第3話 廃神社の人形(2)
お経は1時間以上続いた。途中で「祓いたまえ」みたいな一節が聞こえたから、やはり何か良くないものに憑かれてしまったのだろう。
お経が終わると、宮司さんは俺を見て言った。
宮司「君はもう大丈夫だろう」
俺「Bは?」
Bは変わらず虚な目をして、「ショウガナイ…ショウガナイ…」と呟いていた。
宮司「残念だけど彼には手の施しようが無い」
俺「そんな…」
その後、宮司は俺の家族と、Bの家族を呼んだ。Bの家族は明らかに様子がおかしいBを見て半狂乱になっていた。俺は廃神社に行ったことと、そこで木箱に入った藁人形を見た事を伝えた。
宮司は、あの廃神社にそんな木箱は無いはずだが…と言っていた。だが、間違いなく俺は見たのだ。宮司が言うには正体は分からないが、強力な怨念がBに憑いてるとのことだった。
結局、Bはしばらく宮司が預かることになった。俺はもう大丈夫だからと、家族と一緒に家に帰った。
その後、2、3日してBが亡くなったと報せが届いた。俺はただ泣く事しかできなかった。
それから約3ヶ月後、俺の生活も落ち着き始めた頃、突然宮司に呼び出された。
俺「もしかして、俺まだ憑かれてるんですか?」
宮司「いや、安心してくれ。君には何も憑いてないから」
亡くなったBには申し訳なかったが、俺はホッと胸を撫で下ろした。
宮司「君を呼んだのは確認したいことがあったからだ」
俺「確認したいこと?」
宮司「これを見てくれ」
宮司はそう言うと、表紙が破れ色褪せている古そうな本を開いた。町の歴史書?みたいな本であった。
宮司「君が見たのはこれかな?」
宮司は開いた本のとあるページを指さして言った。
そこには確かにあの日見た木箱と、藁人形が描いてあった。
俺「これです!間違いないです!」
宮司「やはりか…」
宮司はため息を吐きながら呟いた。
俺「一体この人形は何なんですか?」
俺は食い入るように質問した。
宮司「これは遠い昔、正確な年代は分からないが、少なくとも1000年以上前に造られたものだ」
俺「1000年?」
宮司「そうだ。昔、この辺の集落はそれなりに栄えていた。しかし、ある時、大規模な凶作に見舞われてしまった。凶作になると当然だが食料不足になる。
だが、集落の長はその権力で食料を独占し、集落の人々が餓死しても我関せず。長の一族だけ食料をたらふく食べていたそうだ。
やがて空腹に飢えた集落の人々は共喰いを始め、あっという間に集落は崩壊。長の一族は集落の人々から奪った金品を使い、都の方へ避難しようとしたらしい。
ここから木箱と藁人形の話だ。まず、集落に1人の青年がいた。その青年も飢餓で苦しみ、やがて耐えきれず家族を殺して食べてしまったそうだ。青年は自分のしてしまった行為を恐ろしいほど悔やんだ。そして青年の怒りは長へ向かったそうだ。殺した家族の髪を使い、ありったけの怨念を込め人形を紡いだ。」
俺「じゃあ、あの人形は藁人形じゃなくて…」
宮司「髪人形と言った方が正しいだろうな」
あれは藁じゃなくて髪だったのか…俺はゾッとした。
宮司「青年は髪人形を木箱に入れ、長の家の前に置いた。やがて長は黒く腐敗した姿で見つかったらしい。それ以来あの人形は見た人を殺す呪いの人形として恐れられていた。ただ、そんな人形を悪用する人も現れた。そのため山奥に神社を造り、そこで厳重に保管することにした。」
俺「その神社ってもしかして…」
宮司「そう、君らが行った森の中にある廃神社がそうだ」
俺「そんな危険な人形が放置されてたんですか?」
宮司「いや。神社の最後の神主は、神社を出る際に、人形を自分の家に移したと記述している」
俺「でも人形は置きっぱなっしになってましたよ」
宮司「そこが変なんだ。私が数年前にあの神社に行った時は何も置いてなかった。」
俺「じゃあ何であそこに…」
宮司「これは憶測だが、神主の親族たちはあの人形の恐ろしさに耐えきれず、廃神社に戻したんだろうな。なんせ見ただけで人を殺す力がある代物だからな。」
俺は神主の親族の無責任さに腹が立ったが、同時におかしなことに気づいた。
俺「俺もあの人形を見ました。なのに俺は大丈夫なんですか?」
宮司「理由は分からないが、君からは呪いの影響を全く感じないんだ。何か神からのご加護でも受けたのか?」
一つだけ心当たりがあった。無事に帰れるようにとお願いしたあのお地蔵様。帰りに見た時は黒く腐敗していたような…もしかしたら身代わりになってくれたのかも…
まぁあの森は完全に立ち入りが禁止されたので、確かめる術はないのだが。
ーーーーーーー
これが自分が父から聞いた話の全てだ。その森や廃神社、木箱に入った人形は今でも放置されいるらしい。無論、行くことはないのだが…
普段、長文を書かないので拙い部分が多かったのは許して欲しい。
短編ホラー集 四谷とばり @0312asaasa
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