第四章  アスカ殺しのレッテル ~何故…、ト言フ眼~

助かった瞬は”アスカ殺し”のレッテルを貼られていた、

もちろん先生は弁明してくれた。 

…瞬にはとんでもない力があったのだと。

だがそれは返って瞬を窮地に追いやるものだった。


生徒A「力があったなら何でアスカちゃんは助からなかったんだ?」

生徒B「瞬がゴブリン共に寝返ったって噂だぞ?」

生徒A「何でよ?」

生徒B「何でも魔族に近い人間らしいとか何とか…。」

生徒A「エーッ!? じゃあ瞬がアスカちゃんを殺したっての!?」

生徒B「直接、ってことは無いだろ、裏で手引きをしたんじゃないのか?」

生徒A「でもよ、先生が言うにはさ、アスカは先生と瞬を庇ったって…。」

生徒B「それも”手引き”のうちだったんじゃないの?」

生徒A「さっきお前さ、瞬は”魔族に近い”って言ってたよな? まさか…!!」

生徒B「だとしたら今のうちに殺ったほうがいいんじゃねえの?

   力の無い今のうちにさ。」

生徒A「先生の言ってた”とんでもない力”が発動したらどうすんだよ?」

生徒B「無くは無いだろうが拙いもんらしいじゃん?

   あのゴミクラスの奇跡の魔力なんてクズみたいなもんだろーがよ。」

生徒A「先生も可哀想だよな、あんなクラスの担当になったばかりにさ…。」

生徒B「まったくだよ、

   …あぁ、アスカちゃんを失ったのは天球界において最大の損失だよな。」

生徒A「ホント、天球界トップ10に入る実力も”ウラ”を作られちゃあどうしようもないよな…。」



…こんな感じでここの世界においても瞬の居場所は無かった。

果たして光龍の言葉の真相はどのようなものだったのだろうか?

あの時を境に瞬は学校を抜け出した、…また逃げてしまった。

でも現に瞬の命を狙う者が大勢いたのだ。

それほどアスカの信頼は厚かったしアスカの存在は重要だった。

瞬に当てつけて恨みを晴らしたところでアスカが帰ってくるわけではない。

だが、アスカはそれだけ可愛くて人気があったし、同姓からも人気があった。

…------。




アスカ「きゃああぁぁぁっ…!!!」


瞬「くぅっ…!!」


爆風に飲み込まれてぼんやりとした影になっていく彼女。

消え去った粉塵の向こうには僅かな服の切れを残して消し飛んだアスカ。

まるで憑りつかれたかの様にその光景が何度もフラッシュバックする。

自分は一度自らの手で死んだ、なのに死を恐れている。

彼は周りの非難に対して一切口答えしなかった、目が覚めて起きた瞬間に彼女が消し飛んだのだ。

もちろん言ったところで誰も信じはしないし、逃げた今では罪を認めてしまう。

そんな尚更の事となってしまったのだが。

今までは先生のうちにお邪魔して何とか宛の無い生活を食いつないでいた。

…だが逃げてしまった今となってはそれはない。

かといって力があるわけでもない、…地球にいた時と同じ気分だ。

自分を振り返ると惨めな気持ちになる、でも何も出来ない。

先生は”君には凄い力があるんだよ”と言ってくれたがそんなの分からない。


…そう、瞬には”あの時”の記憶は無かったのだ。

一瞬覚醒したに見えた”あの瞬間”の記憶が…。

…遠くにもうもうと砂埃がわいている…、空には地球…、今は何が起こってるのかなぁ…。

瞬は木の上に身を隠すようにその砂埃と地球を見ふけっていた。


瞬「…。(天球って”想い”が力になるんだよな…。

 だったら何で僕には力が無いんだ…?

 そんなに意思がいるものなのか? だとしたら一体どれくらいいるんだ…?

 僕なりに努力はしてきたつもりだったんだけどなぁ…。)」


あの日から何日経っただろうか、適当に木の実なんかで食いつないでいる毎日。

…、場所を変えよう。 そう思った瞬間!


瞬「…あの砂埃、何か変だ…。 まさか…、モンスターか!?」


もうもうと舞い上がる砂埃は次第に量を増し、地面に程近いところに黒い影が多数…。

間違いない、ゴブリンがまたやってきたんだ、数が半端ではない。

その影はあっという間に学校に差し迫った、学校からけたたましく鳴り響くサイレン。

迎撃隊がやってきた、天球防衛軍は少ししてからじゃないと来ない。

キングがいる、彼らも遂に本格的に攻めてきたんだ…!!


