第3話 終わりの直前のちょっと後のその後
「ぐおぉぉぉぉぉッ」
と言う悲鳴は聞こえてこなかった。あわよくば、巨大な氷柱が魔王に突き刺さってくれれば……とか考えていなかったワケではないが、俺の耳に「ぶしゅッ」と言う音だけは聞こえて来ていた。
「痛ってえぇぇぇッ!」
魔王の代わりに叫んだのは俺。さっきの音は俺の頬が裂けた音だったらしい。そしてその犯人は、魔法使いから尼さんになった様子で、力尽き横たわっていた。
「さて、残りは小僧!キサマだけだッ!もう小娘の援護は無い。この一振りで叩き潰してくれるッ!」
魔王再びの攻勢が始まった。勢い良く振り下ろされて来る棍棒のラッシュ。
俺は必死に躱すが、さっきよりも動きが遅くなっていたのは明白だった。だからこそ余裕が無い俺だが、なんとなく違和感だけは尽きなかった。
「なんで魔王は
棍棒は振り下ろす為だけにある武器ってワケじゃないと俺は思う。俺だったら横に
生命の危機が迫る時こそ突飛な閃きというのが湧くのかもしれない。
何故
「どうしたどうしたッ!逃げてばかり、避けてばかりでは我は倒せんぞ!」
「大丈夫だ。もうそんな攻撃、俺には当たらない!いや、最初から当たってないが……」
「な……んだと?!」
「カラクリが分かれば簡単なコトだったぜ。魔王!アンタ、横に振りたくても振れないんだろ?振り下ろすばっかりじゃ当たらないぜッ!」
俺の言葉によって魔王の表情は明らかに曇っていく。更には深い動揺の色が伺える。
そして俺の後ろには、愕然とした表情をしている尼さんがいるような気がしたが、俺の視界には入れないようにした。
「ぐぬおぉぉぉぉぉッ!この魔王ディグムンドをナメくさりおって!では、見せてやろう!この魔王最大の秘術☆奥義☆秘技☆必殺技をををををッ!」
ダサい。やっぱりカッコ悪い。韻も踏めてないし、厨二病患者が見たら血反吐を吐いて「ダサい」って褒めてくれるカッコ悪さだと思う。
要するに「
「勇者よ、死んでしまうとは情けない」
「ここ……は……?」
「勇者よ、お主は死んだのだ。魔王ディグムンドとの戦いによってな」
俺が目覚めた時、俺の前には近すぎると言わざるを得ない場所に王がいた。
何が起きたのか理解出来ない。何故死んだのかすら、よく分からない。
「俺はどうなったんだ?」
「勇者よ、死んでしまうとは情けない」
「なんで俺は死んだんだ?」
「そんな事を知っている訳がなかろう……だが、お主は情けないのぉ、死んだのだ」
倒置法で言われても意味が分からない。俺が死んだ?いや、それならなんで俺は生きてる?何がなんだか全くもって何が起きたかすら分からないんだが……。
「俺が死んだなら、なんで俺は生きているんだ?」
「それは蘇らせたからに決まっておろう?」
死んだ俺を誰かが蘇らせた?それならそれで蘇らせてくれたヤツには悪い事をしたな。だって俺を蘇らせた為にソイツの髪の毛が……なんか俺は申し訳ない気持ちで頭に手をやったワケだ。
「ッ?!」
「死者を蘇らせるのは神の御業。よってその代償は死んだ者が払う必要がある。ざっと30000本くらいだな」
俺の頭頂部はザビエルになっていた。
To be continued
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます