第十八章  太陽神と月神の会合 ~望むように~

当然のように門番に行く手を阻まれた、だがアスカの姿とヴァルセイルの姿を見て門番は道を開けた。

明らかに門番は姫君の帰り姿に喜んでいる、大声でおかえりなさいませと気持ちのよい挨拶を飛ばす。

それ以上にフィルムーンの王の来訪に敬礼をし、ようこそおいでくださいましたと出迎える。

門番は城を護ると共に城主の顔でもあるのだ、こんな凄い挨拶を聞いて不快になるはずが無い。

長い回廊が続く、広い。

本当に半端ではない、僕の表現力では体育館より広いとしか言えない。

暖かな気候に建てられたこの城の中は涼しくて居心地がよかった。

主として暖色を使い、大理石に包まれたひんやりとした空気の中に暖かさと太陽神を象徴している。

共に歩みを進めるフィルムーンの王は時経つごとに、表情を堅くし、

当の姫君のアスカは辺りを見回して数年ぶりの帰宅を懐かしむと共に小さく苦笑していた。

変わってないなここは、そんな感じだろうか。

表情を堅くする父親をよそに子供のチェリーシェルはというと…、

瞬に抱かれたまま初めての場所に目を輝かせてきょろきょろしている。

自分の国の文化と違う建物に関心を持っているのだろう。

それは僕とて同じだった、地球で言うお城そのものなのだ。

散歩するにはあまりに長すぎる距離を歩み、ついに王の間に着いたらしく二人の歩みが止まった。

長くもしないうちに、すいっとナディアール王妃が現れ、そこには後ろ手に縛られたレヴルスもいた。

我が子とはいえ、愚行には容赦はしない。

教育といえばそうだ、だが事件が事件なのかレヴルスの痛めつけられようは尋常ではなかった。

虐待、ではない。

例えそうであってもその言葉を否定するくらい以上の罪を彼は犯してしまったのだ。

王に来訪者を告げるためか王の間の兵士が中に入りしばし待たされる6人。

了承されたのかゆっくりと開く扉。

広い王の間に膝を組んで出迎えたサンバラシアの王、クォーラシアセル・サンバラシア。

それと側近なのか、セヴァース・サンバラシアもそこにいた。


クォラス「アスクァーシル~! 戻る気になったのかぁ~っ!」


緊張感ぶち壊し、親バカ丸出しの表情で飛び出してきたアスカの父親のクォーラシアセル。


アスカ「ちょっと、違うってば! お話があるの!」


クォラス「何だよ、淋しいなぁ。

    む、そちらはフィルムーンの王と王妃ではないか。

    いや、見苦しいところを見せてしまったようだな、ハッハッハ!」


高笑いするクォーラシアセル。

このような状況では話が話だけに切り出しにくい話だがヴァルセイルが頭を下げて始めた。


ヴァルセ「サンバラシアの王、クォーラシアセルよ。 

    今日はその大切な姫君のことで謝罪したいのだ。」


クォラス「そこに打ちのめされている息子のことか。」


ヴァルセ「あぁ、姫君には傷を弄ってしまうが我が愚息がサンバラシアの姫君を汚したのだ。」


クォラス「…なにぃ?」


血相を変えるサンバラシアの王、それでもフィルムーンの王は続ける。


ヴァルセ「我々の監督不行き届きであることは明白だ、許してくれとは言わない。

    だが、できる限りの罪は償わせて欲しい。」


クォラス「ほほぉ、アスクァーシルを連れてくれば抑止力になるとでも思ったか?」


ヴァルセ「いや、そんなことはない。 …申し訳ない。」


アスカ「私が連れてって欲しいって言ったのよ、勘違いしないでね。」

これがいわゆる政治なのだろう、一触即発の事態に固まりきってしまう瞬。

何か余計なことを言ってしまえば戦争にだってなり兼ねない。


ナディア「本当に、ごめんなさい。」


レヴルス「…すいませんでした。」


クォラス「お前は謝れる立場なのか、レヴルス?」


レヴルス「…。」


黙って俯くレヴルス。


クォラス「フン。 アスクァーシルはどう考えているんだ?」


アスカ「正直殺して欲しかったけど、もうどうでもいいの。 瞬がいるから。」


クォラス「瞬君、アスクァーシルはそう言っているが君はどうだ?」


瞬「あ、あ…。」


緊張感が張り詰めすぎて付いていけない、全身に不条理な力が働いて喉さえも殺される。

背中に伝う冷たい線、あらゆる部分が冷たくなっていく。


クォラス「…どうした。」


表情が強張るクォーラシアセル、恐怖感が尋常ではない。

そんな瞬の意識を呼び戻したのはチェリーシェルだった、瞬の腕にかぷっと噛み付いた。


瞬「あいてっ! …! (あっ、体が動く!) 

