第10話 内気な少年は女子高生達にお茶へ誘われて囲まれる

「行ってきますー」


「いってらっしゃいー」


 朝食を食べ終え、ランドセルを背負って学校へと向かう光輝。朝のニュースを見ながら朝食のトーストを食べる秋吉は光輝を見送ってから席へと戻って来た麻美子へと話しかける。


「なあ、光輝が最近ちょっと明るくなってきてないか?」


「あなたもそう思う?私も光輝を見ていて前より進んで学校に行くようになってるなって見えたのよ、前は向かう時下を向いたり暗かったりしてたんだけどね…」


「仲の良い友達でも出来たのか、でもまあ良い事だな」


 以前まで暗くて学校に行くのも前向きではなかった光輝、だが最近は進んで学校へ足取り軽く向かうようになっていた。


 小説を書いた事が影響しているのか執筆を始めてから光輝は変わって来ている。前より外に出るようになったり色々調べた成果が出たせいか学校の成績も少し上がって通信簿もそれを証明していた。


 相変わらず体育や運動面の方では進歩は無いが全体的に見て前へ進み成長していると言っても良いだろう。


 その事を親として秋吉、麻美子は喜ばしかった。









「今回どんぐらい書いたんだー?」


「えーと、一昨日1000文字書いていたからそこに2000文字足して…大体3000文字ぐらいかな」


「おー、短すぎず長すぎずだな」


 学校では玲央と会話し、彼と小説の事について話せば色々と読者目線で言ってきて参考になったりした。玲央も一読者として光輝の小説を見続けて面白いと感じてくれている事が光輝には嬉しく思う。


 燦々と輝く太陽がそれを祝福しているかのように窓際に居る光輝を照らしてくれている。



 そのおかげか小説のアイデアは結構出て来て執筆は今の所止まる事なく進められており、この調子で行けば今日には最新話が公開出来るはずだ。


 3桁までPV数は届いて順調な伸びを見せているファイナル・パスワード。


 ひょっとしたら4桁にも行ってしまうのでは?という期待をほんのわずかに持つようになる。前は見てもらえるかどうかも不安だったが幸い見てもらい続けていて頻繁には応援コメントは貰えないが時々コメントはもらえるようになってきた。



 今年が終わる前にどれだけ書けるか、そんな事を考えつつ玲央と喋っていたら授業の時間はあっという間に迫り2人は席へと着き学生の本分である勉学へと励む。









 放課後を迎え、帰る支度を整えた光輝は玲央を見ると彼は大勢の友人に囲まれていた。


 聞けばこれからサッカーだそうだ、玲央がちらっと光輝を見れば「わりぃ」という仕草を見せて伝え今日は一緒に帰るのが無理だと光輝は理解する。


 元々玲央は人気者、そんなに何度も彼と頻繁に2人でとはいかない。


 大勢の輪の中にはまだ踏み込めない、向こうの世界が眩しく映る光の世界、1人だけの孤独な闇の世界と切り離されたような感覚だ。


 今日は孤独な世界に留まるしかなかった。



 光輝は1人で先に教室を出て家への道を歩いて行く。家に着いたら1人自室に篭って小説を書いていよう、そう決めて帰宅すると麻美子と挨拶を交わした後に洗面所へ行き、手を洗ってうがいの後に自室へと向かった。


 スマホを自室にてチェックすると連絡が入っている事に気付く、それは文化祭で出会った女子高生達からだ。


 文化祭でガールズバンドの女子高生4人と互いの連絡先を交換しておりグルチャに招待されてそちらの集まりに光輝は入れてもらっていた、そこで彼女達から今日遊べないかと誘いのメッセージが届いている。


 今日玲央は友達とサッカー、1人の今だと小説を書くぐらいしかやる事の無い光輝はこの誘いに行くと返信すると1分も経たない内に返信はまた返って来ていた。


 向こうは乗り気で待ち合わせ場所を伝えてきて光輝は帰ってきたばかりだがスマホを持って出かけ、待ち合わせ場所へと向かう。



 待ち合わせ場所に彼女達が選んだのは喫茶店、丁度おやつ時であり駅前の喫茶店は人で賑わいを見せていた。メッセージだと彼女達は奥の席に居るらしいので光輝は店内へ入ると奥の方へと進んで歩く。


