百合ネコちゃんと百合ヤギちゃん

智bet

鏡を見て可愛いと思える自分と、魅力的な時間を過ごせる恋人、そして将来への不安を先送りにして得る根拠のない自信こそがいつの時代でもJKが持っておくべき三種の神器だと思うのです。


(生憎、私はJKとしてまだ未熟なので将来への漠然とした不安はたまに思い出してしまいますが。)


例えば可愛さの話をしますが、全身が主張の強い単色にして無彩色な真っ黒けの体毛を持つカシミヤの私にとってオシャレというものは衣服でするのではなく、小物でするものなのです。


黒を基調としたセーラー服に文字通り紅一点となる学校指定の赤いリボンタイ。


そしてちょっぴりここでひと工夫。


実は焦げない程度の強さでリボンにアイロンの熱をあてるとリボンに光沢が出てより艶のある赤に仕上がるので全身が真っ黒い私のセーラー服姿の中で一層映えるアクセントになるようにしています。


大人にとっての “いい子”は逸脱さえしなければ誰にでもなれますが自分らしい“かわいい子”になりたいのだとしたらほんの少しの創意工夫と“ずるさ”も必要なんじゃないのかなって、私は思うんです。


いつどんな形でどんな素敵な人との出会いがあるのかも分からないし、その時にいつでも勝負できる、自分の納得できる自分でいられるというのは自身とモチベーションに繋がりますから。


出会いの話をしましたが一応私には現段階で恋人がいます。


しかし青春の真っ只中にいるとはいえ私たち“高校生”にとって恋愛関係というのは必ずしも必要なわけではありません。


だけど恋人というのはあると嬉しいものの中ではやはり最たるものだと思うんです。


男女共学高に通う17歳の制服SJKからすれば尚のこと。


友達とどこかで遊ぶ方が、部活に全力を注いでいるから、来るセンター試験に向けて勉強を重ねているから、と言う方も多いことでしょうが心のどこかではどこからともなく自分を好いてくれる子が現れて、ロマンスに発展すると嬉しいだろうな。くらいに思っている方はどこの学校にも少なくないのではないでしょうか。


故にそういう子達が部活で、隣の席で、すれ違いざまでといった些細なきっかけで惹かれ合い世の中には今日も明日も新たな学生カップルが生まれていくわけでして。


“そしてだからこそ”、どこでも簡単に繋がれる出会いに恵まれたこの時代だからこそ、みだりに付き合ったりするのではなく1つの関係を大事にしなければいけません。


……ファーストキスってもっと慎重を期すべきことだったのです。


私はベッドとブランケットを2人で共有し、身を寄せ合うという事が肉体だけでなくどれだけの心理的接近を生むのかということをちゃんと考えておくべきでした。


それがたとえ同性間で…女の子同士であったとしても。


…あ、キスしちゃう。


と思った瞬間にはもう遅くて、去年の冬休みにどこにでもいる女子の私、シエルは隣のクラスのアビシニアン女子であるテトさんと“ファーストキスはいつ?”の問に対する回答に相応しいようなマウストゥーマウスのキスをしてしまったのです。


“してしまった”とあえてここで言うのはそれが故意というよりは半ば事故のような、互いが混乱のままにそれでいて互いを思いやろうとしたからこそ(私から思いやったと言ってしまうのはいささかおこがましいですが。)起こってしまった不可抗力のようなものであり、罪は無い、はず。


もしそれが罪だったのなら、私はそれから毎日のようにこの夏まで罪を重ね続けていることになるので累積した罪がもうすごいことになっていることでしょう。


ただただもったいなかったのはテトさんと恋仲になる前にキスをしてしまったこと。


でも、それがきっかけで私はテトさんと結ばれたとも言えるので世の中なかなか分からないものです。


そんな私の話です。





「ねえ、しーちゃん。」


あのキス、そして恋仲となってから半年後、テトさんは今日も学校帰りに私の部屋へ寄って一緒に手芸に興じています。


私は今年の夏にテトさんとお揃いで使おうと思って藁で編んだコースター、テトさんは浴衣を買ってもらった妹さんのために大きめの巾着袋を作っていました。


浴衣によく合いそうな、白い布地に赤い金魚の刺繍を施した巾着袋を完成させたテトさんが袋に紐を通し終えるとひと段落ついたとばかりに深く息を吐きながら私の膝へと頭を乗せ、“猫撫で声”を出しながら私を見上げます。