 …えっと。 ただ、僕はアスカを好きになっただけの人間です。

 それ以上でもそれ以下でもありません。

 ただ、護ると誓った以上は彼女の全てを護り、全てを愛することができます。」


クォラス「いいのか? 君より先の男がいるんだぞ?」


瞬「結果はそうですが、これからの経過の方が重要です。

 それに言わせていただくならアスカは唯一僕に心を許してくれました。

 その意味の方が僕にとっては最も重要で、

 自らの意思の届かない非物理的なものを得た僕が先の男に当たると思います。

 変な言い方をしますが、物理的に体が繋がるのは簡単です。

 でも、精神的な部分である心を繋げるのは大変な事です。

 例えそうでなくてもその事で僕がアスカを嫌うなんて事は考えられない。

 もう僕は彼女無しに存在理由を見出せない、僕達を隔てるものは無いと自負しています。」


クォラス「! ハーッハッハ! そうか、だが瞬君よ、それは間違いだ。

    最初に心を許したのは父親であるこの俺なんだからな!」


アスカ「バカーッ! そういう意味じゃないでしょーっ!」


瞬「む、それはまったくもって。

 クォーラシアセル様がいてアスカがいるんですからね。」


クォラス「そうだろう、そうだろう? ハッハッハッハ!」


アスカ「瞬まで何言ってるのよ~。」


ヴァルセ「…、あ~、クォーラシアセル王よ、我々はどうしたらいい?」


クォラス「あぁ、スマン。 

    確かに許しがたい事件だがな、当のアスクァーシルがこう言ってるんだ。

    俺がどうこう言う問題じゃないと思うが、後はレヴルスに関してはどうするかだな。」


ヴァルセ「私としては死を以って償ってもらおうと思うのだが。」


アスカ「私は解放していいと思うな。」


クォラス「なに!?」


ヴァルセ「しかしアスクァーシル姫、それでは他の者に示しがつきませんぞ?」


アスカ「辛い罰だと思うな、この罪を背負って生活するなんて堪えると思うけど。」


クォラス「なるほどな、ある意味では死より過酷かも知れん。」


ヴァルセ「それならば示しがつくな、死にたいなら自分で選ばせるということか。

    ナディアールもそれでいいかな?」


ナディア「私は異存ないわ。」


ヴァルセ「そういうわけで解放となるが、

    心の広いクォーラシアセル様と瞬君とアスクァーシル姫に感謝するんだな。」


ただ黙ってレヴルスは頭を下げた。


アスカ「で、お父さんにお願いがあるの。」


クォラス「可愛い娘のためなら何だって聞こうじゃないか。」


アスカ「フィルムーンと仲直りして欲しいの、ダメかな?」


クォラス「お前がそう言うならそうしようじゃないか。

    ヴァルセイル王、よろしいかな?」


ヴァルセ「願っても無い至高の喜びこの上ない、宜しくお願いしたい。」


アスカ「よかった、お父さん大好きっ!」


父親の胸に飛び込むアスカ。


クォラス「おぉ~っ! アスクァーシル!」


もの凄く嬉しそうなクォーラシアセル、しかし政治が娘の一声で完結されていいものだろうか。

瞬は苦笑する。


チェリーシェル「あー、う?」


瞬「お父さんたち仲直りしたってさ。」


チェリーシェル「ん。」


クォラス「君がチェリーシェルちゃんか、初めまして。」


チェリーシェル「うーあ、う。」


クォラス「うんうん。」


アスカ「分かるの、お父さん?」


クォラス「分からん! ワッハッハッハ!」


チェリーシェル「うーっ!」


瞬「ほらほら、怒らない怒らない。」


頭をくしゅくしゅ撫でられると条件反射のように落ち着いてしまうチェリーシェル。


ナディア「本当にごめんなさいね、クォーラシアセル王。」


クォラス「もう済んだことだ。

    アスクァーシルが望む結果になりさえすれば俺は十分だ。

    セヴァース! この事は他言無用だ、いいな!」