「あ〜、光輝君来たよ~」


「いらっしゃーい、てうちらの店や部屋じゃないけどね」


 渚と由佳が光輝の姿を見つければ「おいでおいで」と手招きし、席へと誘われた光輝は彼女達の前へ姿を現した。


 この前と違って4人とも私服姿であり由佳と紗英は可愛い系のファッションを纏い渚と洋子がボーイッシュ寄りの格好、文化祭の時とまた印象の変わる姿を見て光輝は思わずじぃっと4人の姿をそのまま見てしまう。



「どした?あたしらに見蕩れちゃったかー?」


「え…と…」


「あー、赤くなっちゃって可愛いの♪」


 席へと座らされると光輝の左右は渚と由佳に挟まれる形となり、鼻から伝わって来る甘い香り。近距離で彼女達に囲まれ、顔を赤く染めさせた光輝はメニュー表辺りを見て気を紛らわせるしかなかった。



「頼んで良いよ好きなの、ドリンクバーは外せないとしてー」


 ドリンクバーを何かと一緒に頼んだ方が料金は安くなる、彼女達に勧められるがままに光輝はとりあえず美味しそうなショコラケーキを注文。


「今日はあの元気少年な子は一緒じゃないんだ?」


「あ…友達とサッカー…です」


 玲央はどうしてるのかと渚から聞かれれば光輝はその時の光景を思い出しつつ伝える。


「光輝君は友達と一緒に遊ばないの?サッカーとか」


「僕体力無くて運動苦手だから…後、大勢の集まりとか入りづらくて…」


「あ~、飛び込めなくて1人で居るタイプかぁ」


 向かい合う紗英と洋子の2人と話し、自分が輪の中に入れない事を光輝は打ち明けていた。そうして1人孤独な世界に居続け、今日はその世界かとなっていた矢先に彼女達の居る眩いぐらいに輝く世界に今引き込まれている。



「じゃあじゃあ今日はお姉さん達と遊んじゃお♪あ、門限何時かな?」


 由佳に迫られ、光輝は顔を赤くさせながら自分の門限を伝える。今更だが目のやり場に先程からずっと困っていた、いずれも胸部辺りが膨らんでいて見ちゃ駄目となりつつ男子の性か見たいとなってしまい葛藤が生まれる。


 特に目の前に居る洋子が4人の中で最も豊かであり視界の端々にそれが映ったりしていた。


 向こうは純粋に遊びたいと思ってるのに自分がこんなのは失礼と思いつつ誤魔化すように、光輝はドリンクバーで取ってきたアップルジュースをゴクゴクと喉を鳴らしストローを使わず飲んでいく。



「あ、そういえばー。光輝君って小説書いてるの?玲央君から聞いたよー」


「え?い、一応…書いてる…」


 光輝と共にスイーツを楽しむ4人、そこに紗英から光輝へと小説を書いている事について尋ねられる。これに光輝は控えめになりながらも正直に自分が小説サイトに投稿しているのを彼女達へと話した。


「へえー、小説か…コーヒー飲みつつ小説を見るとか結構良さそうかも」


 そう言いつつ洋子はミルクレープのお供であるコーヒーを香りと共に楽しむ、小説に対して結構関心を持っている様子だ。



「今見れるー?あたしらも光輝君の小説読んでみようよ」


「何処で見れる?」


「えっと…サイトは」


 4人揃って光輝の小説をこの場で見てみようと決めればスマホでそれぞれ光輝の投稿している小説ページへと飛び、投稿中の小説を読んでみる。




「へえー、天才ハッカーの高校生に強面な探偵のおじさん…」


「それと女刑事さんっと。あ、スリーサイズまで書いてんだ?やらしいねー♪」


「そ、そんなつもりじゃあ…!」


 目の前で小説を見てもらう光輝は恥ずかしく思うのと同時に嬉しさもあった、やはり小説は見てもらわないと何も始まらない。


 こうして彼女達にも自分の小説を知ってもらい見てくれるというのはありがたい事だ。



「結構面白くない?」


「んー、ちょっと展開物足りない所あるけどー…」


「ガチ評価じゃん、あたしは良いと思うよー」


「とりあえずいいねっと♪」



 作品を見てもらい洋子は展開に物足りなさを感じ、指摘していて渚や紗英は面白いと見ていて由佳は評価ボタンを押していた。


 それぞれ色々な反応を見せて皆高評価とは行かない。


 人によっては評価が色々変わる、彼女達を見て光輝はその事を改めて実感したのだった。



 気づけば喫茶店で小説を見て長居し、結局喫茶店でお茶しただけで夕方を迎えて光輝は彼女達に家まで送ってもらい後日また遊ぼうとその日は別れた。


 そして次の日になると彼の小説のPVは更に伸びて行く事に当然この時の光輝は知る由も無い…。

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