第十五章 優しいんだよ ~二人の物語~
瞬とアスカは眠たい目をこすって学校に向かう。
特にミーティング等が無ければここHEIGAは便利な専用施設だ。
聡哉は寝坊か、呼んでも出て来る気配は無かった。
何でも調べたいことがあるとかないとか。
だから瞬とアスカは2人っきりで学校に向かっていた。
瞬「あー、セミうるさいなぁ。 苦手だよセミは。」
アスカ「どうして?」
瞬「小さい頃油蝉を腕に乗っけられたことがあってさ、そしたら蝉が腕にブスリ。」
アスカ「へえぇ、蝉って腕刺すの?」
瞬「刺された本人がここにいるんだなぁ、油蝉に限っては刺すらしいよ。
その日以来セミが怖くてさ。」
アスカ「ふう…ん。」
とアスカが小脇に反れて木のそばで手を高く伸ばしている。
瞬「何してんだよアスカ、遅れちゃうぞ?」
ぎぎーっ、じじじじーっ。
瞬「こ、この忌まわしい音はもしや…。」
アスカ「しゅーんっ! ほらほらっ、せみーっ!!」
瞬「ぎゃーっ! よせーっ!
最高の愛想を兼ね備えたにこやかな笑顔を振りまきつつ、
その断末魔のような叫び声を上げる生き物を持って駆け寄ってくるなあぁぁっ!!」
アスカ「ほらほらぁ、可愛いよぉ~?」
瞬「可愛くなーいっ!」
アスカ「ひどーいっ! アスカは可愛くないって?」
瞬「言ってないってんなこと!」
アスカ「じゃほら、セミ。」
瞬「それとこれとはわけが違う、ってか本質そのものが違うって!」
アスカ「きゃはは。 …パス。」
ぎぎぎーっ!
瞬「うぎゃああーっ!」
アスカ「きゃははははっ!」
そんなアスカのお茶目もあってか気付いたらもう学校だった。
30分くらい掛かるはずなのになのにアスカといるとあっという間に過ぎ去ってしまう。
瞬「あーっ、酷いぜアスカよーっ。」
アスカ「ごめんごめん、許して。」
瞬「まぁ、面白かったからいいけどね。 はっはっは。」
アスカ「…。 ねぇ瞬、ちょっといい?」
瞬「もうセミは勘弁だよ?」
アスカ「セミじゃないよぉ、…っと。」
間髪入れずにアスカが瞬をぎゅっと抱きしめた。
瞬「ちょっ…、アスカっ!?」
アスカ「嫌なことしたんだから怒ればいいのに、優しいね。
遅くなったけど、おはよ! …えへへーっ。」
ポーズを決めて照れ気味に微笑むアスカ。
…いいなぁ、こういう子。
と、口に出してしまいそうな台詞を噛み潰して瞬はアスカの手をとる。
アスカ「あっ…。」
顔を真っ赤にするアスカ、でも嬉しそうだった。
瞬「ボーッとしてないの、行くぞ。」
アスカ「うんっ! えへへーっ。」
満面の笑みのアスカ、この子はいっつもにこにこしてるな。
教室に着くともう聡哉の言った通り、それは凄い事になっていた。
アスカと付き合ってるのか、どこまで行ったんだよ、とか。
昨日命懸けでアスカを護った上、手を繋いで来たんだ、仕方ないよな。
わざわざアスカもバラしてはいないようだが、この調子では広まるのも時間の問題かも知れない。
少し遅れてきた聡哉からもだった。
聡哉「なぁ、瞬。 どうなんだよ、吐いちまえって。」
瞬「何がだよ。」
聡哉「アスカと付き合ってるんだろ?」
瞬「まぁ、聡哉だから話すけど…、付き合ってるよ。」
聡哉「やぁっぱりな。
で、どこまで行ったんだよ? ヤッちゃったんだろ?」
瞬「やかましい。 俗っぽい言い方するなよ。」
聡哉「なんでぇ、親友の俺になら話してくれるんだろ? ベイビー。」
瞬「誰がベイビーだっ! ったく、何でそう思うんだよ?」
聡哉「おや恋の力は恐ろしいねぇ、友情さえ雲隠れさせてしまう。」
瞬「何が言いたいんだよ。」
聡哉「俺はおまえの親友だぜ?