セヴァース「御意、…時に如月殿。」


瞬「えっ、僕?」


セヴァース「いかにも、貴方様しかいますまい。

     不躾ですがお手合わせ願えませんかな?」


瞬「そ、そんな! 僕は弱いですよ!?」


アスカ「ちょっと、じい!?」


クォラス「ふふっ。 (セヴァースめ、あいつも好きな奴だな。)」


セヴァース「そうおっしゃらずに、老兵の願いを聞いては頂けませんかな?」


瞬「は、はぁ。 どうして敬語なんですか。」


セヴァース「おや、聞き違いですかな?

     アスクァーシル様の全てを護られると私には聞こえましたが?」


瞬「もちろん、言いましたよ。」


セヴァース「ならば、サンバラシアを継いでいただけるということでございましょう? 

     次期サンバラシア王候補に敬語は当然でございます。」


クォラス「それもそうだな! 何せ俺さえ知らない我が娘の顔さえ知っているのだからな。」


瞬「ううっ、みんな揃って酷いや。」


湧き上がる笑い、それが止むや否やに瞬はチェリーシェルをそっと下ろし、

共にセヴァースは構えた。


クォラス「なぁ、ヴァルセ。 この試合どう思う?」


ヴァルセ「んー、この状況ならセヴァースの方が上手だろうな。」


クォラス「正直なところ如月が欲しかっただろう?」


ヴァルセ「あぁ、隠そうにも隠せないくらい欲しいな。 彼は化ける。」


クォラス「彼は優しい、きっと分け隔てなく我々を助けてくれるだろう。」


ヴァルセ「何だかんだ言ってサンバラシアに入れるのだろう?」


クォラス「出来ればな、だが今はまだ弱すぎる。 

    それに恋愛なぞ自由なものだ。

    チェリーシェルに取られてはサンバラシアに、何て事は言ってられんだろう?」


ヴァルセ「全く、取られないと分かって言っているな?」


クォラス「ハハハ。 どうだかな。」


張り詰めた間が崩れて瞬とセヴァースが戦い始めた。

やはりあの時セヴァースは手を抜いていたのだ、そして今回も。

必死に応戦するも瞬は散々に打ちのめされてしまう。


瞬「いっててて…。」


セヴァース「腕を上げましたな。

     先に交えた戦闘がたった2日前だというのに恐ろしい能力の飛躍ですな。」


瞬「全然歯が立ちませんね、流石です。」


クォラス「今の瞬の戦い方はまさか…。」


アスカ「じい、瞬と一緒に戦ってもいい?」


セヴァース「おぉ、姫様と手を合わせるなど久し振りですな、構いませんぞ?」


アスカ「ありがと。 それにしてもやられたねー、瞬?」


瞬「全くだよ、第一僕は弱いんだぞ?」


アスカ「あっ、それ言い訳?」


瞬「それをしないように努力する。」


アスカ「ふふっ。 じゃ、行くよ? 護ってね。」


瞬「オッケー。 …散ッ!!」


掛け声と共に散開し王間の天井すれすれに飛躍する瞬、我が身一つで飛べる高さではない。

一時それに気をとられたセヴァースにアスカの炎が向かう。

素早く反応して回避するセヴァース、年老いてもその速度は老兵とはとても思えない。

大きい音がしたと思うと天井を蹴った瞬がセヴァースに瞬速の一撃を見舞う。

しかしそれも紙一重の無駄の無い回避の前に空を切った。

そのまま燕のように方向を変えると瞬はセヴァースに追撃を浴びせる。

その攻撃は一撃も当たらない、だが瞬の表情に変化が無い。

まるで当たり前であることを悟っているかのように。

様子の異変に気付いた時は遅かった。

再び天井に飛躍した瞬が敢えて死角になり、

アスカの魔法の詠唱に時間を割いてしまっていたのだ。

天井に舞った瞬に気を取られていたのは仕方が無い。

さっきまで彼と戦っていたのだから次の行動は当然目を向けてしまうのだ。

しかしその隙こそ瞬とアスカの狙っていたものに他ならなかった。


アスカ「太陽が姫、アスクァーシルの名の下に我請い願う。 今一度壱千度の輝きを!!

