第9話 内気な少年は異性を初めて意識する
「ねえねえ、次は何処行く?」
「キミ達の行きたい所で良いよ~♪」
「屋台とかまだまだあるからねー」
「あ、あれとか美味しそうかもー!」
可愛い、綺麗な年上の女子に囲まれて文化祭を歩き彼女達と楽しむ光輝と玲央の小学生2人。
サインを貰うだけのつもりだったのがまさか共に祭りを巡るという流れになっていた。
遡る事ライブ終了後の体育館。
ライブが終わって観客がぞろぞろと去り、体育館がほぼ閑散となった状態で話していた光輝と玲央。彼女達のサインが欲しいと話していたら声がステージの後片付けをしていたガールズバンドの女子達に聞こえ、まさかの遭遇となる。
茶髪のショートヘア、ボーカル担当の山本渚(やまもと なぎさ)。
黒髪のロングヘアー、ギター担当の財前由佳(ざいぜん ゆか)。
桃色髪のツインテール、ベース担当の水島紗英(みずしま さえ)。
金髪のボブ、ドラム担当の高見洋子(たかみ ようこ)
全員此処の高校に通う在学生だ。
サインを貰い、これでそのままお別れかと思っていたら彼女達の方から「これからお祭り回るんだったら一緒に行かない?」と誘って来た。
これに光輝が戸惑うと横にいた玲央は「迷惑じゃなければ!」と先にOKの返事をする。
さっきまでライブをしていたバンドのメンバーと一緒に祭りを楽しむ、こんな機会は滅多に無いと玲央は光輝に強く言い切ると気弱にして内気な光輝はその勢いに押され了承。
2人は彼女達と一緒に祭りを巡る事となったのだ。
クレープ屋に向かえば4人が光輝と玲央の分も奢ってくれて皆で揃ってクレープを味わい楽しむ。
メニューによってイチゴだったりキウイだったりと沢山のフルーツがたっぷりの生クリームと共に生地に包まれ、果物とクリームの甘さが味覚として伝わり高校生が作るクレープは店並みに美味しい。
甘いものが好きな光輝としては外でこういうのが食べられるのは嬉しいものだったが申し訳なさもあった。
「あ、あの…お姉さん。本当に奢ってもらって良いんですか…?」
「大丈夫大丈夫、年上のお姉さんの好意には素直に甘えておきなさい少年♪」
「あ…」
そう言うと右手でクレープを持って食べつつ洋子が左手で光輝の華奢な肩を抱き寄せる。
4人の中で一番背が高い洋子、抱き寄せられた光輝の後頭部に豊かに実っている柔らかい感触が伝わっていた。
それが何なのか分かると光輝の心拍数は一気に急上昇、頬も赤くなる。女性にこんな至近距離まで迫られた事は母親以外ではいない光輝にとってかなり刺激が強い事は確実だ。
なんとか気を紛らわせようとクレープを食べつつ横目で玲央の様子を見てみれば彼は女子3人と仲良く会話しているのが見えた。
光輝と比べて玲央は社交的でありクラスの人気者、色々と話している玲央を見て自分でもあれぐらい話せたら良いなと光輝は密かに思う。
ただ本人は年上の女性を前に話しながらも胸をドキドキさせていた、距離感が近く目のやり場に困り自分の持つクレープの一点見つめをしながらクレープを食したりと彼も内心では余裕が無い。
「へえー、サッカーやってるんだ?じゃあ将来の日本代表なりそうかも!サイン今のうちにもらっちゃおうかなぁ?」
「スター選手になって海外行ったりしたら気軽にサイン貰えなくなりそうだし、私も欲しいー」
「じゃあ私も~♪」
「あ、ああ。俺のサインぐらいいくらでも書くよ(サインなんか書いた事ねぇや…どう書けばいいんだこれ)」
玲央がサッカーを習っていると聞けば未来のスターとなりそうな可能性を感じたか、それぞれが玲央からサインを貰おうとしていた。どう書こうか玲央は悩むがとりあえず色紙にそれっぽく書いてみる、本人でも何を書いたか分からず落書きレベルだ。
「キミは、彼みたいなスポーツ…やってなさそうだね?」
「え、あ…ごめんなさい…」
「いやいや、責めてはいないからさ。大人しい感じだからキミの場合は家でゲームやってるって所かな」
スポーツをしていない事を洋子に言われると光輝は謝ってしまう、そんな光輝の頭を洋子はぽんぽんと優しく撫でてあげる。
子供扱いされて恥ずかしい気持ちはあるがその手は心地良く思えて悪い気はしなかった。
彼女達と文化祭を楽しむと時間はあっという間に過ぎ去ってしまう、午後5時前と校舎の時計は指しており空はオレンジ色の夕焼けに染まりつつあり小学生の光輝と玲央はそろそろ帰る時間だ。
「じゃあ、また遊ぼうよ♪連絡先交換しよー」
光輝、玲央はそれぞれのスマホの連絡先を登録。これで彼女達4人とは何時でも連絡を取り合えるようになる。
遅くなる前に2人はガールズバンドの皆に手を振って高校を後にして帰路についた。
「小説のスランプ解消のはずがすげぇ事になったよな…」
「うん…」
最初は光輝が小説を書けなくてスランプに陥った事で気晴らしに遊びへと出かける、そんな目的のはずだったが気づけば女子高生の占い師に占ってもらったり女子高生バンドの皆と文化祭を楽しんで仲良くなったりと今までに無い事尽くしの新鮮な1日となった。
特に光輝は洋子が近距離まで来て肩を抱いてきた時の感触が一番記憶として強く焼き付いており、思い出せばそれだけで胸は高鳴り頬は赤く染まって来る。
そして家に帰ると小説を書く手は再び動き、話は書き進められた。生まれて初めて異性を意識しつつも。
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