夜中の1時半過ぎに送ったメール最後に音信不通になりやがって。」
瞬「僕が寝てたとしたら?」
聡哉「おや? シラを切るのかな?
大きなまくらを持ったアスカが部屋を出ているのが目撃されているんだぞ?」
瞬「刑事かお前は!」
聡哉「おかげで遅刻しちまったい。」
瞬「遅れたのはウラ取ってたからかよ…。 何て事してくれるんだ。」
聡哉「さぁ、吐いちまえよ。 すっきりするぞ?」
瞬「っがないな、ったく。 抱きしめはしたけどね、最後まではおろかキスもしてないよ。」
聡哉「何!? …ま、あれだけ奥手だったお前に彼女が出来たってだけでも大前進だな。」
瞬「僕も精一杯頑張ったんだよ。
…胸タッチまでは。」
聡哉「!! …マジか!?」
周囲に配慮して瞬は小さく頷いた。
聡哉「ハハハハッ! すげぇじゃねぇか!
とりあえずはおめでとう、だな。」
瞬「ありがとう。」
聡哉「あー、あとお前に話さなきゃいけないことがあるんだ。」
瞬「なに?」
聡哉「…その、な。 言い出しにくいんだけどよ。
俺、ちょっと前までアスカと付き合ってたんだわ。」
瞬「え!? マジ!?」
聡哉「スマン、黙ってたことは謝る。」
瞬「いや、いいよ。
ところで…、何で別れたの?」
聡哉「いや、これがまた情けない話でな。」
瞬「アスカを騙すような事したんだろ?」
聡哉「聞いたのか?」
瞬「いんや、聞かなくたってお前のオチくらい読めるっての。
どうせ聡哉のことだからちょっと入れたら拒否られたんでしょ?」
聡哉「参ったな、ハハハ! 瞬の方が上手だったな!
その通り、いざえっちって時に先だけ入れたら拒否られちゃったんだなこれが。」
瞬「それは聞いた。 それ聞いた瞬間、一発でお前だって思ったよ。」
聡哉「ちょっと強引だったのかな、ひっぱたかれちまってな。 痛かった痛かった。」
瞬「はたかれたのは聞いてなかったな、マジか?」
聡哉「おお! なら聞くといい、我が武勇伝を!」
瞬「なぁにが武勇伝だよ。」
聡哉「とにかく優しくして彼女にしてえっちまでこぎつけたまではよかったんだがな、
ホラ、アスカってスレンダーですっごい抜群のスタイルしてんじゃん?
ところがボロ出してはたかれた、それだけならまだよかった。
その手は2発目を構え、軌跡を外れ見事俺の股間にダイレクトアタック。
悶絶地獄で死ぬかと思ったぞマジで、気づいたらアスカはいないわ振られるわ散々。」
瞬「ハハハハッ!! 期待を裏切らない最低ぶりだぞ。」
聡哉「お前が怒らないからこんな話できるんだぜ。
言ってる俺が言うのも何なんだけど、信じられないぞ瞬。」
瞬「怒ったところでアスカの三文の足しにもならないでしょうが。
もちろんアスカを傷つけるような、例えば僕以外に言いふらすような事したら怒るけど。」
聡哉「言いふらすかよ、アスカの気持ちを考えない程腐っちゃいない。 お前だからだよ。
にしてもお前のそういうトコ大人だって思うよな、若いんだからもっと遊ばなきゃ。
クォーラシアセル様も言っておられたぞ?」
瞬「ばか、それは僕の戦闘能力の話だ。」
聡哉「あ、そうだった。」
ゴン!
鈍い音と共に聡哉の周りに星が舞う。
聡哉「うおおおお! 誰だ! 後ろから…、不意打ちとは卑怯なり!」
アスカ「あらぁ、まだ足りなかったかしらぁ?」
笑顔でも何やら殺気を放ちながら聡哉を見下ろすアスカ。
さすがにバツが悪いのか、聡哉も小さくなってしまう。
聡哉「いえ、結構です。」
アスカ「最低よ、貴方…。
まぁ、そういう事なんだ。
ってか、瞬も笑ってる場合じゃないでしょ、ちょっとは怒ってよ。」
瞬「さすがに局部破壊されてる人に止めを刺すなんて可哀想な事は出来なくて。」
アスカ「あぁ、あれもう一回やっとけばよかったかな!」
聡哉「ごめんなさい、もう一回なんてたまりません。」
アスカ「ま、もういいや。
今は嘘っぱちの優しさなんて微塵もくれない最高の彼氏がいるんだから。
向こうで女の子が呼んでるの。
瞬行こっ、こんなのが伝染っちゃったら私災難だよ。」
聡哉「なっ、今瞬は俺と話をしてるんだぞ?」
アスカ「なによう、少しは償おうって気持ちは無いの?