   炎の光で屠れ! シャイン・オブ・プロミネンス!!」


セヴァース「むっ!? しまった!!」


発射された炎に包まれた光の帯、セヴァースはガードするのが精一杯だった。

舞った煙も去らないうちに瞬はセヴァースに天井から追撃する。

軽い音が響き渡っている、瞬の攻撃が当っているのだ。

何かに気付いてアスカが消えかけている煙に入っていく。

ちょうどその瞬間はセヴァースが反撃をしようとしているところだった。

空を切るセヴァースの一撃、状況的に瞬は避けられないはずだった。

そう、瞬は。

足払いをアスカから受けた瞬はその場に転倒、しかし受身を取っている。

分かっていたのだ。

構え直すセヴァース。

その一撃は足払いをし、瞬より遅れて体勢を立て直すのが明らかなアスカを狙っていた。

そんな彼女の両足を引っつかんで思いっきり引っ張る瞬。

普通こんなことをしたらアスカは後頭部を強打するに決まっていた。

だが、それを分かって身を反転させたアスカはセヴァースの射程外に引きずられた。

完全に外れるセヴァースの一撃、正に刹那の見切りであった。

構え直すセヴァースを確認すると次に瞬はアスカの足を天井に放った。

逆さまになって空を舞うアスカ、その掌には炎が燦然と輝いている。

いち早く気付いたセヴァースは左に飛びのいた。

地を叩いて飛び上がった瞬はセヴァースとは反対に駆け出した。

放たれた炎は瞬を狙っていた!

にやりと笑うアスカと瞬の二人。

弾かれたゴムのように方向を転換するアスカの炎。

瞬間に見えた白い光、それは瞬が放った魔法の基本、テレスレイだった。

方向を変え、着地した瞬間のセヴァースに回避する事は不可能だった!

直撃を受けて吹き飛ぶセヴァース。

それを見もせずに瞬は落ちるアスカを抱きとめて地に下ろした。

炎を振り払い魔法を放つセヴァースだが、熱量はアスカの比ではなかった。

2人はかわすことも防御することもせず、アスカは瞬の肩に両手を添えて待ち構えていた。

左手を右手首に添えて半端ではない熱量の魔法に掌を向ける瞬。


アスカ「サンバラシアの姫、アスクァーシルの名において我は命ずる!

   滅びの炎に魂を焦がせ! 汝、フレア・バースト!!」


瞬「テレス・レイッ!!」

放たれた光線は明らかに脆弱だった、が。

半端ではなかった熱量の炎はその光線に屈服し、弾け飛んだ!


アスカ「散ッ!!」

瞬「散ッ!!」


二人の掛け声と共に脆弱だった炎は爆発的な熱量を持った太陽に似た炎へと変貌し、

燃え盛る炎の揺らめきは爆炎の如く姿を変え、セヴァースに襲い掛かった!!


