスだけあって男と寝るのは食事の一環でもあるから、誰とでも寝るのに抵抗が無いのは分かる。

だからといって、あんな尻軽女は絶対に認める事は出来ない。


そう思うと、アレンが妾の前に現れたのは運命かもしれん。

ダンジョンの管理者という牢獄に5000年以上も繋ぎ止められていた妾を解き放ってくれたのだ。


最初の出会いは一切の妥協も無い殺し合いから始まったけどな・・・



アレンとの本気の切り合い

圧倒的に妾が優位だったのに恐るべき速度で成長するアレン

その時のアレンの真剣な表情

そしてとうとう妾を追い越してしまったアレン

妾が女だと知ったアレンの驚いた顔

籠の鳥の境遇の妾に涙を流してくれた心優しいアレン

魔王の妾を『いい女』と言ってくれたアレン


そして・・・



アレンと妾の初めてのキス・・・



あの時の事は今でも忘れない。

死の淵にいた妾が初めて抱いた生きていると思った実感、そして女として生まれて心から良かったと思った瞬間だった。


後にも先にもアレン以外に最高の男は絶対にいないだろう。



だから・・・



アレンよ、必ず妾を幸せにしてくれよな・・・






そういえば・・・


アレンに悪い虫が付かないように目を光らせているが、少し気になる事があった。今のところは鍛錬に集中しているし、あまり村の子供達とは交流が無いのが現状だ。

いくら強くなりたいとはいっても、少しストイックな気もする。

それに中身も実質20歳以上の大人だし、周りの子供達とは精神年齢的にも合わないのもあるかもな。


だけどなぁ~


やはり今のアレンは子供なんだから子供らしい事もして欲しい。

決して子供らしい可愛い仕草をしているアレンを見たいといった訳ではないからな。

そこは間違えないでもらいたいな。


「ん?」


本体が妾をジト~~~~~~とした目で見ているが何で?


「まぁそういう事にしておこう。」


そう言ってニタリと笑っているよ。


(バレているな。)


妾と本体は一心同体だし妾の事は全て筒抜けだ。

それは逆も同じで本体の行動も妾は分かっている。


「お前はアレンが寝ている時に何をしているか全部分かっているからな。」


そう、妾が夜な夜なアレンにしている事が筒抜けだった。


それには理由がある。

本体がアレンと行動を共にするようになればこの妾の存在は本体に戻ってしまう。

だけどな、それまでの間、アレンを堪能したいではないか。

そしてこの体だから出来る事もあるしな。


今のアレンは精神はいくら大人でも体は子供だ。

親と一緒に寝るのは恥ずかしいからと言って、今では1人でベッドで眠っている。

子供の体のアレンは一度眠ると朝までぐっすりと眠って起きないんだよな。

そうなると、朝まで妾のご褒美タイムと変わる。

今の妾は魔力の塊のようなものだから睡眠も必要がない。

妾が主役の時間なのだよ。

朝までアレンの寝顔を眺め、時にはアレンの胸元に潜り込んでアレンに抱かれたり、アレンにこっそりとキスしたり・・・


思い出すだけでも顔が赤くなってしまう。



「おい・・・」



本体が妾をジッと見ている。


「我が分身ながら変態としか思えんぞ。魔王としての威厳と淑女としての嗜みをな・・・」


ふふふ・・・、本体よ、そうは言っているが、とっても羨ましそうにしているのは見え見えだぞ。

立場が逆になれば速攻で妾と同じ事をするだろうに!

妾の事は妾が1番分かっているからな。


しかし・・・


こうやって自分の事を客観的に見る事が出来るのは面白い。


妾のやっている事は相当に重いヤンデレだよな。

思い出せば思い出す程に恥ずかしくなって顔が赤くなってくる。

あまりやり過ぎてアレンに嫌われると大変だ。



少し自重しよう・・・




う~~~~~ん、無理かも?

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