第23話 レベルの違い

 ────プロチーム『HD』。

 正式名称は『HOT DOGs』。

 プロ発足前の時代、最前線で活躍してきたスターチーム『Oh』のメンバーを中核に据えて結成されたプロチーム。

 言わば、『Oh』の正統後継となったチームだ。

 その『Oh』についてだが───このチームはかつて二人の男たちによって設立された。

 当時モンスターランカー最強と謳われた"雑魚狩りの河島"。

 そして、初期からずっとヒューマン最上位に君臨する"メラ"がチームを設立。

 その二人の知名度からメンバーは速攻で集まり、すぐさまチームが結成された。

 当時最大手の大会であった『Morganite最強トーナメント』では大会ごとに必ず好成績を残し、そのプレーからファンを沸かせ、気づけば屈指の強豪であり、一、二を争う人気チームになっていた。


 けれど───ついぞそのチームが優勝トロフィーを掴むコトは、一度もなかった───────。



『クッソ……!太郎に引き続き俺も脱落した!ここからは1人残しで勝つ方向に切り替える!』

「ヤバい!………!」

『弱音は後回し!kS1n指示くれ!体勢値はもうすぐで崩せるけど、依然体力がもうミリだ!次パリィ不可の攻撃来たら確実に死ぬ……!』

『………!リスポーン中のやきとりの方向かった』

『………チッ、機動力はあっちが上だ!みっちーは盾捨てて追いかけろ!そして、体勢値を一か八かで削り切れ!おそらく、モンスターはやきとりのリスポーンを狩りに行く気だ!絶対に行かすな!』

『オーケー行かせるかよ激強モンスターが!』

「………!いや、みっちーは回復しないとヤバくない!?俺に向かってるのはフリで、切り返されたら───』

『あ』

 モンスターが突然止まり出した瞬間、切り返してみっちーに一直線にビームを放つ。

 直撃は間一髪で避けたが、体力がなくなり脱落。

 俺もその後、リスポーンしたところをあえなく狩られた。

 結果は全滅。俺たちは0ポイント。相手は5ポイント獲得した。

 


「ヤバいですよ………。もう絶望的です………」

『やきとりさっきからヤバいしか言ってないね』

『おいお前らどうするつもりだ?この点差』

 1セット目、俺たちは全滅の0ポイント。

 コトねこは接戦の末、なんとか辛勝の引き分け。

 2ポイントを持ち帰ってきた。

『………ん、私もやらかした。不甲斐ない』

 コトねこの声色には悔しさが混じっていた。

「いや、十分やったよコトねこは……!俺たちこそ不甲斐ない」

結果的に1セット目は『HD』が奪取。

俺たちのチームのポイントは2。相手のポイントは7という大差が開いた。

 次にセットを取られれば俺たちの敗北。

 逆に引き分けや勝ちでも、続く3セット目にはこのポイント差が尾ひれを引く。

 現状は圧倒的に不利な状況だった。

『……次は俺が出る。全滅させて来るから、お前は1人生存目指せ』

 河島さんが不本意そうに肩を鳴らす。

「河島さん行けるんですか!?」

『どういう意味だやきとり?』

「だって……なんか、訳ありっぽかったじゃないですか」

河島さんは『HD』との戦いに、一貫して乗り気ではなさそうだった。

 まるで、関わりたくないような───そんな意思を感じた。

『バカ言え。試合はそこらへん混同しないから。安心しろ。それにミューズbanされた以上俺が出る以外手はないワケだし』

『…………』

2セット目からbanが解禁される。

 俺たちがbanされたのは『Dr.ミューズ』だった。

 コトねこはミューズ以外は使えない。

 河島さんの言う通り、これ以外の手立てはなかった。 

『じゃ、行ってくる。全滅は避けろよな』

 そう伝えると、河島さんはVCを一旦切って、試合に向かった。

『俺たちも向かうぞ』

『………あぁ』

「大丈夫かkS1n?」

kS1nは見るからにひどく弱っているように見えた。

『………話かけるな』

「いや、本当に大丈夫か?なんかいつもみたいな余裕がないぞ?」

『黙れって!!』

kS1nが大声を上げる。

 声には焦燥が溢れていた。

『………kS1n。これがプロ?私たちじゃアイツに勝てっこなさそうなんだけど』

『………勝つための方法考えてんだ。太郎も黙っとけ』

………どうやらプロとの格差を真に理解して戦慄しているようだった。

 いつものような他人を見下す余裕がないくらいには、kS1nが危ない精神状態なのは分かる。

 このままでは、司令塔が機能しなくなってしまう。

『ま、そんな気張らず行こうぜ。優勝ももちろん大事だけど、それ以上に"プロとの試合"ってのも貴重だろ?ここで出来る限りのコト得て帰ろうぜ』

「………みっちーの言う通りだ。相手は格上。ここでしっかり学べるだけ学ぼう。もちろん、勝つのも諦めずに」

『………あぁ』

渋々、といった感じでkS1nが落ち着きを取り戻したところで、俺たちは2セット目の試合に赴いた───────。

 


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