第2話 廃神社の人形(1)
これは俺が中学生だった頃に父から聞いた話をそのまま書いたものである。
実家はN県の田舎の方、家の周りは田んぼや畑、山とは言えないが森みたいなのが多くあった。いくつかある森の中の一つに廃神社があった。神主も既におらず長らく放置されているような様相であった。
不気味な場所ではあったが、怖い話などでよくある呪いや曰くなどがあるわけではなかった。
そのためか、大人も「あんまり近づくんじゃないぞ〜」くらいの雰囲気だった。神社の入り口までは行ったことがあったが、やはり不気味だったので入ったことは無かった。
と、神社の説明はこれくらいにして。
小学生だった俺は友達のBに誘われ、その神社へ肝試しに行く事になった。怖い話が苦手だった俺は乗り気はしなかった。しかし、その神社は心霊スポットというわけでもないので、大丈夫だろうと腹を括った。待ち合わせの時間は学校が終わった直後、夕方くらいに決めた。
俺たちは学校が終わってすぐに神社のある森の入り口の所で待ち合わせをした。俺が着いた時にBは既にいたため、そのまま森の中へ入って行った。
神社までは歩いて40分くらいだ。神社の入り口までは何回か行ったことがあり、特に迷ったりはしなかった。
神社までの道のちょうど中間あたりにお地蔵様があるので〈無事に戻って来れますように〉と心の中でお願いしておいた。そして俺たちは何事もなく神社の入り口に到着した。
B「何だこれ?」
Bの視線の先には石で造られた鳥居があった。下の方から苔に侵食されていて、長年放置されているのがよく分かった。
俺「鳥居かな、かなり古そう…」
B「とりあえず入るか」
境内には手水舎や狛犬があったがどれも苔に覆われており手入れはされていないようだった。
そのまま境内を真っ直ぐ進むと、小さな本殿のような建物があった。ただ、かなり古びていてところどころの木材が朽ちている。
B「これが本殿か…入るぞ」
見るからに不気味だったので、俺は入るのを躊躇っていたが、Bの先導の元、意を決して中に入った。
本殿の中は薄暗く、少しじめっとしていて気持ち悪かった。
3.4段くらいの階段があり、その先に神棚のようなものが置かれていた。古びてはいるが、一般的な本殿と同じような造りである。神棚には神具のようなものが色々と置かれており、真ん中に木箱のような物が置かれていた。木箱には「怨鬼〇〇子像」と書かれたお札のようなものが貼ってあった。
B「開けてみるか?」
俺「いや…さすがに…」
見るからにヤバいので、俺は開けることに反対した。
B「でも、ここまで来て開けずに帰れるかよ」
そう言うと、Bは躊躇なく木箱を開けた。
中には藁?で作られた大きめの人形が入っていた。よく呪いとかで木に打ちつけられてるような藁人形と比べ、もっと太さがあり、胎児のような大きさをしていた。
B「何だこれ?気味が悪いな」
俺「もうそろそろ帰ろう」
Bに木箱を閉じるよう促し、俺は本殿を出ようとした。
しかし、そこで異変が起きた。Bが突然倒れてしまったのだ。
何が起きたのか分からなかった俺は慌ててBの元へ駆け寄った。Bは虚な目をしていて、小刻みに震えながら「ショウガナイ…ショウガナイ…」と呟いていた。
只事では無いと思い、俺はBを背負って死に物狂いで森の出口を目指した。行きに見たお地蔵様が黒く腐敗していたように見えた。
森を抜けると、一目散に村で1番大きなお寺を目指した。そこの宮司さんなら何とかしてくれると思ったからだ。
俺とBを見るなり、「すぐに来なさい」と言い、本堂へ俺たちを連れて行った。
本堂へ着くなり、宮司は蝋燭や線香などを立て、俺とBに口に含んだお酒を吹きかけた。
そのまま俺と、ほとんど意識の無いBを座らせ、お経を唱え始めた。
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