私に対するマーキングなのかそれとも生地の触り心地が好きなのか、学校指定のプリーツスカートに頭を擦り付けた後ぐいぐいと太ももの隙間へねじ込んですっぽりと埋まってくるのがテトさんがいつもする“かまって”サインなのでした。


「しーちゃん。」


テトさんが私の手を引くかのように呼びます。


というか頬を撫でてあからさまに誘ってくるのです。


私が彼女の夏の換毛期で薄くなり、より肉体そのものの柔らかさが感じられるようになった頬に両手を添えて顔をのぞき込みながら


「なんですか?」


と彼女に問いかけるとテトさんは言いにくいような照れたような、“意地悪”と言いたげな顔をします。


本当はテトさんがこの後何を言いたいのかは私も分かってはいるのですが、というより私だって“したい”のですがあえて言葉には出しません。


ヤギの瞳孔は四角くて感情の起伏が分かりにくいですから、あえて気付かぬふりをして思わず緩んでしまいそうな口元さえ引き締めておけば言い出すには恥ずかしいことを相手に言わせるというイニシアチブはこっちが握れるのです。


「…もう巾着袋できちゃったしそろそろ5時だけど夏だしまだ明るいしさ。」


「そうですね。可愛い巾着袋、妹さん喜ぶと思います。」


「あんまり早く帰ったらまた、チビちゃん達の相手しなきゃだし。」


「テトさんはえらいお姉ちゃんですね。」


「しーちゃんのお母さん、そろそろ帰ってくる?」


「…多分、まだ。」


そう言って私はつう、と彼女の程よく膨らんでいる唇に触れるか触れないかのフェザータッチで焦らすように撫でます。


テトさんの唇を触りながらしばらく無言の時間が流れ、窓の外の蝉しぐれがやたらと耳に入ってきて部屋の中はクーラーを効かせているのにも関わらず制服の下は汗でじっとりと濡れていました。



ネコとしての習性なのかそれとも、“テトさん自身”

の意思なのか、彼女を誘うように唇を撫で続ける指をテトさんは今にも噛みつきそうなほど目で追い、もう一度恥ずかしそうに私の顔を覗いたあとそして____大きく口を開けました。


テトさんの口の中に見える白い歯と赤い舌が誘うように光って、私は高鳴る心音を決して顔には出さないまま指をテトさんの口の中へ入れていきます。


テトさんの吐く熱い吐息に指が一瞬触れたかと思うとすぐに口の中へと包まれていき、私の指を彼女の口内が、舌が、歯がとろとろとあたたかくて艶かしいほどやわらかい液体で徐々に濡らしていくのがわかります。



ちゅぱ、ちゅぱ、ちゅぱ。


今、私の膝には頭をお腹を上に向けて目を閉じ、指を吸うという肉食獣人としてはあるまじき警戒心ゼロの姿をした甘えん坊テトさんの姿がありました。


テトさんの小さくて綺麗な牙が私の指先を甘く噛み、その部分にじくじくとした感覚が集中したかと思うと、今度はその部分を舌と口腔の筋肉がやわらかく締め付けながら吸い、奥へ飲み込もうとしてきます。


ちくりと甘噛みされて刺激をより鋭敏に感じ取るようになった私の指をテトさんの舌で強めに吸われたり、舌の上でざりざりと舐められたその瞬間危うく漏れ出そうになる声を抑えます。


身体の構造上、指先には毛細血管や神経が集中していますし舌なんて剥き出しの神経と筋肉そのものです。


私の指の形から、分泌される汗まで舌で味わうテトさんとテトさんに神経を委ねて弄ばれる私。


私がこんな時でもかろうじて無表情を貫くのは、今はただ責任感ある姉としての役目から解放されて母と子猫のように、一心不乱に甘えたい気持ちで私の指を吸う彼女に対してテトさんに指をねぶられること__神経を絡め合うこの行為に対して“もう”どうしようもなく欲情してしまっている自分を見せたくなかったから。


テトさんが無意識のままにちゅっ、ちゅっ、と私の指を甘く虐める音を聞いているとどうにもお腹の奥がきゅうきゅうと熱くなってきてしまうのでこんな時は別のことに意識を飛ばしましょう。