今にバチ当たるわよ。」
瞬「2人とも抑えなよ、今回は聡哉が悪い。」
聡哉「ちぇっ、瞬に言われたんじゃしゃあねえな。
筋トレでもしよっかな。」
アスカ「こっ、この…!」
そんな軽い態度の聡哉に業を煮やしたアスカの頭をくしゅりとなでる。
瞬「こーら、元彼にイライラしないの。
今の彼氏さんを見てればいいの。」
アスカ「…うん。」
その言葉に嬉しさと照れを見せたアスカは頬を染めて瞬と手を繋ぐ。
”手を繋ぐ。”
たったこれほどまでに小さな行動にもお互いが照れてくすくす笑うアスカと瞬。
?「うわー、ほんと仲いいのねー。」
アスカの彼氏を呼んでいると言われた子の下に行くと、
薄い赤色のロングヘアーの小柄で大人しそうな女の子が瞬を迎えた。
瞬「うん、えっと誰さんだっけ?」
アスカ「えっとね、昨日私が言ってた…、」
?「双葉~。
瞬「あぁ! なるほど。」
いち早くアスカを遮ってまで自己紹介をしたその女の子はにこやかに瞬を迎え入れる。
アスカ「双葉は私とひかるを含めて”癒し参紅 (いやしさんあか)”って言われる
三人の炎の使い手なの。」
双葉「結構三馬鹿って言われるけどね~。」
瞬「はははっ。」
アスカ「ちょっとぉ、そこ笑うところじゃないよ。」
瞬「ごめんごめん、でもまたどうして”癒し参紅”なんて言われてるの?」
双葉「バカだからかな~?」
アスカ「違うって…。
ひかるが炎で切り込んで、私が炎で焼き尽くし、悪を双葉が浄化の炎によって癒す。
それが三人の紅(あか)、炎って意味なの。 比喩的な表現だけどね。
実際、炎の魔法を使ってるのは私だけだし。」
瞬「ほうほう。」
双葉「ね~、三人寄れば三馬鹿は姦しいの~。」
アスカ「ばかじゃないってば、ベタなボケしないでよ~。
仮にも貴女だって”癒し参紅”の一員なんだからさぁ…。」
瞬「双葉ちゃんってすっごいマイペースだね。」
アスカ「すごいでしょ、結構疲れるのよこれが…。」
突然瞬の背中に激しい痛みが走る。
?「きゃーっ、アスカの彼氏だーっ!」
瞬「あいたた、何だ?」
?「サンバラシアを撃退したって割には弱っちいわねぇ。」
アスカ「ひかる! 何て事するのよ!」
?「あぁ、ごめんごめん。
私の名前は
いやぁ後世に語り継がれる伝説だよ、忘れること無きあの自己紹介は!」
大きい三つ編みをこさえた長身の女の子は瞬をバシバシ叩きながら言う。
瞬「いてて、言うなって。 あれは若くして犯した人生の過ちの一つだ。」
ひかる「じゃあ最近犯した過ちのもう一つ、犯しちゃったアスカについて聞こうじゃないの。」
アスカ「きゃーっ! ちょっと何て事いうのひかるのばかっ!」
瞬「うーわ、とんでもねぇぞこいつぁよ。 世の女性の理想像は滅んだか?」
ひかる「で、どうだったのよ。 アスカのぐ・あ・い・は?」
アスカ「いやーっ! ちょっと! やめてーっ!」
瞬「あ、あのなぁ、癒し参紅の割りに君らあまりにもタイプが違いすぎ…。」
ひかる「いいから吐いちゃいなさいって。」
瞬「無いもの吐けるかーっ! アスカも何だってひかるに話したんだ!?」
アスカ「ひかるに何て話してないわよー!」
ひかる「甘いわよアスカ、この私に隠し事なんて。」
双葉「ごめんね~、話しちゃったの~、惜しげもなく~。」
アスカ「いやあぁぁぁっ! 双葉、貴女って人はーっ!」
双葉「アスカ~、痛いよ~。」
アスカ「何で痛いか理解して、お願い。 私も痛い。」
瞬「双葉から聞きだしたんなら”この私”じゃないだろ、絶対。」
ひかる「うーん、彼氏さんは照れちゃってダメねぇ、アスカ話してよ。」
アスカ「な、何をよぅ。」
ひかる「真剣な話、どうだったのよ?
