第2話 コアラやめる
世界的有名な三ツ星パティシエNが、カジュアルなチョコレート菓子店『ルナール』を青山にオープン。
「ナオさん、これってルナのことじゃないか?」
「えっ、どれどれ」
ナオは老眼鏡をかけて、一平の手元の新聞を覗き込んだ。
カラー刷りの一面広告。
「ほんまやわ。ルナールやて。素敵やない」
「ヨッシー、祐奈さんもいらっしゃい」
「ルナちゃん、おめでとう」
「ありがちう、でも名前だけなの」
コアラのようにルナにしがみ付くナナ。
「こんにちはは? 3番目の娘、ナナっていうの」
「ルナちゃん、3人のお母さんになったんだ。うちの子と学年が一緒だね。ルナちゃん、ごめん、名前をもらった」
「へっ?」
良雄が手を繋ぐたどたどしい歩き方をする女の子。
「こにちは。ウナミでちゅ。もうちゅぐ3ちゃいです」
「こんにちは。わあ、すごいルナミちゃん、ご挨拶出来るのね」
ナナはルナの胸の前で弾かれた様に振り返って、瑠奈美を食い入るように見つめた。
「えっ、おんりするの? でも、お靴履いてないわよ」
ルナはヨッシーたちに声をかけた。
「ウエルカムドリンクのチョコレートがあるからゆっくりして行ってね」
「ああ、ゴージャスな空間を堪能させてもらうよ」
「こんな機会でもないと来られないし」
「カジュアルな店がコンセプトなの、祐奈さん女子会にも利用してね。サービスしちゃうわ」
「ルナさん、お商売上手だこと」
ハハハ
賑やかな店内に笑い声が弾けた。
カズに靴を履かせてもらったナナは、チョコレートのついた口の周りを拭いてもらっている瑠奈美に駆け寄った。
何度も転びそうになるナナをカズはハラハラとしながら後を追いかけた。
「ウーたん、こえあげゆ」
ポシェットから取り出した、苺ミルクのウサギの形をしたポップキャンデーだった。
「ナナたん、くえゆの?」
「うん、どうじょ」
「あいがと」
「いこ」
ナナは瑠奈美の手を引いて奥の控室に向かった。
そこはキッズルーム仕様になっていて、それぞれのお気に入りの縫いぐるみで人形遊びに興じていた。
「ここで遊んでいたのか。瑠奈美帰るよ」
えー
二人同時に声を放った。
困惑顔のヨッシーに扉の前に待機するカズが声をかけた。
「ご用がおありでしたら今のうちにいらしてください。2、3時間は遊んでいると思いますから。その方がぼくも助かります」
「あらっ、お友だちになったの?」
「コアラからは卒業だって。ところでルナちゃん、ずっとこっちに永住するつもりじゃないよね」
「助っ人を頼んであるの。研修を終えてそろそろ来る頃よ。ルナが不在のときの店長さん。あっ、オトちゃん、こっち、こっち」
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