ピリの話



 ピリはアスカに握手を求める。



 アスカが応じようと彼女の手を触ると、



「パチっ!」



 大きな静電気がアスカの手をはじいた。



「キャッ!」



 アスカが小さく悲鳴をあげて驚いた。



「ごめんなさい。びっくりしましたね。静電気がでちゃった」



 ピリは申し訳なさそうに肩をすくめた。



「全然大丈夫です! 改めて」



 アスカはもう一度ピリの手を握った。



 次は少しゆっくりと、慎重に。



 二人はがっちりと握手を交わした。お互い嬉しそうに笑いあう。



「よろしくアスカさん!」



 ピリは続いて慧にも握手を求めてきた。



「石岡慧です。よろしくお願いします」



 慧はゆっくりと彼女の手を握ろうとした。



「パチ!」



 しかし静電気がまた起きた。



「痛!」



 なぜかいつもよりも痛い気がした。音も心なしか大きい。



「あぁ、またごめんなさい」



 ピリは苦笑いを浮かべる。しかし手は引っ込めない。意地でも握手をしたいらしい。



 慧は再び手を出す。



「パチ!」



 再び静電気がした。指先の痛みに耐える慧。



「痛い! なんで⁉」



 二回目の静電気はさっきよりも痛い気がした。



「あらら……」



 アスカも苦笑いを浮かべた。



「ごめんなさい! どうしましょう」



 ピリは眉を下げた。しかし手は引っ込めない。



「あぁ……」



 慧は三度手を伸ばす。



(静電気きそうなのに触りに行くっていうのが怖いわ)



 三回目にしてやっと握手ができた。



 二人が握手するとき、小さく「パチ」と静電気が発生していた。



 ここでまた手を引っ込めるとまたやり直しなので痛みに耐えて慧はピリの手を握った。



「今度は良かった!」



 ピリは満足そうに微笑んだ。




 ピリの手は柔らかくしっとりとしていた。



 温泉の効果だろうか。





「お口に合えばいいんですけど」



 アスカが紅茶を注いでいく。



 さすがに今日何回も紅茶を淹れているだけあって、手際が段違いに良くなってい

る。



「ドライフルーツと共にどうぞ」



「まぁ素敵」



 ピリは桃のドライフルーツを紅茶に入れて飲んだ。



「飲みやすいです! 苦みが少なくて子供でも飲めそう」




「他の神様に会うのは初めてなんですか?」




「ほとんどの方とはそうですね。アマテラスさんと会うというのは同じ神でもなかなかないですから。本当に実在するんだって感じですね」




 神が神に「実在するのか」という印象を持つのは人間からするとなんとも面白いと慧は思った。



 それだけアマテラスは特別な存在ということだろうか。太陽神というだけのことはある。

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