………………


…………


……


私は至って普通の女子で、中学の時には同種の男子に淡い恋心を持っていたりと同性が好きとかそんなことは考えたこともなかったのです。


青春をするために恋したい!なんて義務感に駆られたこともなかったので、新しく入学した高校でもぼちぼち楽しくやっていけたらなぁ、なんで漠然と考えていました。


テトさんと出会ったのは入学してからすぐのことで、隣のクラスではあったのですが一緒に手芸部に入ってから話し始めるようになったという、まぁありがちな出会いでした。


特にコンクールへ出品するわけでもない、家庭科室のミシンを借りてお小遣い程度の予算で各々が作りたいものを作るだけのゆるい部活だったので、テトさんは弟妹さんのためによくナップザックや小物入れを作っていて、私は元々編み物が趣味でなんでも作ってみたかったのでその日の気分で好きなものを作りながらテトさんと軽いお喋りをしつつ彼女の作業をたまに手伝う、ちょっと仲がいいくらいの間柄だったのです。


しかし数ヶ月経過し夏に訪れた先輩の引退、先生の育休によってメンバーと顧問をなくした手芸部はあっさりと解体されてしまったのです。


私は家でやれればいいや、程度の気持ちだったのですが弟妹の多いテトさんはそうもいかなかったようで


「まだ学校帰りたくない~、お母さんがチビたちの面倒私に見させるに決まってる~、私の少ない癒しの時間が~…」


ばたばたと足を揺らす彼女に私は___


「じゃあ…よければウチにきますか?」


落ち着ける場所がなくなったと嘆くテトさんを私の部屋に招き、今度はそこで活動を始めたというのがことのあらましでした。


その頃になると私たちは休日一緒に出かけるくらいには良好な関係を築いていましたし、どちらかといえば内気な私と他愛ない話をしながら過ごす放課後を“癒し”と言ってくれた彼女に何かお返ししたかったのかもしれませんね。


こうしてテトさんは毎日放課後に私の部屋で外が薄暗くなるまでの時間を過ごすようになったのです。



それからというものテトさんと行動を共にする時間はどんどん増えていき、お昼には一緒にお弁当を食べたりテスト前の勉強会や夏休みの祭り、意味もなく深夜の公園でお喋りをした日もありました。


気の合う友人と公私共に過ごす日々はまさしく青春そのもので、二学期を終える頃にはテトさんと私は自分のクラスメイトよりも仲のいい唯一無二の関係を築けていて、この先も変わらない友情があるのだろうと言葉にせずとも無意識に考えていたのです。


いたのですが。


冬。新年が明けてのこと。


私たち学生は皆一様に冬休みへ突入していましたが、テトさんの弟妹さんはその間学童保育に入れられたそうでテトさんも日中ある程度自由になれたのでした。


その日も、夕方迎えに行くまでの間は私の部屋で課題を分担して終わらせながら編み物に興じるという充実した一日を過ごしていたのですが、たまたまその日はエアコンの調子が悪くなっていて雪国かと思うほどの極寒になっていたので小さなファンヒーターひとつと1枚のブランケットを共有して身を寄せながら暖をとっていたのです。


身を寄せ合う…それくらいはなんでもなくてむしろお互いの体毛を擦り付けあって発生する静電気ではしゃいだりしていたのですが、いかんせん距離が近すぎたのでしょうか。


「いたっ」


ふとした拍子、私が手を置いていたところにテトさんの手が重なってしまい、若干飛び出していた爪を引っ掛けてしまい指先からほんの少し血が出てきたのです。


このくらいの怪我なら刺繍をしている時によくある事ですから気にせず手を洗いに行こうと思ったのですがその瞬間、


「あぁっ、ごめん!」


そう言いながらやや慌てた様子のテトさんが私の出血した指をそのまま口に咥えたのです。


突拍子のない事だったのでドキリとしてしまいましたがテトさんはそのまま手探りでポーチを漁り絆創膏を探している様子。


ポーチの中に絆創膏を入れていたりするあたり、おそらく活発な弟妹さんに普段こうやって手当をしているのでしょう。


しかし____


ざりっ。


「いっ…」


いくら獣人と家畜、野生動物が区別された存在であり肉食獣人は畜産物であれば問題なく食べることができるとはいえ肉食獣人が草食獣人を食べるために殺すというカニバリズム事件はこの世に存在しています。