セヴァース「----ッ!!」


大爆発が起きるかと思いきやその炎は意外にも消え去った。


クォラス「勝負あり、だな。」


消えた炎が去ってセヴァースの前に立ちはだかっていたのはクォーラシアセルだった。


瞬「勝ったーっ!! やったよ、アスカ! 勝てたんだよ!」


アスカ「何言ってるのよ、バカーっ!! 腕が限界超えて血まみれじゃないの!!」


瞬「あ、本当だ。」


アスカ「嘘つきは嫌いよ、何だってあんなこと…。」


瞬「嘘なんてついてないよ。

 最善の策だと判断したからに他ならないんだけどな。」


アスカ「あのねぇ!」


瞬「…ごめん、もうダメだわ。」


アスカ「えっ?」


その場に崩れ落ちる瞬をアスカは慌てて抱きとめた。


瞬「はっ、はっ。 ご、ごめん…。」


アスカ「…いいよ、きっと私が無茶したせいだよね。」


瞬「僕が弱いんだってば、アスカは悪くないよ。」


アスカ「…ちょっとは私を責めたっていいのに。」


瞬「へへっ、やーだね。」


アスカ「もうっ…。」


瞬「クォーラシアセルさんにあの炎が消されたのは予想外だったな。」


クォラス「俺もまさかとは思ったよ、まさかアスクァーシルとここまで呼吸が合うとはな。

    ヴァルセは知っていたのか?」


ヴァルセ「あぁ、瞬君と姫君が共闘するならセヴァースに勝てるのではないかと思っていた。

    先に我々が見ていたのもあるが、瞬君の体力の低下が残念だな。」


クォラス「何? つまりこの戦いの前に瞬とアスクァーシルは戦闘をしていたということか?」


ヴァルセ「レヴルスの派遣した部隊とな。

    姫君は支障が無いようだが、瞬君はその時点で限界だったようだ。

    必死に隠そうとしていたから敢えて理由の追求はしなかったのだがな。」


アスカ「本当なの?」


瞬「うん。」


アスカ「何で言ってくれなかったのよ。」


瞬「限界がバレたらレヴルスの彼女になるって言ったよね?

 それだけは嫌だったんだ。」


アスカ「…ごめんね。」


瞬「あっ、いや、アスカのせいじゃないよ! 僕が真に受けたからだ。」


アスカ「…瞬。」


瞬「あ、えっと。 …何?」


アスカ「…大好き。」


瞬「よ、よしてよ。 照れるよ。」


少し痛いくらいにぎゅっと抱きしめてくるアスカの顔を直視できなかった。


クォラス「ほほぉ、アスクァーシルがここまで惚れているとは驚きだな。

    少し淋しい気もするが、娘の成長が嬉しくもあるな。

    フィオラーシルが生きていればどれほど喜んだろうな。」


瞬「フィオラーシル…?」


アスカ「私のお母さんだよ、妹達を命と引き換えに産んだの。」


瞬「!!」


アスカ「気にしないで、もうだいぶ前の話だし。」


瞬「僕には両親がいたから贅沢だね。」


アスカ「ううん、個人個人の問題だよ。

   辛いのだってそれぞれだよ、瞬の両親の話聞いて辛そうだって思ったもの。」


瞬「そうだね、比べられるものじゃなかった。 でも僕にはアスカがいるから。」


アスカ「ふふふ、私にだって瞬がいるんだもん。」


ナディア「あらあら、若いっていいわねぇ。 ねぇ、ヴァルセ?」


ヴァルセ「う、うーむ。」


クォラス「できるなら俺も戦ってみたいところだが瞬君がこの状態じゃなぁ。

    サンバラシアには回復要員が少ないからな、…どうだ瞬君?

    しばらくここに居る気はないか?」


瞬「えっ?」


アスカ「ダーメ。」


クォラス「俺は瞬君に聞いてるんだぞ?」


アスカ「むっ。」


瞬「出来ればそうしたいのですが、できるだけアスカのそばに居たいもので。

 第一、僕はまだクォーラシアセル様のお相手をできるほどの実力を持ち合わせていません。」


クォラス「セヴァースとだけ戦うなんてずるいだろう、俺だって楽しみなのだからな。

    では、アスクァーシルがこっちにいればいいのかな?

    どうだ、アスクァーシル?」


アスカ「いーや。」


クォラス「つれないなぁ、娘よ。

    たまにはフィオラの墓くらい見舞ってやれよ。」


アスカ「…瞬はどうしたい?

   私、瞬に合わせるよ。」


瞬「正直言っちゃうとこっちに居たいんだけど…、だって凄いところに居るんだからさ。」


アスカ「くすくす、興味と好奇心の塊だね。 男の子らしい。

   瞬がそういうならちょっとこっちにいようかな。」


クォラス「でかした瞬君! ありがとうよ!」


ヴァルセ「それでは我々はこの辺で御暇するとしようか。」


ナディア「そうね、それでは失礼するわ。」


クォラス「あぁ、暇があればいつでも来るといい。」


その言葉を聞いて一つ敬礼をするとレヴルスを連れてフィルムーンの王と王妃は立ち去っていった。

もう一人の子供のチェリーシェルを残して。

とりあえずは強い諍いもなく収まってくれたことを安心する瞬なのだった。

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