第2話 終わりの直前のちょっと後

「我は魔王・ディグムンド。ディグムンド・デ・アルカラニ・テケレッツー・イル・サイダイカ・ムリョー・オ・ダイスー・マーリョック3世である」


 そう言うと魔王ディグムンドはを振り上げていった。

 。やっぱり。この世界では、棍棒が主流な武器なのか?それとも一大棍棒ムーブメントでも起きているのか?いやいやその前にもっと突っ込むトコは満載だった気もするんだが……。


 それにしても、なんで魔王の持つ武器がなんだ?魔王だったら、勇者の聖剣、神の神剣に対して、魔王なら魔剣とか言うモノを持ってたりするモンじゃないのか?まぁ、俺も手に持っているのは棍棒であって、聖剣なんざ持ってはいないんだが……。

 ちなみに、“エクスカリバー”とかって名前の棍棒でもない。



 魔王は勢い良く棍棒を振り下ろしていく。狙いはモチロン、この俺以外にはないだろう。


 俺と魔王の身長差はかなりある。だから距離があればあるほど、俺には不利な構図だ。

 俺の身長が180cmくらいなのに対して、魔王はその倍はあるかもしれない。ムキムキな体躯で胴体部分にだけ金ピカの鎧を纏っていた。鎧の下はどうなっているのかは分からない。履いていようがいなかろうが俺には興味もないし、興味があったらそれはそれで誰かが困るだろう。

 ちなみに兜は被っていないが、それは魔王の左右側頭部から生えているツノのせいかもしれない。

 そして身体の色は浅黒く眼力は鋭い。だからこそやっぱり、


 俺が言うのもナンだけど、“魔”の王様っポイ格好には見えない。武器が棍棒で身に付けているのは鎧だけ。装備も格好もアンバランス過ぎて、ゲームだったらキャラデザ間違いまくってクソゲーを通り越してバカゲーな部類になると思う。

 それくらいおかしい。


 俺も日本にいた頃はゲームをしていたし、アニメも漫画も好きだった。そこに出て来る魔王とかってラスボス的なキャラは大体がイケメンか、コワモテ。装備も一流で、少なくとも姿のヤツなんて誰一人としていなかった。

 それなのに何だ?この魔王は?本当に魔王なのかってくらい、カッコ悪い。

 普段カッコ付けてるヤツが、数学のテストでカッコ付け忘れて満点逃すくらいにカッコ悪いとしか言いようがなかった。



一護まもる様ッ!」


 突如として黄色い叫びが耳に入って来た。俺とした事が冷静に分析した事で、勢い良く振り下ろされていた棍棒をすっかりと見落としていたようだ。


「よっと」


 俺がいた場所に勢い良くめり込んだ棍棒を尻目に、どうやってこの魔王を倒すか考えていた。あからさまに、戦う以上は倒さなきゃダメだ。だからこそ考える事にした。

 しかしその後も、考え事をしている俺に向かって棍棒は幾度も振り下ろされて来たが、何故か棍棒は当たらなかった。それは俺が全て避けたからなんだが、勢いが良かった割に当たらないなんて、「俺の方がもっと速かった」的な何かなのかもしれない。

 カッコよく決め台詞を言うなら、「俺じゃなきゃ見落としてたね」みたいな感じだろうか?



「早く、一護様。魔王をたお……して。私の髪の毛が失くなる……ま……えに」


 掠れるような声が聞こえた。俺はその声に驚き振り向くと、「見ないでーッ!」という叫び声と共に巨大な氷柱つららが、同時に視界に飛び込んで来た。

 しかし視界の先ではブロンドの美しく長い一房が、「はらり」と抜け落ちて行く瞬間までもが映し出されていた。


 巨大な氷柱は俺の頬を掠めるくらいの真横を一目散に駆け抜けていったが、俺が微動だに出来なかったのは言うまでもない。


To be continued

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