ナナたん
オカン🐷
第1話 ナナたん
「ナナちゃん」
「ウーたん」
ソファーに座り膝の上に載せた娘にルナは呼び掛けた。
小首を傾げて呼び掛けに応えるナナ。
「ナナちゃん」
「ウーたん」
また小首を傾げる。
可愛い。たまらなく可愛い。
「ウーたんだって」
長男の隼人が、さもおかしそうに笑った。
シャー
ナナはあっちへ行けとばかりに隼人を追い払った。
「あら、ハヤトだってこの間までそう言ってたわよ」
「うそだあ」
「本当よ。ルナって言えなくてウーって言ってたわよ。ナナはまだ2歳だもの。ねえ」
するとナナも小首を傾げながら言った。
「ねえ」
ツインテールにしたナナの柔らかな髪が揺れた。
その揺れに合わせてワンピースとお揃いのピンクのリボンが空を踊った。
次男の蒼一郎がルナの膝に手を置いて訊いた。
「ママ、ぼくも小さいとき、おひざにのった?」
今でも小さいけどね。
「それがね、いつもお腹に赤ちゃんがいて抱っこが出来なかったの。ソウも抱っこしようか?」
「いいよう」
「ソウ兄ちゃん、恥ずかしいんだって。ねえ、ナナちゃん」
「ウーたん」
「ナナちゃん、可愛い、可愛い」
「ウーたん、かーいい、かーいい」
ルナは自分の額をナナの額に押し当ててグリグリと顔を左右に振った。
ウッキャキャ
「二人はずっとああやって遊んでいるのか?」
カズがため息をつきながら訊いた。
「そうだよ、パパ。じゃましたらナナのぎゃくしゅうを受けるよ」
「それは怖いなあ」
「あらっ、カズさん、お帰りなさい」
「ただいま、ルナちゃん」
「子どもたち、もうすぐご飯だって」
「それじゃ、手を洗いに行きましょう」
んー
「ナナちゃん、お膝から降りたくないの? 困ったちゃんね」
「困ったちゃんにしているのは他でもないルナちゃんだろう」
「エへへへ、それならウーたんが連れて行ってあげましょう」
ナナはコアラのようにルナにしがみついていた。
「コアラのアーチ見っけ」
「こあらのあーち、みっけ」
隼人と蒼一郎はナナをからかった。
シャー
どこで覚えたのかナナは小さな牙を剝いて威嚇した。
「こんなに甘やかして、日本へ帰国するとき大変だぞ。子どもたちは留守番なのに」
カズはまたため息をついた。
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