兼村大和(21)
「んじ?大和ー誰から電話か?」
那覇空港の休養室で聡志は大和に聞いた。
「高校の時の友達。友達の中学校の時の同級生の彼女が行方不明になったって」
「あいやーでーじなってるなー」
「だからよーこっちも警察呼ばないとまずいかもしれないな」
「お父さん、警察呼んでも信じてくれるかな・・・・?」
「わからん。信じてくれんはず・・・」
「だあーるよな。急に消えたからやーあっお父さん、俺、その友達から新都心に来てって言われてから新都心に行かないといけない」
大和は休養室から出ようとした。
「えー大和ーこんな時に遊びに行くのか?」
聡志は休養室から出ようとする大和を止めようとした。
「違うよ。急に仕事の予定が入ったから仕事に行かないといけない。ごめんな」
大和は慌てて休養室から出た。
__________
休養室から出た大和は那覇空港内にあるモノレールの駅に行き、そこから乗っておもろまち駅に行った。
おもろまち駅に降りた大和は走って那覇新都心にあるセンタービルに行くと、なんとそこの駐車場には元毅の車が止まっており、元毅が車から降りていた。
「元毅ーどうした?」
大和は元毅に声を掛けた。
「大和ー翼ーも連れて来たよー」
元毅が翼に声を掛けると、車の中から翼が出て来た。翼はセパレートヘアーにオシャレな韓流ファッションに身を包んでいた。
「あっもしかしてソフト部のエースの兼村大和ー?」
翼はなぜか大和の事を知っていた。
「だぁーるけど、なんでわかる?」
「元毅ーから聞いたよーソフト部のエースだったて」
「えー元毅ー余計な事言うな!」
「だって本当の事やっしぇ」
「恥ずかしいから言わないで。んじ、翼ーなんでここにいるば?車はどうした?」
大和の問いに翼は口を開いた。
「俺、免許持っているけど、デートで運転しに来ていたのは俺の彼女。だから車は持っていない」
「はぁ、じゃあその車で運転してくればいいさー」
「それが彼女がいなくなった時に、彼女の親が美浜まで来て運転して行きよった」
「だからここに来たわけか」
「うん。彼女がどこに行ったか知りたいからよー」
「で、翼ー彼女の名前は?」
「知花蓮。男みたいな名前だけどよー」
「知花蓮・・・読谷にいそうな名前だな・・読谷出身か?」
「うん。俺と同じ読谷出身だよ」
「そっか・・・みんな信じてくれないと思うけど、俺の妹も
大和がそう発言すると、翼はびっくりしていた。
「えーそんな事ってあるのか!ってかお前のにーにーもそうだば?」
「そうだよ。俺のにーにーは中2の時、学校帰りに消えた。
気が付いたら『過去の時代』にいたらしい」
「大和ーぃやーのにーにーも過去に行った事があるわけ?」
元毅が大和に質問した。
「うん。1906年の沖縄に行ったらしい。多分、今回は1916年の沖縄に行ったんじゃないかな・・?」
「1916年、大正時代か・・・」
「うん。中学校の歴史の授業だとこの時代が1番眠くなるんだよな・・・高校に至ってはまともに勉強しないまま終わるしなー」
大和が呟くと、元毅が「だぁーるやー」と言った。
「はぁ?過去に行った?ふざけてるばー蓮は急にいなくなったんどー」
翼は大和達の発言が信じられなかった。
「俺も昔、にーにーが行方不明になった時は信じられなかった。警察がどこ探しても見つからないもんだからアメリカ―に連れて行かれたと思ったよ」
「大和ー俺も一瞬、思ったよ。
「だぁるやー翼ー俺達と一緒にビルの中に入らないか?」
大和が翼にビルの中に入らないかと誘った。
「え?大和ーや元毅ーなんかの職場に入るわけ?」
「実は翼ーに連れて行きたい所があるからさー」
「はぁ?」
翼は戸惑いながら大和や元毅と共にビルの中へ入って行った。
____________
ビルの中に入った3人はエレベーターに乗って4階にある大和達の職場に降りた。そこは至って普通のオフィスビルだが、廊下には白衣を着た人やスーツを着た人が行き交っていた。
「元毅ーなんかいっぱいるなーお前、嘉手納の老人ホーム辞めてこっちに就職したんだな」
「うん。今はこっちで働いているよ。介護の仕事は大変だからな‥」
「大変だよな‥介護は‥で、なんで俺をここに連れてきた?」
翼が大和や元毅に聞くと、大和は「実は翼ーに連れていきたい所がある」と言い、大和は元毅と共にある場所に案内した。
その場所は銀行や役所の受付のような場所であり、席には人が数人座っていた。
「大和ーここって?」
「受付する場所。そこに事務の人がいるから」
大和ーが受付の部署に指を指した。
「受付?何すればいい?」
「とりあえず、ここで入室許可証を出せばいい。翼ーみたいな一般は許可が無いと入れんから」
「許可が無いと入れんってぃえー大和ーなんかがいる職場ってどういう所?」
翼は大和や元毅に聞くと、2人はきまずそうな表情をしていた。
