第39話 チーム名
───あれから、チームワークが飛躍した。
仲は未だに良くないし、喧嘩もしょっちゅう起こる。
けれど、チームプレーにおいては理想に近しいほど完成してきたと全員が思っていた。
河島さんのアドバイスを元に、基本はkS1nの司令通りの動く。
ただし、俺は策があれば自由行動。みっちーが乗じて動くことも許可された。
さらに、状況次第では──チームを一時的に動せる権利を得ている。
これにより、kS1n中心のチームワークが構築され、そして、俺は"直感的な読み能力"を最大限活かせる環境を手に入れた。
練習でも、河島さんやコトねこにもぼちぼち勝利できるようになってきた。
………まぁ、本当に数える程度だが。
それはさておき……話を戻すと、俺たちは日に日に強くなっている。
今は7月の初旬。
「MJL」の予選まで残り一週間ほど。
仕上がりは────上々だった。
『は?なんでカバー入んないの?そこ抑えなかったからまんまと裏取りされて負けたんだけど。やる気ある?下手くそはこのゲームやめろよ』
「だ か ら!カバー入ったって!ちゃんと抑えたし!裏取られたのは、すでに別個体のゾンビナイトが動かされてたんだよ!言ったじゃん俺!コトねこがおそらく死角使って裏取りに来るから気をつけろって!」
『それは太郎が対処したハズだろ』
『あ、ごめん。やきとりにアサルトアーマーあげに行ってたから、みっちーに任せた』
『え?俺訊いてねーよ?てか、俺なんか1対3で抑えてたんだから無理ポヨよ?』
『え?でも誰か返事しなかった?』
「いや、俺はしてないぞ」
『俺も』
『僕もだ』
「『『『……………』』』」
『……おい、試合アーカイブつけろ。誰が戦犯か徹底的に炙り出してやる』
「やめろって!仮に見つかっても余計ギスギスするだけだから!」
『その慌て様は図星か?言っとくが、吐いた唾は飲み込めないからな。覚悟しろよ戦犯』
「おい!こいつにリーダーやらせんのやっぱり論外だろ!」
『………ん、全員それぞれ2回くらいやらかしてた。全員戦犯』
「いやコトねこ。お前目線はそうかもしれないけど、そういう話じゃないんだ」
チームプレーは上々だが、俺たちの関係は────相変わらずだった。
傲岸不遜な暴言厨で、ネチネチと他人のミスを引きずるkS1n。
煽って油断して、乙ってやらかすみっちー。
サイコな太郎。
奇人揃いぶみだ。
ここまで濃いメンツもなかなかないだろう。
まともな人間は俺以外いないのか。
『相変わらず弱いなオメーら』
「河島さんは黙ってて下さい。これは俺たちの問題なんで」
『つれねーな。てか、準備出来たら早く言えよ。次は俺がボコすから』
「そう言っていられるのも今の内ですからね」
深夜にも関わらず、みんなのやる気が止まることを知らない。
目標もそうだが、ここまでみんなを駆り立てたのは、もう一つ理由がある。
それが─────、
『チーム名決めたぞ!「Crazy Daemons」だ!』
「唐突ですね河島さん……。ちなみに、どんな理由でそれに?」
『まんまの意味だけど。プロどもを地に引き摺り下ろすイカれた悪魔たち。お前たちにピッタリでしょ?』
『なんかサラッと河島さん抜いてません?』
河島さんはイカれてない判定らしい。
『こまけーこたぁいいんだよ。それより、我ながら良いチーム名じゃね?』
「まぁ……悪くは無いんじゃないですか?」
他のメンツも口々に肯定する。
──「Crazy Daemons」。
略してCD。
ちょっと厨二臭いきざしだが、イカしたチーム名だと思った。
それに、なんだか俄然やる気が湧いてきた。
このチーム名のおかげか───その日以降、目に見えてチームの士気は上がった。
『よし、これから俺たち「Crazy Daemons」は残り僅かな練習期間で最上のプレーに仕上げるぞ。休みはないと思え!返事!』
「は、ハイ!」
(なんか軍隊みたいになってきたな……)
そう思いながらも、覚悟は出来ている。
俺たちに残された時間は残り少ない。
───「MJL」の予選。
プロのいるプレイオフの舞台に立つには、予選を通過するのが第一条件だ。
無論、そこで終わりじゃない。
本戦はプロも入り混じる正真正銘の最強を決めるトーナメントだ。
そこに、HDもRIもいる。
俺たちは、コイツらに勝てる実力を備えなければならない。
だからこそ、一日一日を大切にしていかねば。
『───おい、やきとり。試合のアーカイブ。やっぱりお前の声質に酷似していた。死ね』
「は?絶対言ってないからな?見せてみろ!必ず、ごめんなさいと言わせてやるからな!」
────本当に、大切に出来ているのだろうか。
甚だ疑問に感じながらも、時間は過ぎて行くのだった───────。
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