異世界の可能性
「困るよお嬢ちゃん、こんな所で寝られちゃ」
男性の声だ。上から聞こえる
重い瞼を開けて見ると、2人の…くるみ割り人形?の、様な服装をした男性が覗いている
パレードでもやっているのかと問いただしたくなるくらい異質な2人だったが、周りに目を移してみると、私が良く知る日本の風景は何処にもなかった
建物自体はイタリアにありそうな感じだなと考えていると、肩を軽く叩かれる
「名前は分かるかい?親御さんとか…」
二十代半ばくらいの男性が聞く。髭の生えた男性はメモをとっているが、ジロジロと私を見ている
迷子だと思われたのか。私の背は低いし、ちゃんと未成年だし。補導されなければ…
補導されちゃうよ……
殺されたからか、メンタルが不安定だ
ん?
殺された…?
あぁそうだ。(暫定)妹に殺されたんだ。うん
泣きそう
「だ、大丈夫か?…ん?チケット…?」
「少し失礼するよ」
髭面の男性が左手を取った
視界に入ったそれは固く握られており、中から紙製の何かがはみ出て居た
「ちょっと拳を解いてくれないか」
「は、はい」
髭面の男性は声が低いのもあり、ちょっと怖い。
怯えながらも拳を解くと、中に入って居たくしゃくしゃの紙が、真っ直ぐになっがた
…ん???
な、直った(?)
なんでだろ??
「このチケット、飛行船のじゃないか!搭乗時間はまだあるから、早く行ってきな」
「ば、場所どこですか?」
「あっちの方…案内するから一緒に行こうか?」
対応的に、中学生だと思われてるな
身長的に仕方がないか…
待ってなんで紙、まっすぐになったの?
おかしいよどう考えても。シワひとつ無く真っ直ぐになったんだよ?
夢?夢なの?あんな非現実なこと起きたから?
そうだ夢だ。冷静になった妹が救急車を呼んで命は助かったんだ。うん、夢だ!
でも、肩叩かれた時、感覚あったんだよな
「……………」
「私が送って行きます。よろしくね」
半ば放心状態の私に、若い方の男性が優しく言葉をかけてくれた
優しさで泣きそうだ。これが夢でも現実でも今はいいや。
取り敢えず飛行船とやらに行こう
ーーーーーーーーーー
「ここまで来れば分かるよね。チケットは係員さんに渡せばいいから。それでは」
「ありがとうございました」
去っていく男性にお礼をして、駅の改札口の様な物に近づく
私が知っているのは電子決済型の奴だけど、この改札口は人が検査する、遊園地の入り口に近いな。昔行ったっきりだから覚えてないけど
「チケットはお持ちですか?」
赤の制服に身を包んだ男性が話しかけてきた。他にも人は居るが、オロオロしているのは私だけなので目に入ったのだろう
「これでいいんですよね…?」
あの2人が嘘を吐いてるとは思えないが、初めてだし緊張してしまう
いや、夢だから緊張するな。堂々としよう
「こ、これでお願いしますっ」
2回も言うのは挙動不審だけど、初めてなんだからしょうがない。こう言うのはお兄ちゃんかお父さんがやってたし
「お預かりします…」
パチンと、穴あけ機で色の違う部分に穴を開けた
再現ドラマ買う何かで見た気がする。切符は、こうやって穴を開けて証明するのかな。
言われてみれば形状は切符に近い。夢だからにてるのだろう
綺麗な顔立ちもあり見惚れていると、気付いた男性が切符(の様なもの)を返してくれた
じっと見て居たことがバレたのは恥ずかしい。いや、夢だ。少々欲望のままに動いたとしてもいいだろう!
「どうぞ。良い旅を」
いい笑顔を彼は見せてくれた。本当に顔が良い。芸能人みたいだな
…流石に自重しよう。
ドキドキしながら入り口を通ると、強い風を顔いっぱいに浴びた
「……!」
目の前には、鯨の様な巨大な船があった。あらゆるところに羽が付いていて、プロペラらしきものは、1番下に2つ付いていた
飛行船とはこれの事かと、一目で分かる非現実的な物がそこにあった
入り口は、五階中三階の高さにある
行くには付け合わせの階段を使わなければならないけど‥
結構高い。4メートル位だろうか
登って居る女性が居るが、風で揺れて居る。女性の傘が吹っ飛んでしまった
あれに乗るのはちょっと無理があるな‥まぁ、夢だし行こう。うん、冒険だ
階段まで走り、手すりに手を乗せると、風でスカートが捲れた
パンツ丸見えじゃないかと急いで手を当てると、パンツとは違う、パンツ隠しの布があった
これなら大丈夫だな
階段を歩み進めるが、風が重い。泣きそう
普通に怖い。悪夢だよこれ
まぁあんなことあったら悪夢くらい見るよな‥
泣きながら階段を登り終えて、飛行船の中に入るのに、大体10分ほどかかるのはちょっと知らない話
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