…------。


キング「先生とやらはいるのかな?」


先生「性懲りも無くまた来ましたか!! 何用ですか!?」


キング「知れたこと、瞬だよ、瞬を出しな!!」


生徒A「やっぱり瞬は魔族の手先だったのか!?」


先生「馬鹿言うんじゃありません! 彼は魔族の手先などではないっ!」


キング「…? 瞬はいないのか? どこへ行った?」


生徒B「あんな奴知らないな!

   お前らとつるんでアスカを殺した!!

   問い詰めたら逃げたんだ!!」


先生「なっ、何てことを…!!」


キング「!! ほう、こいつは手間が省けた、

   勝手に瞬を追い詰めてくれていたとは。

   手厚く感謝しないとな。

   これで瞬はお前らに恨みを抱き、

   快く俺等、魔族の一員になってくれるのだからな!!」


生徒A「…え?」


キング「愚かな奴らだ!!

   瞬はまだ覚醒していないが今までに無い力を秘めている!

   この戦争に終止符を打つくらいの力がな! 手に入れた者勝ちだよ。

   今回はお前たちのその”賢明さ”が命取りになりそうだなぁ!?

   ヒャヒャヒャ!!」


生徒B「な、何を言ってるんだ!?」


キング「バカが!!

   内部の者とつるまずともアスカとやらを殺したのは紛れも無くこの俺様!!

   瞬がアスカを殺した?

   ヒャヒャヒャ!

   勝手に庇って死んだんだよ、あの女は!!」


生徒A「そ、そんな…、じゃあ瞬は…!!」


キング「…俺達を探してるかも知れんなぁ、思いがけない大収穫だ!! 

   レヴィジャス様もサーラ様もきっと大喜びになられるぞ! 

   野郎共、引き上げるぞ! ここにもう用はねぇっ!! ヒャヒャヒャ!!」


モンスター達は一気に引き上げていく。


生徒B「な…、何って…、事だ…。」


先生「~~~~っ!! 瞬君ッ…!!」


ゴブリン「! キング! 女いる!」


キング「あーん? …フン、今日の俺様はすこぶる機嫌がいい! 

   構わねぇ! てめえらで可愛がってやりな!!」


ギャアギャア!! ゴブリン達は大喜びして小さい女の子を取り囲む。


女の子「…ッ!! ッ!!」

怖がって竦んでしまっている女の子。 


学校のメンバーも応戦したが瞬の事で士気が下がってしまって太刀打ちできないでいた。


瞬「…!! 女の子がッ…!

 でも僕には力が無い…、護れないよ…、見ているだけしか…。

 …見ている…、だけ…? 

 (それじゃあ地球にいて誰も助けてくれなかったのと同じだ…。

 それを僕がするのか…?)」


女の子「あ…、あッ…!!」


瞬「あの子が殺されてしまう…! でも、どうしたら…!!」


ゴブリンの一匹が女の子に斬りかかった!


女の子「あっ…、うっ…!!」


いたぶっている、すぐには殺さないようだ…。

何百といるモンスターの中心に女の子、

外回りでは先生達の部隊が必死の抵抗を見せていた。

ギャアギャアギャア!! ゴブリン達の喜びも最高潮に達しようとしている。


キング「てめぇら! そろそろ殺りな! 厄介なもんが来るぞ!」


キングの言葉に反応してゴブリンが刀を振りかぶった!


瞬「…ッ!!!」


途端にあの光景がまたフラッシュバックした。


アスカ「きゃああぁぁぁっ…!!!」


…彼女は消し飛んだ、女の子は惨殺されようとしている、

また目前にして何もできないのか? 

天球は”想い”が力になるんじゃなかったのか?

なのにこんなに想ったって力はおろか勇気の一つも湧いてきやしない…!

これではアスカの時の…、あの時の二の舞だ! 

…死ぬ、死ぬ、しぬ、しぬ、シヌ、シヌ、シンデシマウ!


…ザクッ。


先生「…ッ!! 間に合わなかった…、、、」


ゴブリンを背に血飛沫を上げながら女の子がゆっくり斜めに倒れていく。

遠くからでも光の無い瞳は瞬に”…何故?”と語っているようだった。

血まみれになって倒れれかかる女の子…、

…動くことは無かった……-----、、、、、、、、

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