第17話 攻城戦の末

 ───結果から入ろう。

 俺たちは───河島さん相手に初勝利を収めた。


『ゲートは囮だ。俺がロープ使って城を外壁から登る。だが、これも囮だ』

kS1nが作戦を共有する。

『一番の高所を取られてる以上、現状はスナイパーが最も使いものにならない役割。だから僕が囮になる。だが、あくまで死ぬつもりは毛頭ない。河島が城の外に出た瞬間、やきとりとコトねこで叩け。スキル『終末の煉獄』が来るだろうが、二人はダウンしても構わない。ここからは─────』

 指示通りkS1nに釣られた河島さんを俺とコトねこで下から蜂の巣にした。

 kS1nは残り体力ミリから緊急離脱。

 河島さんは俺たち目掛けて『終末の煉獄』を放った。

 寸分の狂なく衝撃波を当てられた俺たちはダブルキルされる。

 だが───ここから河島さんの予測を超えた。

 ゲートを使って最速で戦車に乗り込んだ太郎の砲撃を喰らわした。

 スキルで強化してるとは言え、直撃を喰らったため体勢値が削り切れる。

 一時的に動けなくなった河島さんを、kS1nが狙い撃ち。しかし、だいぶ消耗させたものの、体力はまだ残っていた。

 こっから城を奪取して、泥沼の持久戦の末、俺たちは三人残りの結果で河島さんのモンスターを討伐。見事勝利を手にした───────。



『へー、なかなかやるやん。まぁ偶然だろうけど』

河島さんは頑なに完全敗北を認めないようだった。

『よっし、アドレナリンどばどば』

『負けを認めろ。なんなら次やるか?』

 太郎たちもいつもより声色に活気があった。

 当たり前だ。これまでずっと負け続けてきた。

 俺だって、今はすっごく嬉しい。

『は?これ大会出場メンツじゃないから。何勘違いしてんの?みっちーいないだろ?こんな勝ち方したら今頃泣いてるぞ?』

「いや、多分アイツならぐっすり寝てます」

ランクマで組んでるときもよくあった。

 やろうと思えばみんなに波長を合わせられるクセに、くだらないことに限って、他人を悲しませない範囲で、どこまでも自分勝手に行動するのがみっちーだ。

 普段はある程度常識の範疇で動くから、なおさらおかしなヤツだ。

 プロ入りはしなかったんじゃなく、煽り、寝坊、遅刻、サボりが酷すぎて出来なかったんじゃと薄々考え始めてる自分がいる。

『マジレスすんなよ、おもんないわ。…次やるぞ』

声には次こそ叩き潰してやる、という気概を感じる。

「もちろん!負けませんよ!コトねこも行けるか?」

コトねこは、今回のMVPと言っても過言ではない活躍だった。

 ヒューマン陣営で出ないのが本当に勿体無い実力だ。モンスターも上手かったらヒューマンも上手くなるのだろうか。

『………ん、平気』

声には若干の疲れが読み取れたが、まだ覇気があった。

 そのまま次の試合へと進む。

 ────今日のこの一戦は、初勝利の喜びと、コトねこの凄さを再認識した戦いだった。

 

 

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