それでいて生死を問わず当然のように重罪です。


私の傷を口に含んだ際にテトさんが無意識にしてしまった、そのネコ特有の舌でほんの少しだけ私の患部に触れてしまったという結果は悪意が一切ないとはいえ、肉食獣人“が”草食獣人に痛みと“出血”を伴う怪我を負わせたうえでそれを“摂取”するという風に司法では解釈されてしまいます。


中学生の頃から半年に一回、草食獣人と肉食獣人で部屋を分けて受ける特別授業で何度も聞かされてきたことでした。


歳を重ねるにつれて退屈だと感じていたあの授業が徐々に記憶の底から湧き上がってきて…


「あっ、あっ…そのっ、ちがっ、ちがくてっ…私…」


ハッとして、私からなにか言ってあげなきゃと気づいたのも束の間。


もうその時にはテトさんは完全に取り乱していて、濡れた私の指を自分の手でゴシゴシと強めに拭います。


以前興味本位で触らせてもらったテトさんの肉球はとても柔らかかったのに今はこわばっていて、固く冷たくなっていました。


ポーチから取りだした可愛い模様の絆創膏が強く握られて、ぐしゃりとつぶれています。


それほどに、テトさんはこわばっていました。


「テトさん。私大丈夫だから、ね?」


「私ただ、しーちゃんの怪我を…そんなんじゃなくて…ただ…」


今にも泣きそうな彼女は緊張で全身の毛が逆立っていて、私の目を見ながらとても震えています。


「しーちゃん。違うの…」


その動揺が犯罪を犯してしまったことを意識してしまったから来るものなのか、それとも私を傷つけてしまったことから来るのか、テトさんは私の手を離し距離を取ろうとしながらも手を取るか取るまいかおろおろしていて、むしろ助けてほしそうな顔をしています。


嫌われる恐怖に侵されるのは、誰しも辛いことです。


それが時を積み重ねた相手であればあるほど。


こういった時に取るべきベストな対応というものは大人でない自分には分からないことでしたが、とにかく私はテトさんを安心させてあげたくて身体を抱き寄せてベッドに倒れ込みます。


「大丈夫だから。ね?」


安心なのか後悔なのかは分かりませんがやがてテトさんはぐすぐすと泣き始めてしまったのでした。




どれくらい時が経ったのか、部屋はしんと静まり返っていて2人の呼吸と時計の音だけが規則正しく繰り返され、あんなことがあったばかりなのに少しだけウトウトしている自分がいました。


安心させたい気持ちで自然にやったことでしたが、取り乱しているネコを毛布で包む(どちらかというと私で包んでいますが)という行為は奇しくも落ち着かせるためになかなか効果的な方法だったようです。


2人でブランケットに包まりながら暗い空間でしばらく抱き合っているとテトさんはやがて落ち着きを取り戻し、私の胸に顔を埋めていました。


「しーちゃん、怒ってない?」


「怒ってないよ。テトさんは何も悪いことしてないんだから。」


「うん…」


一緒にいると家族の愚痴をよくこぼすとはいえ普段から家族を大事にして立派にお姉ちゃんをやっていいるテトさんは責任感も強いのでしょう。


先程のことにかなり責任を感じているようでしたので、どうしようかと悩みました。


私がいくら赦しの言葉をかけても、テトさん自身が自分を許せなければどうすることもできません。


草食獣人と肉食獣人にはどうしようもなく壁があって、今テトさんに必要なのはそれを破るだけのなにかでした。


考えて考えて私は___テトさんの手を掴み指を咥えることにしました。


「やだ、しーちゃん何してるの。」


いきなり指を口に含まれたテトさんはびっくり、というよりも恐怖心のこもった声を出しました。


不安げな声を出しながら指を口から抜こうとするテトさんの指をそのままちろりと舐めると反応があったので、私はそのまま“ざりざり”と舐め続け、程なくして指を抜いたのです。


「私の舌も、テトさんと同じでザラザラしてるでしょ?」


あまり知られていませんが、ネコ同様ヤギの舌も結構ザラザラしているのです。


「さっきはちょっと私もびっくりしちゃったけど、テトさんも今のでびっくりしたからこれでおあいこね。…私はテトさんのことが大好きですから、あんなことで嫌いになったりしませんよ。」