あんなに二度と恋愛なんてしない、って聡哉振ったとき言ってたのにさ。
そりゃあんなに命懸けで護ってくれたら惚れちゃうかもしれないかも知れないけどさ。」
アスカ「う…ん、すっごく甘えさせてくれたの。
護ってくれたのもあるけど、瞬ったらすっごく優しいんだもん。 …ね?」
瞬「ぼ、僕に振るのかよ。 でも結局何もしなかったじゃないか。」
ひかる「そこが引っかかるのよね~。
瞬の目からはアスカってそんなに魅力が無いように映るわけ?」
瞬「い、いや決してそうじゃないんだけど…。」
まさか、あの感覚の事なんてとてもじゃないが言えたもんじゃない。
どう聞き取ったって誤解しか招きようが無い。
アスカ「気を遣ってくれたんじゃないかな。
正直な話、胸に触れられるのも抵抗あったんだ。
止めてって言ったらほんとに何にもしなかったの、びっくりした。」
ひかる「…嘘、マジで?」
アスカ「うん…。」
ひかる「…瞬、凄いね。」
瞬「そんな素で褒めないでよ、アスカに嫌われたくなかっただけだよ。」
ひかる「いや、そうだとしたってフツー止まんない。 ってか止められないって。
そりゃそんなに想われちゃもう一回くらいなら騙されてみてもって思うよね。
瞬には失礼だけどさ。」
瞬「いや、いいよ。 気にしてない、男だからそういう気持ちが無かったわけじゃないし。」
ひかる「だから凄いって言うの。 で、それからは何かあった?」
アスカ「うん…。 結局瞬に胸触らせてあげちゃった。
えへへーっ。」
ひかる「----ずいぶん可愛らしく笑うわねー。
恋のお陰なのかな~、たった1日違うだけで女の子がこんなに変わっちゃうんだから。
女は付き合う男次第とは言うけど、瞬はアスカをいい女にしているみたいね。」
瞬「えっ、僕の事?」
ひかる「他に誰がいるのよ。
ったく、当の彼氏さんが無意識なのが凄いわよね。」
アスカ「連日の戦闘で疲れてるはずなのに瞬ってば私を気遣ってくれるんだよ?
そうしたら胸がいっぱいになっちゃって、もっと瞬に愛されたくなっちゃって…。」
ひかる「そりゃそうだ。 ところで瞬は知ってるの? アスカがバージンじゃないって事。」
瞬「聞こえないように言えよな、知ってるよ。 関係ないよ、これからが大事だから。
第一、辛いとするなら僕じゃなくてアスカの方じゃないかな。」
ひかる「! 言うじゃない。」
瞬「正直な気持ちだよ。」
ひかる「へぇ、カッコつくわね。」
アスカ「ふふふ、瞬も私に甘えてくれるの。
淋しい、何て言うんだよ? でもさ、何かそれがもう嬉しくって。」
ひかる「普通言わないよねぇ。 瞬ってば変わってる。」
アスカ「でしょ。 でもね大事にしてくれる意味で気遣ってくれるのはすごく嬉しいの。
愛情の一方通行が無くて、お互い素直な気持ちを受け止め合えるのがすっごく幸せ。
何て言ったらいいかな、…うん。
瞬に抱きしめられて撫でてもらうとね、”心を撫でてくれる”って感じがするの。」
ひかる「! アスカにここまで言わせるなんて…、どんなテク使ったのよ。」
瞬「そんな御大層なもんは持ち合わせてないって。」
ひかる「…そうなの?」
アスカ「あえて言うなら、心を撫でてくれるのがそうなのかも。」
ひかる「優しいんだぁ、瞬って…。
ねぇ、アスカ、今晩だけ瞬貸してくれない?」
瞬「あえっ!?」
アスカ「だめーっ!!」
ひかる「そりゃそうだよね、何か悔しくなってきた。
そんな幸せそうなの、アスカに先を越されるなんて思ってなかったなぁ。
いい!? こんないい男捕まえたんなら絶対離しちゃダメよ、それくらいなら私が貰う。」