「あーあんまり言えんけど、実は俺達、『アルバース財団』って所で働いているわけよ」
大和が翼に「アルバース財団」という聞いた事も無い組織の名前を言った。
「『アルバース財団』?そんな組織聞いた事ないけど。なんかの会社か?」
翼はどういう組織なのかわからなかった。ただ「財団」とつくから利益を求めない「法人」なのかな?と思った。
「会社とはちょっと違うかな・・・一応、タイムマシンを開発している財団法人で、過去に行って漫画に出て来る『タイムパトロール』」
大和―が愛想笑いしながら話すと、翼が「はぁ?本当か?まさかヤ〇ザか半〇レのフロント企業じゃないよや?」と聞いてきた。
沖縄や本土の有名企業でも無い「アルバース財団」は翼にとってそんな風にしか思わなかった。
「それかカタカナだからカルト教団の・・」
「いや、カルト教団じゃないよ。財団の正式名称は『アルターネイトユニバース財団』と言って意味は『パラレルワールド』って意味らしい」
「はぁ?やっぱりカルトかなんかだろ?えー
翼はなぜ、2人が転職したのかわからなかった。
「俺は元毅ーと違って転職じゃなくて財団のフロント企業である整骨院で働いているよー」
「フロント企業ってやっぱりヤバいところだろ。とりあえず、受付にいけばいいんだろ。受付したら俺の家族と蓮の家族に連絡するよー」
翼は2人を疑った目で見ながら受付の方に進んだ。
「おい、大和ー翼ーが受付に行っている間に俺達、仕事に行こうぜ!機動部隊の仕事」
元毅が大和に言うと、「待っとけ、翼ーの所にいこうぜ」大和は翼がいる所に行った。
受付に行くと、女性が「あの受付ですか?」と柔らかい口調で尋ねてきた。翼は「はい。入室許可書をお願いします」と答えた。すると、受付の女性が「ではこちらをどうぞ」と首から下げる名札とマジックペンを出した。
「こちらに名前を書いてください」と受付の人に言われると、翼は名前を書いた。
「んじー翼ーそんなに悪いところじゃなかっただろ」
元毅が笑いながら翼の肩を置いてきた。
「えー!今、受付中だから。あの、実は彼女が急に行方不明になったのでその情報はありませんか?」
翼が受付の女性に聞くと、「行方不明の情報ですか?行方不明の情報ならこちらにありますよ」と紙を渡した。
その情報には未来や蓮を始めとする数人の行方不明の情報があった。
「大和ーこれ、お前の妹じゃないか?」
翼が兼村未来(16)と書かれた紙に指を指すと、大和が紙を見て「だぁーる」と呟いた。
「じゃあお前も探しに行くば?」
「うん。元毅ーと一緒に行く」
「まさかタイムマシンに乗ってな?だったら俺も行かせてくれ」
翼は2人と共に過去に行って欲しいと頼んだ。
「無理。お前と一緒に行けない。これは俺なんかの仕事だし元毅ー行こうぜ」
「うん」
と言って2人は翼の元から去って行った。
「えーじゃあ俺は待たされるのか・・・あの、2人の職場の中って行くことができますか?」
翼が受付の女性に聞くと、受付の女性はパソコンのキーボドを打ちながら「お2人の職場ですか?残念ながら一般の方は入る事が出来ません」と言われた。
__________
大和と元毅は立ち入り禁止と書かれた扉に入ると、そこには地下まで続くタイムマシーンを保管した巨大な施設が存在していた。
すると、向こうから1人の男が2人を手招きしていた。
「おい!兼村!比嘉!来い!機動隊の仕事が来たぞ!」
「十文字さん!今すぐ行くから!」
2人は走って施設の中に入った。
施設の中に入った2人は私服からダイビングスーツのような黒の特殊スーツに着替え、十文字がいる場所に集まった。
そこには大和達と同じ服装をした男女が数人おり、中にはビジャブを被ったムスリムの女性やターバンを被ったシク教の男性がいた。
「えー今から機動部隊
オーパーツの隊長であるハワイ県系4世のリサ・イケバルが話すと、隊員達は「はい!」と答えた。すると、隊員の1人辺土名朝教は手を挙げた。
「あの、行方不明者が100年年前の沖縄に行ったという証拠はあるのか?」
朝教の質問にリサはこう答えた。
「他の機動部隊も各時代の沖縄に行っているが、例の行方不明者達はいない。恐らく100年前の沖縄にいるのが有力だろうと考えている」
「あの俺の友達も言っていましたが、タイムスリップじゃなくて何らかの事件や事故に巻き込まれたんじゃないかという声もありました」
元毅も手を挙げてリサに質問した。
「そっちも他の部隊が米軍基地と言った軍事施設を捜索しているが、彼らがいる証拠は無かった」
リサはタブレットを見ながら答えた。
「やはり100年前の沖縄にいるんだな。よし、我々もタイムマシンに乗って行くぞ!」
大和達は大型のタイムマシンに乗り込んだ。
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