そう言ってテトさんの頭を撫でると緊張がだいぶほぐれたようで、柔らかな毛に触れているうちにいつの間にかテトさんは抱きついてくるのでした。


「…私もしーちゃんがだいすき。」


ネコは気分屋で無愛想だと言いますが、そこには1度懷けばあとは甘々であるという点を付け加え損ねていると思うのです。


種としてそれぞれの獣人に特性はもちろんありますが、ネコ型の人は最初に見せる側面が自らの内面よりもネコという種の側面が強く出がちというだけで、テトさんだって1人の年頃の女の子なんですから。


不安もあれば_____


「ねえ、しーちゃん。」


「どうしました?」


「もう痛くしないから、もう一回だけしーちゃんの指、口に入れちゃだめ?」


過ちを改めないことが真の過ちであるというように、“ごめんね。いいよ。”で白紙に戻したからといって終わるわけではありません。


責任感が強いテトさんが自分なりに前に進むための行動なのかもしれません。


猫かぶったような潤んだ瞳で子猫のようにキラキラと訴えてくるのが気になりますが。


だとしても、弟妹が多い長女で普段甘えられない分をこういう形で、先程の不安と一緒に解消したいと思うのは仕方のないことですよね。


……


…………


………………




「うっ…んっ…」


せっかくテトさんとのこれまでを回想していたのに急に下腹部を押されたので思わず変な声を出してしまいました。


いつの間にか目を開けたテトさんが喉を鳴らしながらニマニマとこちらを見上げており、ネコの赤ちゃんがやりがちな授乳を受けている時の“あの”手つきで私のお腹を刺激してきます。


「ふぅ…あっ…」


「恥ずかしい顔いっぱい見られたお返し。」


私は指を吸われている段階ですっかり昂ってしまっていて、服の上からとはいえ子宮を刺激されるのは予想以上に効いていました。



「甘えてきたのはっ、テトさんなのに…んっ」


指を再び咥えて吸いながら手をパーにしてお腹を押して、グーにしてぐりぐりと押し付けて。


私は声を漏らさないために片手は口を抑えているし、もう片方はテトさんに吸われているし防ぐ術がありません。


「でも嫌そうな声してないし。」


お腹の奥から甘い痺れが頭に向けて登ってくるのを感じます。


指から伝わるぐるぐるという喉の振動と口の中の動きがそれに拍車をかけて、テトさんの吸う音と揉む音と鳴らす音が私の頭で最大音量になってそれ以外の雑音が全部取り払われた瞬間__私は身を震わせてしまいました。


「…しーちゃんかわいい。」


一方的に弄ばれた挙句にまにまと笑われたなんだか悔しかったのでお返しとばかりにテトさんをひっくり返してしっぽの付け根をぺちぺちと叩き始めると今度はテトさんが声を我慢し始めるのでした。


しばらくダメと言われても止めないことにします。



………………


…………


……



ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ。


さっきの動揺の反動でしょうか?今、テトさんは私に擦り付くように体を密着させて先程怪我した私の指を吸う、というよりもしゃぶりついています。


ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ。


ぐるぐると喉を鳴らしながら甘えるその様は無防備そのものでなんだか見てはいけないものを見ているような、お風呂とかトイレとかではなくもっと無防備な…自慰行為を見ているような、そんなドキドキした気持ちでした。


ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ。


さっきから一転しおらしくなって、種族とか友情とかのひとつの壁を乗り越え、私に対して遠慮なく甘えるようになった彼女がどうしようもなく可愛くて庇護欲をそそられるのは、これもまたネコの持つ魔力でしょうか?


ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ。


ただ、その、甘えたい気持ちの表れだとしてもテトさんは先程から私の胸をしきりに揉んでいて正直私にとってはそれどころじゃありませんでした。


ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ。



それは母乳がよく出るように促すための赤子ネコによく見られる本能的な行動だとは分かっていても、私はテトさんの母親ではなく普通の女子なのです。


ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ。


先程の緊張からの緩和、部屋で2人、ブランケットに包まった狭く暗い、吐息が絡まるほど距離が近い空間。


互いの体温が上がっていくのを感じながら密着し、無防備な姿を晒され、“性感帯の刺激”までされて正気でいろというのが無茶な話です。


甘えるテトさん愛しいと思う気持ちが強くなるにつれて、昂りも強さを増していきます。


あ、まずい。


「テトさん、もう…。」


離れようとしましたがテトさんとの密着度と絡みつく力はより強くなっていきます。


もう少し甘えさせてあげたいとは思いつつ私が粗相をしてしまう前に口から指を引き抜いて両手を掴み、胸から離して強制終了しようとしたその瞬間。


“我慢して”固く閉じていた私の脚にテトさんが自らの脚を割り入れ、太ももが“そこ”に軽く触れて__


そして、弾けてしまいました。


服の端を噛み、テトさんに爪を突き立てながらちぎれるほど抱きしめて震える私。


1人でしている時とはまるで違うその感覚に私はしばらく揺蕩っていて、正気に戻ったのかそんな私を見つめるテトさん。


汗や吐息、その他諸々の香りが充満したブランケットの中で私たちはしばらく見つめあって___


唇が重なり合うのも、掴んだ手を離して手を繋ぎ、指を絡め合うのもすぐでした。


友人同士なのにとか、恋慕の情とか、同性間でとか、そんなものはどうでもよくて私とテトさんという二人の間から色々な壁が取り払われて、なるようになってしまったというわけです。


……


…………


………………


考えているうちにテトさんの弱いところを刺激しすぎたのか、おもむろに立ち上がったテトさんは私の手を引いてベッドへと倒れ込みます。


その手はしっかりと指ごと絡められていて身動きが取れません。


あれからしばらくして恋愛関係となった私たちですが、押し倒されたのは初めてだったので面食らっているとテトさんは


「する時は私のこと見てくれなきゃ、や。」


そう、少しむくれた顔で私に迫るのでした。


妹のようにも見えるテトさんがなんだかかわいくて少し笑ってしまい、


「テトさんのこと考えてました。初ちゅーの時のこと。」


と言うと照れた顔を見せたくないようにそっぽを向いて


「じゃあ、許す。」


と言ったので私はその顔をもっと近くで見ていたくて、足でテトさんの腰をホールドしてこちらに寄せます。


今日もテトさんの肉球はやわらかくてあたたかく、汗で濡れた指の間の毛とのギャップが情欲を誘いました。


唇を軽く、時に強く押し付けるように重ねて牙に気をつけながら舌を入れるとテトさんは私を強めに抱きしめ、自分の舌を絡めてきます。


互いの唾液を交換しながら、時折ざらついた舌が口内に触れて快感と痛みが混ざった複雑な刺激が広がるのでした。


心を許した人とするキスと身体を触り合うということはとても気持ちがいいものです。


あの日から誰にも見られないブランケットの中でふたりきり、熱い吐息をよく絡めあっています。


学校も家も何も関係ない2人だけの世界の時間はしばらく続きました。


………………


お母さんが帰ってきたので急いで身支度を整え、テトさんを駅まで送るために入れ替わるように家を出ると外はまだ明るくてコンクリートから湧き上がるような熱気が私たちを包みました。


「次からはちゃんと飲み物用意しないといけないですね。」


「えー?次もそんなにするのぉ?」


「手芸だけなら指吸いもなしになりますけど。」


「む」


青い空、白い雲は青春の象徴だと思われますがこのじっとりとした空気感と夕陽が私“たち”らしいな、と思うのは私の傲慢でしょうか?


「早く冬にならないかなぁ~」


そう考えた瞬間に真反対のようなことを言ったテトさんの顔を見るとその前にテトさんは私の顔を見ていて、


「ブラウスもいいけど、しーちゃんは冬制服の時がいちばんかわいいもん。」


微笑みながらそう言ったのでした。


「私は夏のままでもいいですけどね。」


「えー?」


らしさとかそんなものはどうでも良くて、こんな時間でもテトさんの顔がよく見える夏ならなんでもいい、そう思えるのでした。


好きだと叫び出したい気持ちをこらえて控えめに手を繋ぐとそっと握り返してくれて、家でも学校でも一緒にいてくれて、私の一生懸命のコーデを可愛いと言ってくれて、不安は一緒に乗り越えてくれるテトさんが隣にいる。


私の青春はなんて満たされていて恵まれているのでしょう。


それなのに願わくば、この帰り道がもう少し遠くへ伸びてそれでいて朝までの時間が短くなればいい。冬がもう少し早くくればいい。でも日にちは過ぎないで欲しい。明日も一緒にいてほしい。


実は別れ際にもう一度だけキスして欲しい。


三種の神器どころか欲しいものがどんどん増えていくことに気づいてしまい、私って贅沢だよなぁと思ったのでした。












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百合ネコちゃんと百合ヤギちゃん 智bet @Festy

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