仕事終わり



「じゃあね! バイバイ!」



 そよは二人に手を振って走って去っていった。



 慧はもう一度窓を見る。



 外が暗くなっているので、窓には自分の姿が薄く映り始めている。



「アスカさん、続きは明日でいいですか?」



 気づくと慧の仕事終わりの時間を過ぎていた。



「そうだね! 明日にしよう!」



 この日の調査はこれで終わりとなった。



「神様ってみんなおしゃべり好きですね」



「そうだね、一安心!」



 一人くらいには断られるかと思ったが、皆友好的で話好きが多かった。



 神が恐ろしいという認識は慧の中で少し改まった。



 彼らは人間とそんなに変わらない。



 とはいえ、慧はあまり神たちと話をすることは無かった。



 ほとんどアスカが話していて慧は静かにしているだけだった。



「何かわかりましたか? 名探偵!」

 アスカが肘で慧の腕を小突く。



「名探偵じゃないです、完全にいじってますね」



「おやおやそんなことないよ?」



「そういうアスカさんこそ、何かわかったんですか? 名探偵」



「それはどうでしょうね~」

 アスカはいたずら娘の笑顔を見せた。



「また得意の秘密主義ですか……」



 そう慧が言うと、アスカは「ホホホ」と手を口に添えて笑った。






 アスカはまだこれから夕食の仕事があるというので、慧は一人で帰る。



「特に何も分からなかったな」

 慧は一人になったところで呟いた。




 旅館に呼んでくれた皆には感謝しているが、これで自分が何か役に立つのかととにかく不安になった。




「何にもわからなかったな」



 もう一度同じ言葉を声に出す。



 旅館では探偵だのなんだの言われてしまったが分からない。



 相手に何を訊けばいいのかも出てこなかった。



 今日はアスカに任せっきりで過ごしてしまった慧。



 間を繋ぐためにお茶をすするしかなかった慧は自分のお腹をさすった。



 神たちと一緒にお茶を飲みまくったのでお腹が水でパンパンで苦しさを少し感じる。



「前代未聞すぎるわ」



 一人になると出てくる本音。




「むしろこの状況を受け入れてあんだけ話せるって、アスカさんのほうがおかしいよ」




 考えすぎて自分の方こそ普通の感覚であろうと着地した。



 また、明日がある。



 慧は明日何をしたいのかを考えた。



「まずは、今日話を聞きに行けなかった神様二人に会いに行かないとな」



 偶然にも話せなかったのはツクヨミを除いて見た目が男性の神二人。



 女性の神たちはフレンドリーだったが、彼らはどうだろうか……。



「なんか、アスカさんに任せっぱなしになりそうな予感……」



 また紅茶でお腹をいっぱいにしそうだと慧は苦笑いした。

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