アスカ「だめだってば!」
ひかる「あははっ! ほんじゃお2人さんお幸せにねーっ!」
可愛らしい笑みを浮かべて、知りたいことを知れて満足したのかひかるはさっさと退散してしまった。
瞬「…冗談はきついがイイ奴なんじゃないか?」
アスカ「うん、すっごくいい子だよ。 私をからかうのが好きみたい。
でもそんな私は瞬をからかうのが好きなんだけどねー、ふふふ。」
瞬「おいおい、その不敵な笑みは何だよ。」
アスカ「何でもないよー。」
双葉「くー…。」
瞬「双葉寝てるし…。」
アスカ「どこでも寝ちゃうのよ、ほんとにマイペースだから。」
瞬「ひかるに僕達のこと話したって言ってたけど、あんまり話してなかったみたいだね。」
アスカ「ま、本人は無意識のうちなんだろうけどね。」
ふと気付いたらいい時間になっていて、お腹が空いてきた。
瞬「おなか空いてきたな、食堂でも行ってご飯でも食べようか?」
アスカ「私お弁当あるよ。」
瞬「なにっ、いつの間に作ったの?」
アスカ「昨日のうちに用意しておいたんだ。」
瞬「さすが女の子だなー。
まぁ、一食くらい抜いても差し障り無いから今日は昼飯抜きでいいか。」
アスカ「こらっ! 男の子ってどうしてそうなのかな?」
瞬「無いものはしょうがないでしょうが。」
アスカ「食堂あるでしょ?」
瞬「お金無いもんよ。」
アスカ「もーっ、しょうがないなぁ。
私のお弁当分けてあげるからありがたーく頂戴しなさい。」
瞬「え? いいの?」
アスカ「断る理由なんてどっこにも。」
瞬「…じゃあ遠慮なくいただきます。」
アスカ「どうぞどうぞ。」
机に広げられたアスカが食べきれるとは到底思えない大きなお弁当は明らかに手作りだった。
いや、焦げてるとか得体の知れないものというわけじゃない。
冷凍ものの解凍食品じゃない、正に手作りだった。
瞬「-----。」
思わず絶句してしまう瞬、戸惑いが出て当然だ。
こんな事態は想定外だ、手作り弁当は宝石のような価値があるのだ。
アスカ「あれ? 好き嫌いとかあった?」
瞬「い、いや。 好き嫌いは無いけどさ。
これってもしかして、とは思うけど…。 まさか手作り?」
アスカ「そうだよ、どうして?」
瞬「貴重だねー、料理するんだ?」
アスカ「ひっどーい。 私そんな風に見える?」
瞬「そうじゃないけど手作り料理なんて地球の女の子は滅多に作らないらしいから…。」
アスカ「あっ、それ聡哉も言ってた!」
瞬「何で女の子が料理しなきゃいけないの、男がしろよってよく巷で聞いてたから…。」
アスカ「…地球って随分窮屈そうなところね。」
瞬「まあ、何て言うか。 …ん? アスカは天球人なんだ?」
アスカ「う…ん。 さ、見てないで食べちゃってよ。」
瞬「いただきまーす。
ふぐふぐ…、おおっ! うまいっ! あれも、これも。」
アスカ「きゃーっ! 早食い競争じゃないのよーっ!」
瞬「分かってるって、ごちそうさま。」
アスカ「お、お粗末様です…。 ほんっとに美味しそうに食べるのねー、何か嬉しいな。」
瞬「美味しそう、じゃなくて美味しいの。」
アスカ「くすくす、ありがと。」
瞬「いえいえ、こちらこそ。」
意味もわからず堅苦しい挨拶をしていた二人のそばに黒い影が歩み寄る。
?「おーおー、見せ付けてくれんじゃないかよ。」
瞬「ん?」
その男は振り返った瞬間に瞬の顔をはたき飛ばした!
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